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【母乳育児で食物アレルギーを予防】生後3日間は牛乳を避けよう!最新の研究結果とは

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【生後3日間は牛乳を控えることで食物アレルギーのリスクを下げる】

生まれたばかりの赤ちゃんに牛乳を与えることは、食物アレルギーのリスクを高める可能性があります。最新の研究では、生後少なくとも3日間は牛乳を避け、母乳かアミノ酸ベースの特殊ミルクを与えることで、牛乳アレルギーだけでなく、卵や小麦などの食物アレルギーの発症リスクを下げられることがわかりました。

この研究は、アレルギーのリスクがある新生児312人を対象に行われました。生後すぐに牛乳を与えられた群と、3日間は牛乳を避けた群で比較したところ、2歳時点での牛乳アレルギーの発症率は、牛乳回避群で0.7%、牛乳摂取群で6.6%と大きな差が見られました。また、即時型の食物アレルギー全体でも、牛乳回避群の方が発症率が低いことが確認されています。

この結果から、研究者らは生後すぐの牛乳摂取が腸内環境に影響を与え、食物アレルギーを引き起こしやすくなる可能性を指摘しています。出生直後の腸内細菌叢はまだ未発達で、大量の牛乳タンパク質に曝露されることで、腸の透過性が高まり、アレルゲンの吸収を促進してしまうのではないかと考えられています。

【アトピー性皮膚炎などのある赤ちゃんは要注意】

今回の研究対象となったのは、両親や兄弟にアレルギー疾患のある赤ちゃんでした。特に、アトピー性皮膚炎のある赤ちゃんは、食物アレルギーを発症しやすいことが知られています。アトピー性皮膚炎の発症には遺伝的な要因が大きいですが、牛乳などのアレルゲンへの早期曝露も関与している可能性があります。

また、生後6か月までの母乳育児は、アトピー性皮膚炎の予防にも有効だと考えられています。母乳には免疫力を高める成分が豊富に含まれており、腸内環境を整えることで、アレルギー疾患のリスクを下げる効果が期待できるからです。

【ビタミンDの適正値にも注目】

興味深いことに、今回の研究では血中ビタミンD濃度が食物アレルギーの発症と関連していることもわかりました。ビタミンD濃度が低すぎても高すぎても、牛乳回避の効果は見られず、中程度の濃度の場合にのみ、アレルギー予防効果が認められたのです。

ビタミンDは免疫機能の調節に重要な役割を果たしていますが、その作用はU字型の曲線を描くことが知られています。つまり、適正範囲から外れると、アレルギーのリスクが高まる可能性があるのです。妊娠中や授乳中の母親は、ビタミンDの適正な摂取量に気をつける必要がありそうです。

生後すぐの牛乳は控えめにし、母乳かアミノ酸ベースのミルクを与えることで、食物アレルギーのリスクを下げられる可能性が示唆されました。特にアレルギー家系の赤ちゃんは要注意です。

参考文献:

Urashima M, Mezawa H, Okuyama M, et al. Primary Prevention of Cow's Milk Sensitization and Food Allergy by Avoiding Supplementation With Cow's Milk Formula at Birth: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr. 2019;173(12):1137–1145. doi:10.1001/jamapediatrics.2019.3544

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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