NFTが救世主? パリの歴史的建造物修復にブロックチェーンが一役
フランスの歴史上の偉人たちが眠るパンテオン。その向かいにあるパリ5区の区役所で写真展が開かれています。タイトルは「Un Accord avec le Monde(世界との調和)」。区役所2階、見事な大広間のフロアに、縦横それぞれ120センチの作品が10点飾られているほか、大型の液晶画面に16作品が映し出されています。
撮影したのは、フランスの写真家クレール・アデルファンさん。2010年、パリ国立美術学校(ボザール)を卒業し、2018年にはヴェルサイユ宮殿の「プティ・トリアノン」を舞台に「王妃の村里」のシリーズを発表するなど、歴史的建造物の写真を得意としています。
彼女の作品は、ヴェルサイユ宮殿、パリの「ヨーロッパ写真美術館」をはじめ、国内外の文化施設やコレクターが高く評価していて、ヴェルサイユ宮殿やパリオペラ座とのコラボレーションも現在進行中です。
今回の展覧会の被写体は、サンテティエンヌ・デュ・モン教会(Eglise Saint-Etienne-du Mont)というパリで最も歴史の古い教会の一つ。パンテオンを挟んで区役所の対角に位置している現在の建物は、15世紀終わりから17世紀に建てられたもので、クレールさんはこの教会の光と影が織りなす荘厳な光景を見事に写しとっています。
特筆すべきは展覧会のコンセプト。展示作品は競売にかけられ、その収益金は教会のステンドグラスの修復に充てられます。しかも、デジタル画像16点の方はNFTと紐づいていて、購入者は作品を所有できるだけでなく、今後1年間、メセナプロジェクト参加者としての特権を享受できます。
歴史的建造物の修復とNFTアートの融合というこの画期的なプロジェクトで中心的な役割を担っているのは、新時代のアートギャラリーである「DANAE.IO」です。DANAE.IOは、現代アート、デジタルアート、NFTの分野で先駆的な活動を展開しており、以前ご紹介したトピック(パリの新しい風景。名和晃平の新作に込められた未来へのメッセージ)のプロジェクトにも深く関わっています。
DANAE.IOと写真家クレール・アデルファンさんに加えて、このプロジェクトに名を連ねているのは、「La Sauvegarde de l’Art Français(フランス芸術保護)」というメセナ組織。1921年に創設されたもので、毎年100万〜200万ユーロを教会の修復などに割り当てており、フランスの文化遺産の保護に重要な役割を果たしています。
展覧会のオープニングはパリ市の助役、そしてパリ5区の区長の挨拶から始まったことが象徴するように、市や区にとっても大いに意義のあるこのプロジェクト。区役所での一般公開は9月14日から10月3日に行われていますが、9月28日にはプリント作品10点がPierre Bergé&Associésによって、また9月13日から24日までCatawiki上でNFT作品16点の競売がそれぞれ行われます。
パリに足を運ぶ機会があれば、見事な内装の区役所で無料で展示をお楽しみいただけますが、(パリは遠し…)という方も、各サイトから作品を鑑賞してみてはいかがでしょう。もちろん、競売を通して、歴史遺産保護を支援することも可能です。