Yahoo!ニュース

日本社会は弱肉強食と弱者保護のどちらを重視すべきなのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
困っている人を助ける考え方は重視すべきなのか(写真:アフロ)

人の社会が健全な安定と成長を維持していくためには、「弱肉強食」と「弱者保護」両者の程よいバランスが求められる。それでは日本ではどちらを重視すべきと考えられているのだろうか。統計数理研究所による定点観測的調査「日本人の国民性調査」(※)の結果を基に、その実情を確認する。

今項目は今後の日本社会のあり方について質問している。2つの選択肢「自由に競争できる社会にすることが、もっと必要だと思う」「弱い立場の人々を保護することが、もっと必要だと思う」を挙げ、どちらの意見に賛成かを尋ねたものだが、次のグラフはそのうち前者、自由競争・弱肉強食を回答した割合。回答は3調査分のみ。そして「その他」「無回答」は数%ずつしかなく、今グラフに記載されていない弱者保護的な考え方は、実質的に残りの部分だと思えばよい。例えば2018年における自由競争回答者は全体で31%とあるが、弱者保護は63%に達している。

ただし年齢階層別などの詳細属性別の値は、現時点で直近2018年分の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる。

↑ 日本の社会のこれからのあり方について自分の考えはどちらに近いか「自由競争できる社会」「弱い立場の人々を保護」(「自由競争」回答値、年齢階層別)
↑ 日本の社会のこれからのあり方について自分の考えはどちらに近いか「自由競争できる社会」「弱い立場の人々を保護」(「自由競争」回答値、年齢階層別)

直近の2018年では全体値は31%。2013年も同じ31%なことから、恐らく年齢階層別の動向も似たようなものとなっているのだろう。

2013年分を見ると、30代が自由競争容認派がもっとも多くなるが、それでも4割にとどまっている。日本ではおおよそ社会のあり方として弱者保護を推し進めるべきだとの意見が強いようだ。そして一部イレギュラーがあるものの、歳を重ねるに連れて自由競争派が減る=弱者保護派が増えていく。これは5年前の2008年の傾向とさほど変わりがなく、世代ベースでの認識とは別で、回答者自身の年齢に寄るところが大きそうだ。つまり歳を重ねるに連れて身体的な面などでの弱体化を自覚し、だからこそ自らを保護して欲しいとの意見が増えるという次第。

一方で年齢階層別動向が分かる最新の2013年分と、その5年前の2008年分の結果を比べると、一様に自由競争派が増えているのが分かる。当然その分、弱者保護派は減っている。高齢層でも増えていることから、社会全体として自由競争を推し進めるべきだとの意見が高まりを見せていると見た方が無難ではある。それでもなお、弱者保護派が多数派なのに違いはないのだが。

なお学歴別でみると、当然のごとく高学歴の方が自由競争派の値は高い。自らの経歴・スキルを活かすには自由競争の方が都合はよく、むしろそのために勉学を積み重ねてきた人も多いからである。

↑ 日本の社会のこれからのあり方について自分の考えはどちらに近いか「自由競争できる社会」「弱い立場の人々を保護」(「自由競争」回答値、学歴別)
↑ 日本の社会のこれからのあり方について自分の考えはどちらに近いか「自由競争できる社会」「弱い立場の人々を保護」(「自由競争」回答値、学歴別)

とはいえ、年齢階層の別なく5年前の2008年と比べて2013年では自由競争派が増えていることもあり、学歴別の上昇ぶりも大きな変化は(%ポイントの上では)見られない。

今件はあくまでも概念的な二択で、具体的な事例を挙げれば回答傾向は大きな違いを示すことは容易に想像できる。他方、社会全般的に自由競争の一層の容認によって、活力を見出そうとする気概を覚えることはできよう。

■関連記事:

【自由競争か弱者保護か、年収次第で変わる選択】

【86.8%が「国際的競争力アップのために科学技術の発展は欠かせない」】

※日本人の国民性調査

統計数理研究所が1953年以降5年ごとに実施しているもので、各回ごとに微妙に細部は異なるものの、基本的に20歳以上の男女個人を対象にした標本調査。層化多段無作為抽出法で2254人から6400人の標本を抽出し、個別面接聴取法で実施している。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事