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戦術破綻! ブラジル戦で露呈した森保ジャパンの看過できない問題点【ブラジル戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

実は内容では完敗だったブラジル戦

 試合後の記者会見に登壇した森保監督の表情は、前日会見で見せていた明るい表情とはうって変わり、終始沈みがちだった。

 もしカタールW杯優勝候補のブラジルに対して0-1で善戦したと受け止めている指揮官であれば、たとえ負けたとしても、もう少し明るい表情で、自信と手応えに満ちた受け答えをしていただろう。しかし、そうではなかった。

 実際、このブラジル戦のピッチ上で起こっていたことは、カタールW杯に挑む日本にとって、極めて厳しい現実を突きつけた。それは、ピッチサイドで指揮を執っていた森保監督が誰よりも強く感じたはずだ。

 為す術なく、完敗した試合。4-3-3の布陣を含め、アジア最終予選でV字回復するきっかけとなった現状の戦い方は、強豪相手にまったく通用しなかった。おそらく酒井、冨安、守田、大迫らが戦列に復帰したとしても、それほどの違いはないだろう。

 もちろん、実際に森保監督がこの試合をどのように受け止めたのかは分からないが、それなりのショックを受けても不思議ではない試合内容だった。逆に言えば、この試合を終えて自信や手応えを感じている監督だとすれば、そちらの方が心配になるほどだ。

 前半のボール支配率は、日本が39.8%でブラジルが60.2%。後半は、日本が55.9%でブラジルが44.1%に変化したが、最後の15分は、1点をリードしたブラジルが試合を終わらせるための戦い方をしたことを加味する必要がある。

 シュート数は、日本が前半1本、後半3本の計4本で、枠内シュートは0本。一方のブラジルは、前半12本、後半6本の計18本で、枠内シュートは5本。このスタッツだけを見ても、日本がほとんどチャンスを作れなかったことが分かる。

 ただ、もっとも注目すべきは、ブラジルに挑んだ日本の狙いがことごとく打ち砕かれてしまったことだろう。

 たとえば、この試合で森保監督が大きな狙いとしていたビルドアップだ。

 ブラジルがハイプレスをかけてきたとき、安易にクリアして相手にボールを与える選択をせず、プレスを回避しながら敵陣まで前進し、敵陣での攻撃時間、マイボールの時間をなるべく増やすことが、この試合におけるメインテーマのひとつだった。

 しかし蓋を開けてみると、日本がハイプレスを回避しきれずにボールを奪われ、ショートカウンターから自陣ボックス内に進入され、そこから多くのピンチを招いていた。

 決勝点につながるPKを与えたシーンも、ビルドアップ時の田中の堂安への縦パスがずれてしまい、そこを狙われて奪われた後に受けた波状攻撃の中で生まれたファールだった。

 森保監督は「後半は相手のブロックの中に入っていって、アタッキングサードにも入っていけていた」と振り返ったが、しかし実際は、後半にハイプレスをしかけられたときに日本がそれをかい潜り、敵陣まで前進できたシーンは一度もなかった。

 日本がグループ初戦で戦うドイツは、代表チームとしては世界で最も質の高いハイプレスを仕掛けてくるチームだ。おそらく森保監督もそれを知っているからこそ、このブラジル戦でハイプレスをかい潜るというチャレンジを指示したはずだ。

 しかし、この試合で浮き彫りになったのは、ドイツ戦でこのやり方を目指すことは極めてリスキーである、という厳しい現実だった。

 その他にも、日本が相手のビルドアップ時にプレスをかけても、このレベルの相手だとあっさり回避されてしまうことも分かった。どのようにしてゴールを奪うか、というテーマについても手応えらしきものは見当たらない。

 また、自陣でボールを奪った後にロングカウンターを仕掛けるパターンもまだ用意されておらず、頼みだった伊東個人の突破もブラジルには通用しなかった。

 キャプテンの吉田は「0-1になったとき、なんとか1-1にするサッカーをしなければいけない」と振り返ったが、ブラジル戦を終えたいま、果たしてその術を森保監督はイメージできているのだろうか。

 0-1というスコアだけを見れば、ややもするとポジティブな印象を受けてしまいがちだが、現段階で重視すべきは、結果よりも内容だ。その意味で、チーム戦術が破綻したブラジル戦で浮き彫りになった数々の問題は、本番での戦い方に大きな影響を与えて然るべきレベルのものだった。

