スキー界で最も権威がある賞を葛西 紀明選手がオスロで受賞 なぜ彼はノルウェーで人気があるのか?
スキー大国ノルウェーが独占する賞を、日本人が受賞
スキー界で最も権威がある賞のひとつといわれているホルメンコーレン・メダルを、スキー・ジャンプの葛西紀明選手が受賞した。
主催者は、北欧のスキー界でこの賞を知らぬ者はいないという名誉ある賞だと説明し、今年の受賞者が葛西選手となることに選考委員会として迷いはなかったという。同賞は1985年からノルウェーの首都オスロにあるスキーの聖地ホルメンコーレンで授与されているが、受賞者の多くはスキー大国であるノルウェー出身だ。
日本人の受賞者は3人目で、1995年に荻原 健司(ノルディック複合)、1999年に船木 和喜(スキージャンプ)がメダルを受け取っている。
「43歳という年齢で活躍を続け、スタミナだけではなく、これまでの素晴らしい功績が受賞理由のひとつ」とスキー・プロモーション連盟の議長ヨン・ヒンダール氏は述べた。
葛西選手は「このような素晴らしいメダルを大好きなオスロでもらえて、光栄です。感謝しています。この大好きなオスロで1度だけ勝ったことがありまして、またいつか勝ちたいと思って、毎年来るのですが、なかなか勝てない。昨年は2位という成績でしたが、優勝を目指して、勝ちたいと思っています。1週間前には赤ちゃんも生まれて、幸せな時を今過ごしているのですけれど、この名に恥じないようにスキージャンプを続けて、頑張っていきたいと思っています。トゥーセン・タック!(ノルウェー語で“ありがとう”)」と、スピーチで語った。
ノルウェーで、葛西選手を知らぬ者はいない!?
スキー大国ノルウェーでは、彼の名前を知らぬ国民はいないのではないかと思うほど、葛西選手は有名人だ。ノルウェーで最も有名な日本人ともいえる(筆者が現地で一番耳にする日本人の名前は、葛西紀明、村上春樹、村上隆の3人)。葛西選手は受賞後のインタビューで、スキー選手を応援する日本人とノルウェー人の違いについて、「応援の仕方はそんなに変わらないとは思いますが、選手の国を問わずに、日本人である僕のこともすごい応援してくれるのがノルウェー人」と語った。
メダル受賞のことを知らなかったので、「びっくりした」
葛西選手はメダルの受賞のことは事前に詳しく知らされていなかったようで、「なにかがもえらえるよ、というような感じしか聞いていなかったので、こんなにすごいものをもらえて、本当にびっくりしました」と笑顔で語った。
現地スポーツジャーナリストが語る、葛西選手のすごさ
現場にはノルウェーの国営放送局と大手テレビ局TV2も現場にいた。TV2のスポーツジャーナリストであるアーレ・ヘルセルダール氏が、葛西選手のノルウェー現地での人気について語ってくれた。
「ノルウェーには長いスキージャンプの伝統があります。長い間活躍し続けている彼は、ノルウェー人にとっても本当にユニークな存在。葛西選手はフレンドリーだし、とてもいい人だと伝わるのでしょう。僕個人としても、まだまだ飛び続けたいというモチベーションの高い彼に驚いています。言語の壁のせいか、葛西選手のインタビューをノルウェーメディアではまだあまり見たことがないので、どうしても取材したくて今回はやってきました」。
スキー好きの現地人は、どう思っている?
一般人も気軽にスキーができるホルメンコーレン地域。中心地から向かう地下鉄内には、スキー道具を手にした市民に出会える。ホルメンコーレン・メダル授与式に向かう途中で、乗客に葛西選手を知っているか聞いてみた。
「もう高齢なのに、素晴らしい仕事をしているわ!私たちは葛西選手が大好きよ。メダルもたくさんもらって、とてもキュートだわ」と話すカトリーネさん(左)。「彼のことはテレビでよく見るわ。技術が素晴らしい」とユリースさん(右)。
週末は、オスロでFISワールドカップ・ノルディック(ホルメンコーレン・スキー祭)が開催され、現地のスキー好きが大集合する。日本人選手の活躍が楽しみだ。
ハフィントンポスト日本版「びっくり!ノルウェー人の冬W杯の楽しみ方が想像以上にすごすぎた」
Photo&Text:Asaki Abumi