自民党総裁選・立憲民主党代表選 緊急避妊薬の処方箋なし薬局販売に賛成?反対?公開質問状回答結果
立憲民主党の代表選は9月7日に告示・23日に開票。また、自民党総裁選は9月12日に告示・27日に開票となり、各候補者の政策への注目が集まっている。
今回、筆者が共同代表を務める緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト(略称:緊急避妊薬を薬局でプロジェクト)にて、各候補者に緊急避妊薬の処方箋なしでの薬局販売(OTC化)に関する公開質問状を送付、その回答を紹介したい。
なお、質問は(1)緊急避妊薬のOTC化に賛成/反対か、その理由 、(2)緊急避妊薬のOTC化はいつまでに実現すべきであると考えているか、(3)緊急避妊薬のOTC化への慎重意見として性についての知識の不足が指摘されているが、学校における性に関する教育についてどのように考えているか、の3点とした。
公開質問状は9月17日に送付し、19日を回答の期限とした。
自民党総裁選候補者全員が無回答
自民党総裁選では過去最多の9人が立候補したが、その全候補者から回答が得られなかった。
小泉進次郎氏からは「党からの通達により回答を見送らせていただきます」との回答があったが、その他の候補者からは反応は得られなかった。
なお、全国霊感商法対策弁護士連絡会による旧統一教会との関係を問う公開質問状や、日本若者協議会による若者政策に関するアンケートにも総裁選全候補者からの回答はなかったという。
立憲民主党代表選候補者は4名中3名が賛成との回答
立憲民主党代表選の各候補者の回答と理由や追記があった内容は、以下の通り。(回答の到着順に掲載)
■枝野幸男氏:「私たち日本社会のSRHR前進に必要」
(1)緊急避妊薬OTC化:賛成
私たち日本の社会のSRHR前進に必要と考えます。
(2)OTC化期限:2024年度中・できるだけ早く/2025年度中(両方を選択)
選択的夫婦別姓などと同様に政治過程を除き既に結論は出ている問題であるからこそ拙速を避け丁寧な議論を国民と共有しながら進めたい。
(3)学校における性教育:充実させるべき
コンドーム使用率低下による妊娠や性感染症リスク増大、性暴力、DV気づきや相談機会の喪失などOTC化慎重論の懸念事項も、基本的には「性についての知識不足」または「誤った情報の蔓延」にあります。性教育と身近な相談体制の充実強化を同時並行で進めていかなければなりません。
■泉健太氏:性暴力被害者支援と共に推進すべき
(1)緊急避妊薬OTC化:賛成
私もこの件の院内集会などに参加し、アフターピル(緊急避妊薬)は処方箋なしで薬局で購入について、推進すべきと意見を表明してきました。
性暴力は、被害者の人権を傷つけ、深刻な被害を及ぼすものです。性暴力を禁止し、性暴力を性犯罪として適正に処罰するために刑事法の改正が必要であると考えています。
2018 年 6 月には、性暴力の被害者が適切な支援を受け、心身の健康の回復のために継続的な支援を受けることができるようにするために、「性暴力被害者支援法案」を衆院に提出しました。
引き続き、成立を目指して取り組んでいきます。
(2)OTC化期限:2024年度中・できるだけ早く
(3)学校における性教育:充実させるべき
■吉田晴美氏:「SRHRの実現に不可欠」
(1)緊急避妊薬OTC化:賛成
避妊の失敗や性暴力などによる「意図しない妊娠」を防ぐ緊急避妊薬のOTC化は、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の実現に不可欠であり、国連からも早期実現を勧告されているから。
(2)OTC化期限:2024年度中・できるだけ早く
(3)学校における性教育:充実させるべき
なお、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)とは、性と生殖にかかわることにおいて、十分な知識を持つことができ、自分の体やいつ子どもを産むか/産まないか、どのような性生活を送るか、どう自分の性のあり方を表現するかなど、自分の意思で決め、必要なヘルスケアを受けることができ、ウェルビーイングを実現できることを指す。
緊急避妊薬の処方箋なしの薬局販売の行方は?
2021年から緊急避妊薬のOTC化の検討が始まったが、2023年1月のパブリックコメントでは約4万6千件の意見が集まり、その約98%はOTC化賛成と回答している一方で、OTC化に向けた具体的な見通しが立たない状況が数年に渡り続いている。
薬局販売における課題を抽出・整理することを目的に、2023年11月から日本では全国145の薬局で処方箋なしでの薬局販売についての試験的運用・調査が始まったが、調査報告では期間中2000件以上の利用者があったにもかかわらず、サンプル数が少ないという理由で2025年3月末まで期間が延期されている。今年度中に対象となる薬局数を200程度に増やすという発表もあったが、2024年9月現在、いつどの薬局が増えるのかという通達はない。
フランスやカナダなど諸外国では緊急避妊薬を含む避妊の無償化の政策が「避妊へのアクセスは権利」「避妊へのアクセス改善はジェンダー不平等を解消し、ヘルスケアに関するコスト軽減にもつながる」などとして推進されてきた。
「日本だから仕方がない」で終わるのではなく、避妊に関する政策を重要なイシューとして皆さんと考えていきたい。