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森口博子 ガンダムソングカバー集の続編に集まる注目 「35周年に再びガンダム楽曲を歌えて、幸せ」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/キングレコード

昨年『GUNDAM SONG COVERS』が大ヒット。続編は、収録曲をファン投票で募り、10万票を超える投票から選ばれた10曲を歌う

『GUNDAM SONG COVERS 2』(9月16日発売/通常盤)※初回製造分のみスリーブケース仕様(ことぶきつかさ描き下ろしジャケットイラスト)
『GUNDAM SONG COVERS 2』(9月16日発売/通常盤)※初回製造分のみスリーブケース仕様(ことぶきつかさ描き下ろしジャケットイラスト)

今年デビュー35周年を迎える森口博子。昨年はガンダムソングをカバー&セルフカバーした『GUNDAM SONGS COVERS』が、10万枚を超える大ヒットを記録。『「日本レコード大賞」企画賞』を受賞するなど、森口の名前がランキングを賑わせた。当然ファンからは続編を望む声が多く、そのリクエストの応え、9月16日に『GUNDAM SONGS COVERS 2』を発売する。今回は収録曲をネット上でファン投票を行い、決めた。10万票を超えるリクエストが寄せられ、投票結果はガンダム公式YouTubeチャンネル「ガンダムチャンネル」で生配信で発表され、リアルタイムだけで14万人が視聴し、26万回再生を突破するなど大きな注目を集めた。名曲揃いのガンダムソングの中から10曲が選ばれ、豪華ミュージシャンが紡ぐ音をバックに、森口が圧巻の歌を聴かせてくれる。ガンダムソングを歌い続け、当時からのファンはもちろん、新しいファンにも届けることをライフワークとしている森口に、このアルバムについてインタビューした。

「STAY HOME期間中もこのアルバムの熟成期間と考え、前向きに過ごすことができた」

「緊急事態が発令され、STAY HOMEになった時も、前向きで、すごく冷静な自分でいることができました。音楽の熟成期間だと。それはこのアルバムの制作が3曲を録ったところで中断されて、発売も延期になって、でもファンの方からは『お楽しみが先延ばしになったけど、さらに楽しみになりました』って前向きなコメントが届いて。みんなの声がモチベーションにつながりました。待ってくださっている方は、時間をかければかけるほど、休んで声の調子も万全だろうし、さらにいいものができるんじゃないかって期待値が上がるじゃないですか。だからハードルがどんどん高くなっている気がして(笑)、いいものを仕上げなければという緊張感をずっと持って、前向きな気持ちで過ごすことができました」――まずは、コロナ禍での生活ぶりを教えてくれたが、このアルバムと向き合う時間がたっぷりでき、それが見事な表現力につながっているのかもしれない。一作目の評価の高さを受け、より注目が集まる中での二作目ということで、プレッシャーはなかったのだろうか。

「一枚目を作った時、やり切った感がすごくあって、実は続編は私の中ではないと思っていました」

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「実は続編は私の中ではないと思っていました。一枚目を作った時、企画を出し切った、やり切った感じがすごくあって。NHKの「発表!全ガンダム大投票」でガンダム40年の歴史を記念して、361曲のこれまでのテーマソングの中からファンのみなさんが私のデビュー曲『機動戦士Ζガンダム』のテーマソング『水の星へ愛をこめて』を1位に選んでくださったことから、ベスト10をカバー&セルフカバーさせていただいて、ガンダムソングの素晴らしさをたくさんの人にお伝えすることができて、ちょっとホッとした部分がありました。オリコンアルバムランキングの3位にも入って、『日本レコード大賞・企画賞』もいただいて、とても報われた感じがしました。そうしたら、ディレクターさんから『第二弾ですね』って(笑)。一瞬ドキッとしました。私はエゴサが趣味なので(笑)、色々とチェックしていたら、『~1』を聴いてくれたガンダムファンの方はもちろん、作品を知らなかった方、ガンダムを観ていなかった方、私の歌も今まで聴いたことがなかったという方々が、『ガンダムを通ってきてなかったけど、このアルバムは名盤です』とか、『森口さんのライヴに行きたくなりました』とか、そういうコメントを目にして、すごく力をいただけました。それで『続編も』という声もどんどん届いて、ファンの皆さんの声をなんとか形にしたいと思って、歌おうと決めました。今回は前作以外の曲で私に歌って欲しいガンダムソングをネットで投票していただき、10万票を超える投票が集まりました。それはファンの方からのバトンを頂いたということです。だからこのバトンを、すごく太く輝かしいものにして、ファンのみなさんにお返ししなければいけないという、そのプレッシャーと役割、責任をすごく感じました」。

