ダルビッシュを釣り上げたドジャース、グレイを得たヤンキースはともにフラッグディール戦線の勝ち組
MLBでは7月31日のウェーバーを経由しないトレードのデッドラインが過ぎた。日本のファンにとっては、何と言ってもレンジャーズのダルビッシュ有の移籍が大きなニュースだった。
ダルビッシュは最終的にドジャースに収まったが、他にもヤンキースら複数の球団が彼に食指を伸ばしていた。そのヤンキースは、最終的にはアスレチックスからエース右腕ソニー・グレイを獲得した。実は、ドジャースにとってのダルビッシュ、ヤンキースにとってのグレイは、ともにチームの事情からするとぴったりフィットするピースで、この逆では意義がかなり減じられてしまうところだった。
ドジャースはナ・リーグ西地区で独走状態にある。エースのクレイトン・カーショウが故障で戦列を離れているが、順調に行けば9月には復帰する。その間も先発投手の頭数は、アレックス・ウッド、リッチ・ヒル、ブランドン・マッカーシー、リュ・ヒュンジン、そして前田健太と十分だ。7月31日終了時点での地区2位との14.5ゲーム差が、カーショウ離脱の間に食いつぶされるとは考え難い。今回のダルビッシュ獲得は、あくまでポストシーズンで勝ち進むこと、1988年以来のワールドチャンピオンの座に就くことを目指してのことだ。そのためには「量」だけではなく、カーショウと並ぶ核となるエース級が必要だったのだ。
逆に言えば、ドジャースに必要なのはポストシーズンでの戦力としてのダルビッシュだ。ここに挙げた先発投手の全員を、最短でも来季までドジャースは契約上拘束することができるため、オフにはFAとなるレンタル移籍選手としてのダルビッシュは正に過不足ないところだったと言えるだろう。この「過不足ない」ということは特に重要だ。ダルビッシュのように全盛期の真っ只中ある選手の場合、この先数年も契約が残っていれば(拘束することができれば)、それが過剰な金額でない限りトレード商品としての価値が上がり、交換相手として差し出す若手もそれなりの有望株が必要となってくるからだ。その点今回のダルビッシュはレンタルなので、選りすぐりの有望株の放出は避けることができた。
一方、ヤンキースの事情はそうではなかった。このオフには、先発陣の中からマイケル・ピネイダ(すでにひじの手術で離脱しており、今季というか来季の登板もほぼ絶望)とCC・サバシアがFAとなるし、田中将大もオプトアウト(契約破棄)権を行使しFAとなるかもしれない。数日前にツインズから獲得した左腕のハイメ・ガルシアもオフにはFAだ。そうなると、ここで獲得するエース級は来季以降も契約が残っていることが望ましい。その点では、FA権取得は2019年オフのグレイはドンピシャだった。
ヤンキースもグレイ獲得に於いては、3人のプロスペクト放出した。それなりの出血は必要だったのだ。しかし、グレイバー・トーレス遊撃手やチャンス・アダムズ投手らの「虎の子」だけは守り抜いた。
ここから先、ダルビッシュやグレイが期待通り活躍してくれるかどうかは分からない。しかし、今年のフラッグディール戦線をこの時点で評価するなら、ドジャースとヤンキースは間違いなく勝ち組だ。