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日本を貶める麻生氏暴言、海外メディアも報道―温暖化対策の国際会議直前、最悪のタイミング

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
麻生氏(左)の暴言で岸田首相(中央)も陳謝した(写真:アフロ)

 「温暖化のおかげで北海道の米は美味くなった」との、自民党の麻生太郎副総裁の暴言が、海外メディアでも報じられている。今月末から英国グラスゴー市で、温暖化対策を協議する国際会議COP26が開催されるというタイミングで、温暖化を容認するかのような発言を日本から発信してしまったかたちだ。

○米英メディアや国際通信社が報じる

 麻生氏は今月25日に北海道で行った衆院選の街頭演説で「地球温暖化でいいこともある」「北海道の米が美味しくなったのは気温が上がったから」等と発言、北海道の農業関係者らから反発を買った。北海道の米の品質が上がったのは、生産者らによる品種改良の賜物であり、温暖化による高温は、むしろ全国の米作りでの品質・収量の低下を招いている。

 麻生氏の暴言は、海外メディアも見過ごさなかった。米誌「ニューズウィーク」は、「日本の元首相」として麻生氏の発言を紹介。また、「麻生氏が物議を醸す発言をすることはこれが初めてではない」として、「ヒトラーの動機は正しかった」*1「(社会保障費増は)年寄りが悪いのではなく、子どもを産まない方が悪い」*2などの麻生氏の過去の暴言も列挙した。

*1 https://www.nikkei.com/article/DGXLZO20532030Z20C17A8PP8000/

*2 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/484241/

 イギリスで最も歴史ある日刊紙「タイムズ」も、岸田文雄首相が麻生氏の暴言について出演したBS番組の中で陳謝した顛末まで報じた。イギリスでは今月31日から来月12日まで、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催される。同国のジョンソン首相も、膨大なCO2を排出する石炭火力発電の廃止を国際社会に呼びかけ、今月13日の岸田首相との電話会談でもCOP26で日本が石炭火力発電の廃止を約束することを求めていた。

 世界的な通信社「ブルームバーグ」も、COP26が岸田首相の外交の初舞台となる中で、麻生氏の暴言が物議を醸していることを報じている。

○日本を貶める麻生氏暴言

 温暖化は近い将来に人類の存亡すらも左右し得る危機であり、近年、海外メディアでは「温暖化(Global warming)」や「気候変動(Climate change)」に替わり、「気候危機(Climate crisis)」という言葉が使われ始めている。そのような危機感の高まりの中、科学的な事実として国際的なコンセンサスとしての温暖化を、それが起きてないと主張することや、容認することは、悪質なフェイクと見なされるようになってきているのだ。Googleとその傘下のYouTubeは、「温暖化を『デマ』『詐欺』とする主張」「温暖化ガス排出や人間の活動が気候を変動させたという事実を否定する主張」を持つコンテンツが収益を得ることを防ぐため広告を表示させないようにするとの新たな措置を今年11月から導入する。これは、温暖化への懐疑論や容認論に対し、「広告主やクリエイターからの懸念」(Google)があるからだ。

 岸田政権の副総理でもある麻生氏の暴言は、そのまま日本という国のレピュテーションリスク(信頼低下による損害リスク)にも発展しかねない。温暖化をめぐっては、麻生氏だけでなく、岸田首相も、その認識が危ぶまれるような言動を幾度もしている(関連記事)。これまでのような温暖化に対する言動を繰り返すならば、今後、日本の国際的な地位を貶めるだろうことを、肝に銘じるべきなのだ。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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