「『君を見つめて ‐The time I’m seeing you- / with 本田雅人』では、20代の私と50代の私の声を重ね、過去と未来の自分とのコラボが実現」

ガンダムソングの魅力を、たくさんの人にもっともっと伝えたいという思いがさらに強くなって、気合が入るとともにプレシャーも感じていた。そして一曲一曲に流れている“ストーリー”も大切にし、歌った。

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「オリジナルのカバーでは、これまで陽の目を見てないと思う曲もあって。それは今回のメイン曲になっている『君を見つめて ‐The time I’m seeing you- / with本田雅人』です。『ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~』のカップリングで、『機動戦士ガンダムF91』のイメージソングとして、本当はこの曲がメインだったのですが、当時リリース直前に急遽入れ替わって、『ETAERNAL~』がシングルとしてスポットを浴びる中で、この曲はライヴでもなかなか出番がありませんでした。でもファンの方の中では人気が高い曲で、今回3位にランクインしてきて陽の目を見たっていう意味では、この企画があったからこそ新しい息吹きを吹き込むことができました。29年経って改めて注目されて、何が起こるかわかりませんね。元T-SQUAREの本田雅人さんのサックスで、お洒落で熱いロックに仕上がりました。バンドスタイルでのMUSIC VIDEOを作ったり、レギュラー番組『Anison Days』(BS11/9月25日放送) で、一緒に初お披露目収録を先日終えたり、すでに“育ち始めて”います。そして、落ちサビでのツインボーカルは当時20代だった私の歌声に、50代になった今の歌声を重ねて、過去と未来の自分とのコラボが実現できて涙が出てきました。長く歌ってこれたんだなって。みんなとの歴史が詰まっています」。

豪華ミュージシャンとのセッションで曲に新しい息吹きを吹き込む

本田雅人を始め、参加ミュージシャンも豪華だ。武部聡志、コーラスグループThe Voices of Japan(VOJA)、そして前作に続いて寺井尚子(V)、押尾コータロー(G)、塩谷哲(P)が顔を揃えている。

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「スタッフのみなさんと話をしていく中で、どんどんアイディアが浮かんできました。『サイレント・ヴォイス』は曲をイメージした時に、ガンダムの複雑な心情や声にならない命の叫びを、寺井さんの情熱的なヴァイオリンソロで、ドラマティックな始まりにしたらカッコいいと思いました。去年の『日本レコード大賞』でのステージで共演した私たちの呼吸はピッタリ!!熱い同時レコーディングになりました!! それから『あんなに一緒だったのに』を押尾さんのギターで、スパニッシュな感じでやっていただいたら映えるよねと盛り上がり、とにかく心地よいパーカッシブな演奏で、テンションが上がりました!! 去年のライヴではサプライズで出演してくださったりと、絆が深まりつつあります。『一千万年銀河』はバラードといえば塩谷さんの透明感のあるピアノ一本で歌いたいよね、という感じで、すぐにこの3人の音と顔が浮かんできました。塩谷さんのピアノは、シンプル故に奥行きとか広がりを感じるので、声とピアノだけで宇宙を表現できていると思います。塩谷さんのことは以前から“ピアニッシモの王子”と呼んでいて、弱すぎても物足りないし、力を入れすぎてもピアニッシモにならないし、絶妙なんです。そこの呼吸が宇宙を作っていると感じた同時レコーディングでした。武部さんは私が20代の時にシングルとアルバムでお世話になりました。武部さんが去年の『~1』のことをチェックしてくださっていて、『僕らの音楽』(フジテレビ系)にゲストで声をかけていただいたんです。それで久しぶりにコラボをやらせていただいて、長年音楽を続けてきてまた一緒にできるのって幸せだねって武部さんに言っていただけて。でも本当にそうで、続けているからこそのご褒美だと思うし、すごく幸せな時間でした。それで今度は私からラブコールを送らせていただいて、『いつか空に届いて』のピアノとアレンジをお願いしました。流石でした。エバーグリーンな世界が見事に表現されていて、安心の、素晴らしい同時レコーディングでした」。

