世界ライト級15位を同窓生が激励
現在、IBFとWBOでライト級15位にランクされる三代大訓は、プロ入り前、中央大学ボクシングのキャプテンだった。
その三代よりも2学年上で、現在中央大学非常勤講師とサッカー部コーチを兼任する高橋龍之介が三代を激励に訪れた。
中大生アスリートは同じ寮で生活するので、おそらく何度かすれ違ったことくらいはあるだろう。が、二人が言葉を交わすのは初めてのことであった。
高橋は語った。
「ボクシングを初めて間近で目にして、とにかく驚きました。スピード、ステップ、パンチ、研ぎ澄まされた感覚、音、全てが私の想像を超えていました。また同時に、すごく繊細なスポーツなのだとも思いました。
ボクシングで起こっている現象は私の専門であるサッカーにも通ずるものがあると瞬時に感じました。なぜなら、サッカーはチームスポーツでありながら、局面を切り取ると1対1の個人の戦いだからです」
高校時代はJリーグ、ジェフ千葉のユースに所属し、2011年に中央大学に進学。今日、日本代表のGKであるシュミット・ダニエルは1学年上、サムライブルーの快FWである古橋亨梧は2学年下である。
左右どちらでもサイドバックとしてプレーできた高橋は、中大で活躍後、直ぐにオランダに渡る。2015年4月のことだ。同7月に、当時オランダ3部リーグに所属していたSteDoCoと契約した。その後、ドイツに移り、選手の傍らコーチライセンスを取得した。
およそ4年間、ドイツで生活した後に米国、アラバマ州立大学大学院を卒業。帰国後、現職に就いた。
「私が最も住みやすかったのはドイツですね。ドイツ人と日本人は似た感覚を持っていると思います。時間を守る所だったり、あまり人に対してグイグイ来ないところなどに共通点が見られます。町も綺麗で公共交通機関がしっかりしている印象がありますね」
高橋は三代の練習風景を見詰めながら言った。
「すごく刺激になりますね。世界に対して挑戦し続ける三代選手の意志、向上心に心を打たれました。また、彼の夢を追う姿は多くの人々に感動を与えると信じています。
日本におけるスポーツの地位は、まだまだヨーロッパやアメリカと比べて低く、監督、コーチ、また選手が低賃金で働かなくてはいけない環境があります。彼らが輝くためにこのような環境を私は変えたく日本に帰ってきました。そして、今回三代選手のボクシングを見て、さらに強く考えさせられました」
「三代選手の柔軟なステップ、間の取り方、足の指の使い方、全てが一流でした。競技は違いますが、すごく勉強になりました。
そして中央大学の同窓生が、必死に生きている様を見て、とても誇りに思いました。私自身もまだまだ頑張り続けなくてはいけないなと、刺激をもらいました。同窓生である三代選手そして、私の先輩で日本代表のシュミット・ダニエル、後輩の古橋亨梧にしてもみな真面目で、夢に向かって愚直に取り組み、夢を掴んでいます。これは中央大学で4年間学べたからこその結果だと私は思います」
5月11日にオーストラリア、ニューキャッスルに遠征し、海外進出を白星で飾った三代も、高橋の発言を受けて次のように話した。
「サッカーとボクシングで競技は違いますが、同じスポーツ関係者にそう言われると嬉しいですね。ボクシング業界も、社会での地位は全体的に高くはないと僕も思います。環境作りも周りに頼るばかりではなく、僕たち選手も能動的に動いていかないといけませんが、高橋さんのような方がおられると心強いです。名門サッカー部のコーチをされてる方の雰囲気や言葉はやはり刺激になりました。
まだまだサッカーの日本代表と比べると大した実績をボクシングで残せていませんが、練習における真面目さは中央大学での4年間で培ったものが大きいと自分も感じます。18歳から22歳という大切な時期に良い環境で過ごす事ができた4年間は、運も良かったなと思います。
高橋さんは、サッカーというスポーツを高いレベルまで極めてる方なので、感動や応援の力というよりも、ボクシングという過酷なスポーツの1試合にかける準備の大切さなどを指導者目線で見て頂いて、褒められるような試合がしたいですね」
高橋は、日本で行われる三代の次戦に必ず駆け付けると約束した。競技は違うが、互いに認め合う関係ー-ー中大OBの化学反応はプラスに働きそうである。