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B1初昇格の信州ブレイブウォリアーズが今シーズンの台風の目になりそうな確かな予感

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
滋賀戦に臨む信州ブレイブウォリアーズの選手たち(筆者撮影)

【信州が大阪相手にシーズン中盤初戦に勝利】

 約2週間のバイウィークを終え、12月2日からシーズン中盤戦が始まったB1リーグ。当日は全国各地で10試合が開催された。

 今シーズンB1リーグ初昇格を果たしている信州ブレイブウォリアーズは、本拠地で同じ西地区上位の大阪エヴェッサを迎え撃ち、終盤までもつれる大接戦の末、73-66で勝利している。

 これで信州は今シーズンの成績を6勝10敗とし、地区上位グループを狙えそうな位置をキープしている。

【厳しい戦いを強いられるB1初昇格チーム】

 もちろん6勝10敗という成績は、誰しもが手放しで賞賛できるものではないだろう。だがB1初昇格チームとしては、まさに大健闘といっていいものだ。

 新型コロナウイルスの影響で昨スーズンはシーズン途中で打ち切られたため、今シーズンは入れ替え戦無しでB2リーグから信州と広島ドラゴンフライズの2チームが自動昇格し、今シーズンまでの3地区18チーム制から、2地区20チーム制でシーズンを戦っている。

 ここまでの広島は、信州を下回る4勝12敗に留まっており、やはり苦しいシーズンを過ごしている。だがこれは、下位リーグから上位リーグに昇格してきたチームが味わう苦難のようなものだ。

 別表を見てほしい。これまでB1に初昇格してきたチームの成績をまとめたものだ。言うまでも過去の3チームも下位に低迷し、そのままB2に逆戻りしているのだ。

(筆者作成)
(筆者作成)

 信州の6勝10敗を大健闘だと表現していることが、決して大袈裟ではないことを理解して貰えるだろう。しかも信州は、B1リーグでまだまだその強さを発揮していきそうな気配を漂わせている。

【他チーム関係者から「成績以上に素晴らしいチーム」】

 信州も他のB1初昇格チーム同様に、シーズン開幕6連敗と、かなり厳しいスタートを切っている。

 だがシーズン序盤戦を取材していく中で、他チーム関係者から聞く信州の評価は決して悪いものではなかった。多くの人たちが「成績以上に素晴らしいチーム」と口を揃えていた。

 それは、これまでの成績からも確認することができる。

 ここまで信州が記録した6勝をチーム別に見ていくと、B1初勝利となった三遠ネオフェニックスを皮切りに、川崎ブレイブサンダース、シーホース三河、滋賀レイクスターズ、琉球ゴールデンキングス、大阪──と、6勝のうち3勝がいわゆる強豪チームを破ったものなのだ。

 しかも開幕6連敗後は6勝4敗と勝ち越しており、さらにここ5試合は3連勝を含む4勝1敗と、明らかにチーム状態は上向いている。これだけでも信州の強さを十分に理解できるだろう。

【勝久HCもチームの成長を実感】

 勝久マイケルHCは、ここまでのチームの戦いぶりを以下のように説明している。

勝久マイケルHC(筆者撮影)
勝久マイケルHC(筆者撮影)

 「最初何試合か壁にぶつかった部分はありましたし、チームが全員揃わなかったというのもありました。その中で壁にぶつかって、それを経験して、少しずつ成長していけました。

 そのチームの成長部分と、あとは選手が全員合流できたことで、(11月8,9日の)三河戦は初めて全員で練習し、初めて全員が登録可能な状態でした。

 新しいチームであり、新しいメンバーもたくさんいて、やっぱり(チームを作り上げていく)プロセスなので…。さらにはトップリーグ初参戦チームとしての(強豪チームと対戦を経験する)プロセス、その両方だと思います」

 開幕当初はチームに9選手しかおらず、5対5の練習もできなかった。しかもウェイン・マーシャル選手、アンソニー・マクヘンリー選手の2人のキャプテンがいない状態で戦い続けてきた。

 つまり三河戦以降の信州こそが、本来の姿というわけだ。三河戦以降の成績をみても、前述通り三河、琉球に勝利しながら4勝2敗で推移している。

 どうやら大物食いが期待できる信州は、これまでのB1初昇格チームのイメージを完全に払拭し、今シーズンの台風の目になっていくのかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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