SNSの登場によりハードルが下がる「パパ活」

近年、「パパ活」や「P活」と呼ばれる、裕福な年上の男性（＝パパ）と、食事や買い物、デート等、一緒の時間を過ごし、その対価としてお金やモノをもらうことが、SNSの普及を背景に広がり、カジュアル化しています。お小遣いをくれる父と娘の関係のようなパトロンを探す活動という意味で、「パパ活」という言葉が生まれ、「ママ活」（若い男性が年上の女性から報酬をもらう）や「ギャラ飲み」（飲み会の主催者が参加者に対して謝礼金を支払う飲み会）などといった言葉と共に広がってきました。

パパ活では報酬を渡す見返りに男性から性行為を求められることもありますが、基本的には食事等のデートのみで「性行為が目的ではなく自由恋愛の延長上である」として、売春や性風俗と異なるとされることもあります。しかし、SNSでは「プチ」（＝プチ援助交際）、「大人」（＝大人の関係を表し、性行為があること）、「サポ」（＝サポートを表し、援助交際を表す）といったハッシュタグをつけての投稿も散見され、その境界は曖昧なものになっていると考えられます。

パパ活のマッチングを行うアプリや交際クラブもありますが、利用者間で性行為が行われた際に男性側が法律違反となることを避けるため、基本的に登録可能な女性は18歳以上で、高校生は登録不可としています。そのため、未成年の人や高校生以下の人は、その他のSNSを活用してパパ活や援助交際の相手を探すこととなります。匿名のSNSでは、自分のプライバシーを守ることができ、危ないと思った時は相手との連絡を絶てばよいと感じられる一方で、相手の素性も分からず、もし性被害や詐欺等にあった時にも相手を特定し、罰することがより難しくなります。

気軽に見える？パパ活や援助交際のリスクとは？

SNSでは、パパ活や援助交際は気軽に始められて、若さを魅力として同世代がなかなか行けないようなお洒落でリッチな場所に連れて行ってもらい、たくさん稼げるというメッセージが多く出ています。しかし実際には、相手側がプロフィールを偽って掲載していたり、約束していた支払いがされずに逃げられてしまう、学校や勤務先・保護者にばらすと脅される、といったリスクがあります。さらに、密室でお酒を飲まされたり食事中に薬を盛られたりして、性被害や金銭トラブルに巻き込まれる、盗撮やストーカー被害にあうなど、性的な被害や搾取につながるケースもあります。しかし、たとえ被害にあったとしても、問題が表面化することを恐れて、被害者の泣き寝入りとなってしまうこともあるのです。

被害にあったとしても、被害者は悪くない

ただ、性被害にあっても、被害にあった人が悪いわけではなく、責任は加害者にあります。

若い人がさみしい気持ちや知識不足に付け込まれるなどして、大人から被害にあってしまうことは起こり得ます。パパ活や援助交際で起こる性被害の多くは、相手の方が立場も人生経験も腕力も上という力関係も背景にあります。また、被害にあうのは女性だけではなく、男性やLGBTQの子ども・若者となることもあります。

そんな中、2023年7月に刑法が改正され、本人の同意の有無にかかわらず処罰対象となるいわゆる性的同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられました。また、わいせつ目的で、16歳未満の人に、（1）脅す、うそをつく、（2）拒まれたのに、何度も繰り返し求める、（3）金銭やモノを与える、またはその約束をする、のいずれかの手段を使って会うことを要求すること自体、罪に問われるようになりました。その結果、16歳未満の人に会うことや、性的な写真や動画を求めることも犯罪となります。（ただし、13～15歳の人については5歳以上、年上の場合が処罰対象となります）

また、未成年（18歳未満）を相手とする大人の性行為や性的な接触行為は、刑事罰以外にも、自治体の青少年健全育成条例、児童買春禁止法、児童福祉法など、様々な法律や条例に違反する行為となる可能性もあります。

もし困った時の相談先は？

もし、パパ活や援助交際、SNSなどを通して性被害にあった場合は、様々な支援や相談先もあります。助けを求めることは決して恥ずかしいことではなく、自分の心と体の安全を最優先にしていいのです。それぞれの特徴や主な支援内容は、以下の通りです。

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター

全国共通ダイアル（#8891）で、最寄りのセンターにつながり、産婦人科医療やカウンセリング、法律相談など専門機関と連携し、必要な支援をまとめて提供してくれています。

警察への相談

性被害に関する警察の相談専門の全国共通ダイアル（#8103）があり、被害を訴えたい場合や再び被害にあう可能性がある場合は相談しましょう。緊急避妊や加害の証拠をとるのに対応した婦人科等の医療機関の紹介や、医療費等の補助についても相談できます。

可能であれば、なるだけ早く被害にあった服装のままでいくことで、毛髪や体液、尿や血液からレイプドラッグの成分検出などの加害証拠の採取を行えます。もしシャワーや着替えをした場合は、被害の時に着ていた衣服・下着をビニール袋などに入れて持参できるとよいでしょう。

婦人科・産婦人科等の病院

緊急避妊薬の処方や体の治療を受けたい場合は、婦人科・産婦人科等に相談できます。体の性が男性の人は、泌尿器科・皮膚科、保健所等で性感染症の検査が可能です。

その他、内閣府が運営するチャットでの相談窓口の「CureTime」、10代20代の女の子のための相談支援を行うNPO「bondプロジェクト」、24時間365日フリーダイアルで電話相談ができる「よりそいホットライン」などもあります。自分にあった安心できる相談機関を選んでもらって大丈夫です。

子ども・若い人たちに寄り添い、できることは

大学生から、「友達がパパ活をしているが、自分が何かできることは？」という相談を受けることもあります。リスクがあるとわかっていながら、パパ活や援助交際をする若い人たちの背景には何があるのでしょうか。表面上は、身勝手で軽率な行動に見えても、家族の不和があってせめて逃げ場となる場所がほしい、交際相手やホストに金銭的に搾取されている、進学や留学、資格など将来のためにお金を貯めたい、過去の性被害体験の影響などの理由があることもあります。自分の好きな服を買ったり、美容整形やエステ、遊ぶお金がほしいという子も、満たされない心の穴を埋めようとしたり、コンプレックスを煽り「こうでないと魅力的ではない」という社会からのプレッシャーを抱えたりしているのかもしれません。

「自分なんて必要とする人なんていないのでは？」と思っていた子が、大人から関心を向けられ、共感的に話を聞いてもらい、自分の価値をお金によって可視化されることで、自分の価値を見出している場合、「あぶない」「してはいけない」と一方的にその子を叱ったとしても、むしろ孤立を深めてしまうかもしれません。まずはその子の気持ちや考えを理解しようとし、話に耳を傾けることが大切です。

そして、周囲の大人ができることとして、子どもや若い人たちが抱える悩みを打ち明けやすいオープンな関係を作ったり、子どもが自分らしくいられる居場所を作ったりする必要があります。

そして、もしトラブルにあった時は、その背景にある生活の困り事や不安、自己不全感、人間関係における課題等を把握していくことでその人へのサポートの方向性を考えていくことが大切です。普段からSNSの使い方について一緒に考えるなど、子ども・若い人たちの実状や気持ちをまずは受け止める姿勢が、何か困った時に相談しやすい関係性につながるでしょう。さらに必要に応じて、大人や支援者自身もかかえこまず、困った時は専門的なサポートやケアを受けるということも役立ちます。

【参考】

法務省　性犯罪関係の法改正等　Ｑ＆Ａ　

子どもへの性暴力［第２版］：その理解と支援, 藤森 和美・野坂 祐子 (編), 誠信書房, 2023

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【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】