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「ファンの声援が力になる」に根拠あり。ホーム有利な理由は審判の判定だ

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

広島がDeNAを下し日本シリーズ進出を決めたCSファイナルステージ第4戦は、互いに2桁安打を放つ点の取り合いとなった。勝敗を分けたのは広島が初回に6得点を挙げたいきなりの猛攻。ただその中で球審の”辛い”判定が一部野球ファンの間で話題になっていた。

DeNAの先発・今永は、出したくない広島の先頭打者・田中をフルカウントから歩かせてしまう。左対左のアウトコースを狙ったラストボールはややインコースへ。ホームベース上を通過したようにも見えたが、逆球に対する判定はボール。その後も丸の打席など際どいコースで球審の右手は上がらない。こうなると今永はストライクゾーンに集めざるを得ず、広島打線に痛打を浴びノックアウト。DeNAは2回以降、猛烈な追い上げを見せただけに悔やまれるイニングになってしまった。

多くの球団が本拠地では四球が増え、三振が減る

もしかしたらこの判定は、マツダスタジアムを赤く染めた広島ファンの後押しによるものかもしれない。

メジャーには統計学を駆使してチーム成績を大きく向上させた球団がある。その様子を描いた「ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを蘇らせた数学の魔法」(角川書店)の中で興味深い説が紹介されていた。

地元のチームの方が有利になる最も大きな理由は、一般的に考えられているものとは異なる。球場の広さでも、移動による疲労でも、馴染みのある環境でもない。審判の判定に及ぼす影響だ。

ホームのチームはビジターのチームと比べて打席当たりの三振が少なく、四球が多い。これは球審が周囲の雰囲気に影響されているからで、観客の人数が多いほど、歓声が大きいほど、審判の判定が揺れる傾向にあるという。

CS初開催となったマツダスタジアムが独特の雰囲気に包まれていたことは想像に難くないが、審判が無意識のうちに球場の雰囲気に呑まれるということはあるのだろうか?

過去3年間の成績で、本拠地球場とそれ以外の球場での打席数に対する四球数と三振数の割合を比べてみたところ、ハッキリとした違いが見られた。

例えば今季、セリーグを制した広島は打席数に対する四球の割合が本拠地以外では8.59%だったが、マツダスタジアムでは9.36%に上昇し、三振の割合は20.03%から17.97%に減少。このように本拠地球場で四球の割合が増え、三振の割合が減ったのは西武、日本ハム、ロッテ、巨人、ヤクルト、DeNA、広島の7球団。昨季も7球団、2014年シーズンも4球団に同様の傾向が見られ、述べ36球団中、半数に当たる18球団が本拠地で成績を向上させている。

逆に本拠地で四球の割合が減り、三振の割合が増えたのは今季が3球団、昨季が0、2年前が2球団。成績向上が18球団あったことに対し、落としたのは5球団だけだから数としては明らかに少ない。しかも成績の下落幅より上昇具合の方が遥かに大きい。

特に本拠地球場とそれ以外の球場での差が大きかったのがヤクルトだ。神宮以外では5.95打席に1つしていた三振が神宮では6.23打席に1つとなり、四球に関しては11.43打席に1つだったものが9.58打席に1つと2打席近くも少なくっている。これは昨季も同様で神宮では1三振に要する打席数が約1打席増え、1四球に要する打席数は約2打席減っている。一方、今季に限らずほとんど差がなかったのがロッテ。これは、ビジターでも相手チームを凌駕するような声援を送る26番目の選手がホームと変わらぬ環境を作っている、という見方も出来る。

贔屓チームの勝利のためにも球場へ行こう!

審判がファンの作り出す雰囲気に影響を受けているのならば、毎年300万人前後を動員する巨人が一見有利な判定を受ける、ジャンパイアと揶揄されるジャッジの理由にもなり得る。ただ、際どいタイミングのアウトかセーフかを数字から検証することは不可能であるため真相はわからない。あったとしても審判も無意識のことであるから証言は得られないだろう。加えて、同じく人気球団であるはずの阪神はその逆を行く。本拠地・甲子園で四球の割合が増え、三振の割合が減るシーズンをプラス、その逆をマイナスと表現するなら過去3年間はマイナス、プラス、マイナスとなる。しかもプラスだった昨季も受ける恩恵は微増程度。勝てば官軍だがその逆は・・・というファンの気質のせいか、ロッテと同じくビジターでも熱い声援を送るためか、いろいろと特殊な球団だ。

それでも多くの球団が本拠地では四球が増え、三振が減っていたことは事実。ヒーローインタビューで選手が話す「ファンの皆さんのおかげです」という言葉はあながち間違いではない。ファンの声援は確実に選手に、そして審判にも届いている。応援しているチームの勝利のためにも、テレビやネット観戦ではなく球場へ行こう!

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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