“3密”は回避不可能? 不測の事態を迎えているからこそ真剣に考えるべき取材体制のあり方
【“3密”を避けられない取材現場】
冒頭からスポーツ界の話題から逸れてしまうが、今や国内で“3密”という言葉を知らない人はいないだろう。安倍晋三首相や小池百合子東京都知事などが、新型コロナウイルスの感染防止策として繰り返し説明しているからだ。
念のため3密を説明しておくと…
・換気の悪い“密”閉空間
・多数が集まる“密”集場所
・間近で会話や発声をする“密”接場面
これら3密を避けることで、感染予防に繋がると力説している。
だが安倍首相にしろ、小池知事にしろ、彼らが説明した記者会見の場が、この3密を避けられていなかったのは画面越しでも明らかだった。
3月31日に緊急会見を開いた小池都知事に至っては、囲み会見方式をとり、大勢のメディアに囲まれながらマスク無しで応対していた姿を見て、呆れるばかりだった。まるで説得力のない行動でしかない。
これは政治の場に限ったことではなく、スポーツ界でも同様だ。現場取材は基本的に記者会見か囲み取材で行われている。どう考えても3密を避けることなどできない。
【取材体制が変化しつつあるスポーツ界】
そんな状況下で、スポーツ界では少しずつだが、取材体制に変化が起こり始めている。
まず3月27日に残りシーズンの中止を発表したBリーグの大河正明チェアマンは、YouTubeを使いオンライン会見を実施し、メディアに直接接触することなく質疑応答に応じている。
また最近になって日本ハムと同様にメディアの取材自粛要請を行ったDeNAは、Web会議用ソフト「zoom」を利用してオンラインによる囲み取材に応じている。
さらにB2リーグの西宮ストークスも3月31日に実施した記者会見を、不要不急の移動を避けたいメディア向けに、やはりzoomを利用しオンラインで公開している。
いうまでもなくこうした試みは、取材現場から3密の機会を防ぐことができるわけだ。
【5Gの普及でさらに利便性が高まる】
だがオンライン対応で困るメディアも出てくるのも確かだ。TV局や新聞社のカメラマンは、練習風景や会見の様子を撮影することができなくなるからだ。
だが各携帯キャリアの5Gサービス提供が徐々に始まりだし、通信速度が格段に速くなる5Gをフル活用すれば、配信動画ですらTVで利用できるような高画質になる。もちろん配信動画から画像も取り込むこともできるだろう。
練習風景にしてもチームに動画や画像の撮影を任せ、5Gで配信してもらえば、メディアが求める即応性についても十分にカバーできるはずだ。
【オンライン対応は双方にとってメリット】
オンライン対応は単に3密の機会を避けるだけでなく、広義的にもチーム、メディア双方にメリットがあるのではないか。
記者会見を実施する場合、チーム側はある程度の人数を収容できる会見場を用意しなければならないが、オンライン対応ならチームオフィスや球場施設内で手軽に実施できる。それだけタイムリーに記者会見を実施することもできる。
一方でメディアもわざわざ現場に行く必要がないので、スタッフを派遣する費用を軽減できるし、またオンライン対応なら全国各地の記者会見や囲み取材に参加できる。より手軽に取材ができ、情報を集めることができるのだ。
まだ記者会という組織が力を持ち、取材現場が旧態依然としている中で、取材体制を変えていくのは簡単なことではないのは理解している。だが国内が不測の事態を迎えている今、メディアも率先して3密を避ける取材体制に協力していくべきではないだろうか。