 決して惜敗したわけではなく、何もできずに完敗した。もしW杯で結果を残したいなら、今回のブラジル戦をそのようにとらえるのが自然だろう。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.5点

19分のラフィーニャのシュートを足で止め、27分にはネイマールのシュートを好セーブ。他にも42分と75分にもネイマールのシュートを止めるなど、いくつかのピンチを救った。

【右SB】長友佑都(81分途中交代)=6.0点

右SBでも左と遜色ないプレーを披露。クロスは前半と後半で1本ずつと、攻撃の貢献度は少なかったが、守備では対峙したヴィニシウスを自由にさせることなく、無難な仕事ぶり。

【右CB】板倉滉=6.5点

ネイマールとマッチアップしてファールの多さは目立ったが、ゴール前のシュートブロックで何度もピンチを救った。パラグアイ戦のボランチ出場よりも、明らかに輝いていた。

【左CB】吉田麻也=5.5点

ビルドアップ時のミスパスが多く、相手に振り回されるシーンもあり、最終ラインを安定させることができなかった。パラグアイ戦に続く低調ぶりで、本番に向けて不安を残した。

【左SB】中山雄太=5.5点

左SBのレギュラーを奪うチャンスだったが、力不足を露呈。ラフィーニャの対応を含めて守備でいっぱいいっぱいになり、攻撃で貢献できず。クロスは後半の1本だけに終わった。

【アンカー】遠藤航=5.5点

ビルドアップ時に積極的にボールを受けたが、相手に囲まれロストする回数が増加。さすがにブラジル相手だとデュエルでも劣勢になり、ファールで止めるのが精一杯といた印象。

【右インサイドハーフ】原口元気(HT途中交代)=5.5点

立ち上がりは積極的にプレスに参加して勢いよくスタートしたが、時間の経過とともにトーンダウン。攻守両面にわたって存在感を示すことができず、前半のみで途中交代した。

【左インサイドハーフ】田中碧(81分途中交代)=5.5点

アジア予選で見せたレベルのパフォーマンスを見せられなかった。目まぐるしく変わる戦況の中で的確な判断ができず、守備面でもボール奪取できなかった。攻撃面の貢献も低い。

【右ウイング】伊東純也(72分途中交代)=5.5点

12分に対峙したギリェルメ・アラーナにクロスをブロックされ、その後も効果的なプレーを見せられず。自慢のスピードも封じられ、ほとんど何もできないままベンチに下がった。

【左ウイング】南野拓実(72分途中交代)=5.0点

自陣深い位置まで下がって守備に貢献したが、ボールロストでピンチを招いたほか、攻撃面で何もできずに終わった。このレベルの試合では状況に応じたポジショニングが必要。

【CF】古橋亨梧(67分途中交代)=5.0点

32分に伊東のクロスをヘッドで合わせたが、オフサイド。せっかくの先発出場だったが、ボールに触れる機会が少なすぎ、何も残せないままピッチから退いた印象は拭えない。

【MF】鎌田大地(HT途中出場)=5.5点

パラグアイ戦の活躍もあって後半開始から原口に代わってインサイドハーフでプレー。ただ、この試合ではチャンスを生み出せず、ボールロストも。81分以降はトップ下でプレー。

【FW】前田大然(67分途中出場)=5.5点

古橋に代わって後半途中から1トップでプレー。持ち前の脚力で単独プレッシングを試みたが、チャンスに絡めず、シュートも打てず。限りなく5.0に近いパフォーマンスだった。

【MF】三笘薫(72分途中出場)=5.5点

伊東に代わって後半途中から左ウイングでプレー。得意のドリブル突破にチャレンジしたが、対峙したミリトンに封じられた。もう少しプレーバリエーションを増やしたいところ。

【MF】堂安律(72分途中出場)=5.5点

南野に代わって後半途中から右ウイングでプレー。パラグアイ戦で見せたようなクリエイティブなプレーを見せられず、最後まで存在感を示せなかった。周囲との絡みも課題だ。

【DF】山根視来(81分途中出場)=採点なし

長友に代わって後半途中から右サイドバックでプレー。出場時間が短く採点不能。

【MF】柴崎岳(81分途中出場)=採点なし

田中に代わって後半途中からダブルボランチの一角でプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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