野球少年よ、YouTubeを疑え!プロ野球選手や指導者の言葉が正解とは限らない
猛暑が続く夏休みも、子供たちは元気だ。
8月5日は高円宮賜杯 第43回 全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメントの開会式で東京・神宮球場へ足を運んだ。そして、岩手県盛岡市に誕生した「きたぎんボールパーク」では公式アンバサダーに就任し、8月下旬に現地で野球教室に顔を出した。
子供たちに教えるときに気をつけていることがある。「自分で考えるきっかけ」を伝えることにとどめることだ。
「どうしたらコントロールがよくなりますか」。子供たちからの質問はストレートだ。大人は、体の動きの中で理屈はだいたいはわかる。ボールのコントロールを良くするには、リリースポイントが大事になってくるだろう。しかし、私は教えるときも、リリースポイントをどこにしたらいいのかは、子供たちが自分で考えることだと思っている。
ボールがキャッチボール相手の右へ抜ける場合は、ボールのリリースポイントが早いからだろう。左へひっかけてしまえば、ボールを持ちすぎているからだろう。そこまでは教えることができる。
では、どこが一番のリリースポイントか。それは、自分で練習して感覚をつかんでほしいと思っているので、「キャッチボールで相手の胸の前にボールがいったときの感覚を忘れないようにね」と伝える。
感覚を忘れず、自分のモノにするには、何度も反復して体で覚えていくしかない。もし、自分に合ったリリースポイントを見つけることができたとき、感覚のほかにもチェックできる動作や腕の位置などのポイントが見つかれば、修正するときにも役に立つだろう。
リリースポイントをどこにすればいいかは、人それぞれだと思っている。リリースポイントにどういうフォームからたどり着くかも一つではない。プロ野球選手も、メジャーリーガーも、だからこそ投球フォームは人それぞれだ。それだけ、簡単ではないということで、子供ならなおさらだ。だからこそ、指導に決めつけはよくないというのが持論だ。
野球に関しても、最近はYouTubeなどで情報があふれかえっている。「こうやって投げたらいい」「こんなふうに打てばいい」。たくさんの人たちが、様々な見解を発信している。そのことを批判するつもりはないが、子供たちには「YouTubeを疑え」「参考にできることがあっても、鵜呑みにするな」と言いたい。もちろん、私のYouTubeも例外だとは思っていない。
自分で考えて、実際に投げてみてということを繰り返すと、動画で答えを拾うよりもずっと長く時間がかかる。だから、練習時間も長くなる。だけど、こういう練習時間の長さは、決して「悪」とは思わない。「一日何時間、練習しろ」などという時間設定ありきの練習は論外だが、自分が納得できるように考えながら、練習を続けた結果としての「長い練習」は、目的がはっきりしているからだ。そういう子供たちからは「練習時間」を取り上げるのではなく、休憩や暑さ対策などの健康管理でサポートしてあげるのが周囲の人たちの役割ではないだろうか。時間がかかっても、自分で考えて導いた「答え」は確かな自信を生んでくれる。
マクドナルド・トーナメントの始球式で投げる機会があった。私が使用したのは少年野球用の軽くて、小さいボールだった。元メジャーリーガーだろうが、事前に準備をせずに臨んだら、ストライクは簡単には入らないのだ。この夏、ぜひ自分の感覚をつかむ練習に励んでほしい。