氷川きよし“専属”で徳光の“後継者”、西寄ひがしはブレイク必至!
歌手活動59年目の美川憲一が、「栃尾勝代(とちお・かつよ)」なる女性演歌歌手に扮し、昭和の歌番組を彷彿(ほうふつ)とさせる豪華なセットとドライアイスの演出の中で歌う曲のタイトルは『空き地にしないで』。業務用カラオケでおなじみの「第一興商」のテレビCMである。
美声で“前口上”気になる正体は…
同社は2016年より、カラオケで培ったノウハウを活かし、コインパーキング事業に参入。「栃尾勝代」は“土地を活用(とちをかつよう)”を捩(もじ)っている。
そのCMで、美川が登場する前に「あなたの土地のお悩みを、聞かせていただく心意気」「どんな土地でもお任せあれ」と、見事な滑舌と張りのある美声で“前口上”を行うのが西寄ひがし(にしより・ひがし)。彼は氷川きよしの“専属”に近い司会者だ。
氷川きよしのデビュー時から寄り添う
御存知のとおり、氷川は2022年12月31日をもって、いったん歌手活動を休止している。そんな氷川のデビュー年から、全国各地のホールコンサートや日本武道館での節目のコンサート、明治座を始めとする舞台公演、さらには年末、東京国際フォーラムホールAで開催される一年の集大成ともいえる「きよしこの夜」でも、名MCで氷川を支えてきたのが西寄だった。
“股旅演歌”を抜群の歌唱力で披露する一方で、いわゆる“天然”の拙(つたな)いトークで「かわいい」と多くのマダムを魅了し、「私たちが守ってあげなければ」という想いにもさせていた氷川。
その傍らで、氷川のトークの味やキャラクターを邪魔することなく、だが必要な部分はキッチリ押さえ、氷川にもファンの皆さんにも愛情をもって進行していた西寄は、時折、場内から大拍手を浴びることがあった。
それは、氷川の一年の活動を振り返り、いつどこでコンサートを行ってきたのか会場名をスラスラと言ってみたり、「日本レコード大賞」といった氷川の足跡を丸暗記して“前口上”に替えたりした時。10や20ではなく、30、40といった数を時系列で、一度も噛んだり突っかかったりすることなく、やはり見事な滑舌と発声で紹介するのだ。愛情とリスペクトがなければ、そのような“芸”はできないだろう。
氷川ファンからの信頼は絶大
だから西寄は、氷川ファンから「西さん」と呼ばれ、慕われ、時にはファンから氷川への伝言を預かることも多かったようだ。
それは例えば、氷川の体調やメンタルを心配する言葉や、ファンの“総意”に近い意見だ。「西さんなら、きっと伝えてくれる」「そして寄り添ってくれるはず…」。ファンの皆さんは、そう信じている。これほどまで信頼されている“MC”を私は知らない。
ふくよかなボディと平和的なルックスの西寄だが、多くの仕事で氷川とタッグを組んでいるため、氷川のボディガード的な役割を担うこともあれば、事務所スタッフよりも先にファンや業界関係者を見つけ、氷川に伝えることもある西寄。
筆者が体験した西寄のすごさ
ずいぶん前の話になるが、私が在阪局の朝ワイド番組に出演し、近所のホテルのカフェでスタッフと打ち合わせをしていたところ、大阪城の周辺をジョギングしてきたという氷川と西寄に出会った。
「西寄さんが美保子さんを見つけて…」とは氷川の弁。西寄は、私を見つけたことをまず氷川に伝え、実際に私に声をかけてきたのは氷川だった。そういう“順番”もちゃんと守れる人。そして、万全のコンディションで歌えるよう、体づくりにも余念がない氷川の“朝のジョギング”に付き合うのも西寄だったのである。
もう一つ、憶えていることがある。それは氷川が歌手活動休止を発表した2022年1月21日。私が当時出演していた番組でこの件を扱うことになり、西寄に連絡をとった時だ。
私信ゆえ、詳細は控えるが、彼は氷川の休養に短い文章ながら深い理解と愛情を示し、「よろしくお願いします」と結んだのである。あと約一年、氷川の傍に西寄が居てくれるなら安心だ…と心から思った。
氷川の活動休止、“専属”西寄の活動は…?
歌手活動休止を発表してからの氷川は、例年以上に多忙な日々を過ごし、西寄も同様だったのだが、年末が近づくにつれ、氷川ファンの間で言われていたのが「これから西さんは、どうなるのだろう」ということだった。ほぼ“専属”のMCである西寄の仕事が激減してしまうことが目に見えていたからだ。
だが、そこは氷川の所属事務所「長良プロダクション」も理解をしていたうえ、もともと、個人でトークライブを行っていたこともあり、今年に入り、さまざまなオファーが舞い込んでいる。
冒頭の『第一興商』のテレビCM出演は、その一つである。実は西寄は、あの徳光和夫から「歌謡ショー司会者の後継者」と言われているうえ、氷川の前には森進一の専属司会者で、もともとは付き人だった。つまり、演歌歌謡界では知る人ぞ知る存在だったのである。
「お笑いコンビ」とのトークライブも!
3月は、川中美幸主演舞台『オルガンズ~おんな赤ひげ奮闘記~』に俳優として出演した西寄。後半、川中が“おんな赤ひげ”のままオリジナル曲を数曲歌った際には、西寄は衣装を司会者のそれに着替え、見事な前口上を披露し、彼目当てで訪れていた観客をおおいに沸かせていた。
そうした西寄の人気と名司会ぶりは、他の大御所歌手の耳にも当然入っており、「ぜひ、自分のステージでも」と自らオファーに来る者も多いと聞く。氷川が歌手活動を休止しているため、声をかけやすくなったのである。
付き人出身だからだろう。礼儀正しく、自分の立ち位置を存分に理解した“コミュ力”が身についている西寄は、どんな場所でも愛される。
25日には、「以前、ラジオ共演で意気投合した」(西寄談)という、同郷(大分県)のお笑いコンビ「ダイノジ」との2度目のトークライブ『東京勝彦、西へ』が、ラスタ池袋で開催される。水野勝と大谷ノブ彦と西寄ひがし、3人の名前から一文字ずつ取ったタイトルだ。
Z世代が牽引するブームに欠かせない存在
現在は、昭和歌謡ブーム。昭和生まれのみならず、いわゆるZ世代に刺さっていることから、珍しく老若男女すべてを巻き込む一大ブームとなっている。
その火付け役とも言えるのが『限界突破×サバイバー』で自らも“突破”した氷川きよしであり、繰り返しになるが、長年その傍らに居たのが西寄ひがし。喋りのスキルの高さと、そのプロセスや背景を理解すればするほど「使いたくなる」「一緒に仕事をしたくなる」のが西寄ひがし。昭和歌謡ブームに欠かせない人物なのである。