自民党総裁選で、新たな自民党総裁に選出され、先日第100代の首相に就任した岸田文雄氏。だが、自民党総裁選での討論会での言動が、地球温暖化(=気候変動/気候危機)への対策を求める若者達や環境NGO関係者らから不安視される場面があった。脱炭素社会の実現に向けた世界的な潮流の中で、岸田氏の認識がまるでついていけていないのでは、と疑われているのだ。

○気候変動対策にはLED電球とお風呂???

 問題の発言は、先月24日の総裁選討論会で、オンラインから高校生の質問に対する岸田氏の回答だ。この高校生は「このままでは、(総裁選)候補者の皆さんの子孫も気候変動によって殺されるかもしれない」と将来へ強い危機感を抱いていることを訴え、「皆さんの気候変動についての対策をお聞かせ下さい」と問いかけた。これに対し、岸田氏は「国もエネルギーに関する政策をいろいろ考えていく」としたものの、具体策は何も触れず、「国民の皆さん一人ひとりの行動によって、この問題ずいぶん変化があります」と述べた。その行動として、岸田氏があげたのが、「電球であってもLED電球なら電力使用量は4分の1」「シャワーとお風呂、比べてみると格段、お風呂の方がお湯の使用量は少ない」というものだった。

○「唖然」「ヤバイ」「マジで無い」呆れる若者達

 日本の温室効果ガス排出の8割以上がエネルギー由来であり、電力消費を抑えることは、現状、日本の電力構成の約7割が火力発電である中で、気候危機対策としては必要なことだろう。そのような意味で、電力消費の少ないLED電球や節水により水の供給に費やされる電力を軽減することは、間違いではない。ただし、世界平均気温の上昇を1.5度に抑え込み、気候危機の破局的な影響を防ぐためには、2030年までに世界全体の温室効果ガス排出を半減させなくてはならず、菅政権も「2030年までに46%削減し、さらなる高みを目指す」との目標を発表している。つまり、LED電球やお風呂がどうこうというレベルの話ではなく、石炭や石油、天然ガス等の化石燃料に依存した経済を、太陽光や風力等の再生可能エネルギー中心のものに変革する必要があるのだ。とりわけ、石炭火力発電は他の火力に比べてもCO2排出が多く、その廃止を国連のグテーレス事務総長も日本を含めた各国に強く求めている。岸田氏の発言を受け、ツイッター上では主に若者達から、

「唖然としてしまった」

「気候変動対策を聞かれて、LEDの話をする首相候補は割とヤバイと思うの」

「岸田さんマジで無いわ。気候変動に対する危機感とか全く分かってない」

 等の指摘が相次いだ。

○小手先ではなく、抜本的な社会変革を

 そもそも、電気の使い方や節水など個人の取り組みで排出を減らそうという発想自体*が、2005年から2010年1月まで続いた、政府のキャンペーン「チームマイナス6%」と変わらない。異常気象が日本を含めた世界各地で猛威を振るい、気候危機が遠い将来のことではなく、今、正に私達に襲いかかっている中で、10年以上も前の話をするなど、それこそ危機感がなさすぎである。環境NGO「気候ネットワーク」の理事で、「環境分野のノーベル賞」とも言われるゴールドマン賞の今年度受賞者でもある平田仁子さんは、来月にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)を控える中、岸田氏は、経済政策の根底からの組替やエネルギー転換が必要と理解すべきだと指摘したが、全くその通りであろう。

 先月28日、COP26に向けイタリアで行なわれた国際会議「ユース・フォー・クライメート」で、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは、世界の政治家達の気候危機に対する姿勢を批判。「『よりよく再建する』だの、『グリーン経済』だの、『2050年までに排出ゼロ』だの、なんとかかんとか…」として、口先だけではなく具体的な行動が今必要だと訴えた。

 岸田氏も気候危機についての周回遅れの認識を改め、石炭火力発電の停止や再生可能エネルギー普及などの対策を、個人や企業の自主的な取り組みに任せるのではなく、政府主導で行うべきだろう。

(了)

※あえて個人でできることを行うとすれば、例えば、家庭やオフィスで使用する電気を再生可能エネルギー中心に供給している電力会社に切り替えることは重要だ。