「ガンダムの歌って、曲との“距離感”が難しい」

森口は武部とのレコーディングでかけてもらった言葉が嬉しかったという。「『森口さんの歌声は、きちんと歌詞が届くから気持ちがいい』って言っていただけて。それは私が17歳の時に、デビュー曲のレコーディングの際にディレクターさんから『言葉を大切に歌ってね、語尾を丁寧に歌ってね』って言われたことが、今も私の歌の基本になっているからだと思います。ガンダムの歌って、曲との距離感が難しいんです。個人の感情だけでなく、もっと大きな母性愛や地球愛とか、そういう“距離感”が非常に難しいです。やっぱりその作品ありきの曲で、個人の曲ではないので、私の曲でありながら“伝える”という役割がすごく大きいと思います」。

「『星空のBelieve』の歌詞は、今の私達が置かれている状況に寄り添ってくれる。改めて、歌はメッセージなんだということを実感」

昨年「追憶シンフォニア/果てないあの宇宙へ」をデュエットした鮎川麻弥のシングル曲「星空のBelieve」は、どうしても歌いたかった一曲だ。

「これは外せないですね。ガンダムファミリーでもある鮎川麻弥さんの曲ですが、このカバーが偶然とは思えないタイミングだと思いました。歌詞の一行目から、コロナ禍の中、自粛生活を強いられ、ソーシャルディスタンスを保ちながら苦しみながら生きてる私たちのこと?って思うくらい、どのフレーズも寄り添ってくれているんです。この曲は先行配信したのですが、ファンの方から『温かい歌声と、歌詞に泣きました』『涙が止まりませんでした』という感想を、SNSやラジオのレギュラー番組「KISS&SMILE」(Bayfm)にもたくさんいただいて、改めて歌の伝える力ってこういうことなんだなって思いました。その状況とリンクしてみんなに伝わって共感して、涙する。同じことでみんなで苦しんで、生き抜いていかなければいけない時に、これがメッセージになる、歌はメッセージなんだっていうことを実感しました」。

「『限りなき旅路/withVOJA』は、直訴してボーナストラックに入れてもらいました」

ボーナストラックのコーラスグループVoice Of Japanとのコラボ「限りなき旅路/withVOJA」は“森口枠”だ。森口がどうしても歌いたいと直訴し、収録されることになった。

「この曲は『Anison Days』でカバーさせていただいた時に、なんて壮大でカッコいいんだろう、私はやっぱり菅野よう子さんの曲が大好きなんだなって思いました。説明のつかない涙が出てきて、意識が飛ぶようなスペイシーソングの極みですよね。私はどうしても歌いたくてディレクターさんに“ボーナストラック”として直訴しました。痛みを伴う希望が描かれていて、それもすごく今の私たちにぴったりだなと思いました。この曲を選んだ時には、世界中がコロナウイルスの感染で苦しんでいる状況ではなかったけど、でも世界では今も様々なところで争い事が起きていて。色々な痛みを伴いながらも人は成長して、扉を開けながら生きていかなければいけないという思いにもすごく共感できて。ゴスペルコーラスグループのVOJAさんのコーラスが壮大で生命力を感じて、涙がこぼれました。私たちの人生も、ガンダムもずっと限りない旅路で、新しい扉を開けながらto be continuedという想いを込めて、このアルバムの最後に入れました」。

「10月3日のアルバムリリース記念コンサートは、みなさんを音楽で浄化できれば」

記念すべき35周年に再び『GUANDUM SONG COVER2』を発売し、ガンダムソングに関われことに大きな幸せを感じるという森口に、今後の展望、“野望”を教えてもらった。

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「デビュー35周年というアニバーサリーイヤーに、私の人生を変えてくれた運命のガンダムのアルバムを制作できたことはすごく幸せです。支えてくださっているファンのみなさん、スタッフのみなさんに心から感謝です。ただ残念なのは35周年記念の東京国際フォーラム公演が延期になってしまったことです。その代わりに10月3日にこのアルバムのリリース記念コンサートを東京国際フォーラムホールCで行います!みなさんもおうち時間が長くて、溜まっていることもあると思うので、音楽で浄化できればいいなと思っています。もちろんお預けになっている35周年のライヴに向けてという気持ちと、色々なアイディアを次々と思いついているので、それを形にできることを楽しみにしています」。

森口は自分の人生を変えてくれたガンダムと、ガンダムソングを世界中に広げ、そのメッセージを人々に伝えることを、歌手としての“使命”として、これからも共に歩んでいく覚悟だ。

森口博子『GUNDAM SONG COVERS 2』特設サイト

森口博子 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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