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「ひとり温泉」を大満喫する【5つのモットー】 気軽さ、身軽さ、静けさ……

山崎まゆみ観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)
ひとり温泉しやすい静岡県湯ヶ島温泉「白壁」(写真撮影筆者)

ひとり温泉を満喫するには、5つのモットーがある。

・気ままさ――スケジュールは組まない

①宿泊先だけは決めておくが、がちがちにスケジュールを組まない。

②気持ちがおもむくままに旅をする。

③情報収集は現地で。

この3点は鉄則だ。

もし近場を選べば、半日休暇で行ける気軽さもある。首都圏在住なら、箱根や熱海温泉、湯河原温泉を選べば、チェックアウト後に出勤も可能となる。宿によっては金曜の夜に宿に入り、2泊するプランもあるため、こまめにチェックだ。

・身軽さ――荷物も軽く

旅をしやすくするために、持ち物は軽く。手ぬぐいや着替え程度は当たり前だが、道中に彩りを付ける道具は必要だ。

おすすめは広げられる大きな地図と文庫2冊。

グーグルマップも使うが、広域な紙の地図を見る方がその土地を理解しやすい。それに温泉宿では電子書籍より、紙の本が情緒という点でマッチする。

・静けさ――時期を選ぶ

旅先の繁忙期は避け、静かなシーズンオフを狙う。

 ハイシーズンが混みあうことは言わずもがなだが、ひとり温泉で最も避けたいのが団体旅行。温泉街をそぞろ歩きするにも、共同湯巡りも、やはりのんびりできるオフシーズンがいい。

もちろん土日祝祭日前日よりも例えば金曜泊、あるいは日曜泊など、できる限り静かに過ごせる時期を選びたい。

・しっぽりとしたあたたかさ――宿の規模を選ぶ 

気ままなひとり旅ではあるが、事前に宿だけは決めておく。

もしひとり温泉に慣れておらず、特に初心者の場合は、客室数の少ない宿に泊まる。100室規模の大型旅館ではなく、20室程の小規模宿を選ぶ。大型旅館はどうしても人で賑やかだし、家族連れのお客も多く、ひとり客はやや疎外感を感じてしまうから。それに館内の移動距離もある。

 例えば、「日本秘湯を守る会」という宿泊施設グループがある。

宿は簡素で素朴。小規模で土地の家庭の味風な料理を出してくれる。ただお湯は本物。基本的に自家源泉を有し、泉質の異なる源泉を数本持つ宿もある。そもそも温泉好きはひとりで旅して湯を味わう傾向にあるようで、このグループの宿はそのようなひとり客を受け入れてきた経験もあり、以前からひとり旅プランも充実していた。

・おいしいさーーごはん情報は移動中にWebリサーチくらい

1泊2日の旅なら食事は4回~5回。旅館に宿泊する場合は夕食と朝食の2回分は決められているから、残り2回か3回。どこで食べるかは慎重になる。

お昼ご飯の候補の店、宿で食事を摂らない場合の夕食の店などは、移動中にWebで数件をリストアップした上で、現地に入り、店を決めていく。情報収集するのは、宿の人、お土産物屋さん、共同湯で出会った人。旅先で出会う人に尋ねると、その土地の素顔が見えてくる。鼻をきかせるのが重要だ。

宿で夕食をつけず、地元のス―パーに寄り、土地の食を購入し、部屋でしっぽりひとり酒も、実に愉快である。

※この記事は2024年9月6日に発売された『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)から抜粋し転載しています。

観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)

新潟県長岡市生まれ。世界33か国の温泉を訪ね、日本の温泉文化の魅力を国内外に伝えている。NHKラジオ深夜便(毎月第4水曜)に出演中。国や地方自治体の観光政策会議に多数参画。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)としてインバウンドを推進。「高齢者や身体の不自由な人にこそ温泉」を提唱しバリアフリー温泉を積極的に取材・紹介。『行ってみようよ!親孝行温泉』(昭文社)『女将は見た 温泉旅館の表と裏』(文春文庫)『宿帳が語る昭和100年 温泉で素顔を見せたあの人』(潮出版社)温泉にまつわる「食」エッセイ『温泉ごはん 旅はおいしい!』の続刊『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)が2024年9月に発売

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