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【オートバイのあれこれ】ビッグバイクの在り方を変えた存在。CBR900RR

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「ビッグバイクの在り方を変えた存在。CBR900RR」をテーマにお送りします。

ホンダの現行スーパースポーツ『CBR1000RR-R』。

▲2020年から発売されている現行モデルのCBR1000RR-R
▲2020年から発売されている現行モデルのCBR1000RR-R

この祖先にあたるのが、1992年(平成4年)に登場した『CBR900RR』です。

▲900ccという大排気量ながら、当時のビッグバイクの常識を打ち破る軽量コンパクトさを備えて登場!
▲900ccという大排気量ながら、当時のビッグバイクの常識を打ち破る軽量コンパクトさを備えて登場!

そのルックスから一見、80年代のレーサーレプリカ的な「速さ最優先のバイク」と思われがちなCBR900RRですが、ホンダはこの900RRを「楽しく走れる大型スポーツ」としてポジショニングしていました。

もう少し具体的に言うと、「750ccオーバーの大型車であっても、ライダーが確かな手応えと共に操れる」ということを念頭に置いて開発がなされたということ。

この指針の背景にあったのは、

“750cc超の大型車=有り余るパワー&ヘビー級の車体”

すなわち、

「ナナハンオーバーは到底、世間一般のライダーが操り切れるものではない」

という当時における(半ば暗黙の)通例でした。

▲1986年に発売されたCBR1000F。車重は装備重量で273kgあった
▲1986年に発売されたCBR1000F。車重は装備重量で273kgあった

ホンダはこの通例を、CBR900RRを通じて打破しようとしたのです。

そんな900RRの最大の見どころが車重の軽さで、900RRは乾燥重量が185kg、装備重量が206kgとなっていました。

当時、750cc超の市販スポーツモデルの車重はだいたい220kg〜、重量車だと270kgくらいはありましたから、900RRのこの数値は頭ひとつ抜けて軽かったと言えます。


また、900RRは車体の小ささも際立っており、ホイールベースはなんと1,405mm

これは、同時期に発売していた『CBR600F』と全く同じ数値で、さらに言えば、同じ92年にデビューした中型ネイキッド『CB400SF』より50mmも短く、96年登場の250ccモデル『ホーネット』と比べてもなんと10mm短かったのです。

「250ccのバイクよりもホイールベースが短い」

900RRのコンパクトさが伝わるのではないでしょうか。

▲軽量コンパクトであればあるほど、乗り手が操りやすくなるのは言うまでもない
▲軽量コンパクトであればあるほど、乗り手が操りやすくなるのは言うまでもない

結果的に、900RRはその軽量コンパクトな車体が功を奏し、ホンダが目指した「楽しく走れる大型スポーツ」を実現。

「大型だけど、ワインディングを軽快に走れる!」、「900ccのNSRみたい!」といった評価と共に、900RRはヒット作となったのでした。

そしてこの900RR以降、日本の大型スポーツバイクは、その在り方を変容させていきます。

従来のビッグバイクは(先述のとおり)、「ハイパワーな代わりに車体の重さ・大きさには目を瞑ってね」的なところがありましたが、900RRが現れてからは、エンジンパワーはそこそこに、車体の軽さやアジリティ(敏捷性)でパフォーマンスを追求するキャラクターが主流となっていきました

▲メーカーは異なるが、ヤマハのYZF-R1は「CBR900RRの発展形」と言えるかもしれない
▲メーカーは異なるが、ヤマハのYZF-R1は「CBR900RRの発展形」と言えるかもしれない

98年に登場したヤマハ『YZF-R1』をはじめ、2000年代以降主流になった1,000ccのスーパースポーツモデルも、「いかにパワーを上げるか」ではなく、「いかにバイクをコントロールしやすくするか」に主眼が置かれ、そのやり方が現在にいたっては正統派となっています。

当時のレースレギュレーション(TT-F1/750cc)にも則しておらず、また、だからと言ってリッターオーバーマシンほどのスペックも備えていなかった、やや異端的なスポーツバイクだったCBR900RR。

しかし、今からしてみれば、それは21世紀のリッタースポーツ車の「正統」を先取った形だったのです。

▲あの時、900RRで提起された“新たなビッグバイク像”は今、スタンダードなものとなっている
▲あの時、900RRで提起された“新たなビッグバイク像”は今、スタンダードなものとなっている

画像引用元:本田技研工業/ヤマハ発動機

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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