【オートバイのあれこれ】ビッグバイクの在り方を変えた存在。CBR900RR
全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。
今日は「ビッグバイクの在り方を変えた存在。CBR900RR」をテーマにお送りします。
ホンダの現行スーパースポーツ『CBR1000RR-R』。
この祖先にあたるのが、1992年(平成4年)に登場した『CBR900RR』です。
そのルックスから一見、80年代のレーサーレプリカ的な「速さ最優先のバイク」と思われがちなCBR900RRですが、ホンダはこの900RRを「楽しく走れる大型スポーツ」としてポジショニングしていました。
もう少し具体的に言うと、「750ccオーバーの大型車であっても、ライダーが確かな手応えと共に操れる」ということを念頭に置いて開発がなされたということ。
この指針の背景にあったのは、
“750cc超の大型車=有り余るパワー&ヘビー級の車体”
すなわち、
「ナナハンオーバーは到底、世間一般のライダーが操り切れるものではない」
という当時における(半ば暗黙の)通例でした。
ホンダはこの通例を、CBR900RRを通じて打破しようとしたのです。
そんな900RRの最大の見どころが車重の軽さで、900RRは乾燥重量が185kg、装備重量が206kgとなっていました。
当時、750cc超の市販スポーツモデルの車重はだいたい220kg〜、重量車だと270kgくらいはありましたから、900RRのこの数値は頭ひとつ抜けて軽かったと言えます。
また、900RRは車体の小ささも際立っており、ホイールベースはなんと1,405mm。
これは、同時期に発売していた『CBR600F』と全く同じ数値で、さらに言えば、同じ92年にデビューした中型ネイキッド『CB400SF』より50mmも短く、96年登場の250ccモデル『ホーネット』と比べてもなんと10mm短かったのです。
「250ccのバイクよりもホイールベースが短い」
900RRのコンパクトさが伝わるのではないでしょうか。
結果的に、900RRはその軽量コンパクトな車体が功を奏し、ホンダが目指した「楽しく走れる大型スポーツ」を実現。
「大型だけど、ワインディングを軽快に走れる!」、「900ccのNSRみたい!」といった評価と共に、900RRはヒット作となったのでした。
そしてこの900RR以降、日本の大型スポーツバイクは、その在り方を変容させていきます。
従来のビッグバイクは(先述のとおり)、「ハイパワーな代わりに車体の重さ・大きさには目を瞑ってね」的なところがありましたが、900RRが現れてからは、エンジンパワーはそこそこに、車体の軽さやアジリティ(敏捷性)でパフォーマンスを追求するキャラクターが主流となっていきました。
98年に登場したヤマハ『YZF-R1』をはじめ、2000年代以降主流になった1,000ccのスーパースポーツモデルも、「いかにパワーを上げるか」ではなく、「いかにバイクをコントロールしやすくするか」に主眼が置かれ、そのやり方が現在にいたっては正統派となっています。
当時のレースレギュレーション(TT-F1/750cc)にも則しておらず、また、だからと言ってリッターオーバーマシンほどのスペックも備えていなかった、やや異端的なスポーツバイクだったCBR900RR。
しかし、今からしてみれば、それは21世紀のリッタースポーツ車の「正統」を先取った形だったのです。
画像引用元:本田技研工業/ヤマハ発動機