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【K-POP論】“プロ版サバイバル番組”新潮流なるか? 優勝のTHE BOYZ「出演全チームが成長」

18日の「Road to Kingdom」優勝のThe Boyz。公式SNSより

2020年も下半期に入ろうとしている。今年の「K-POPの傾向」も徐々に出てくる頃だ。少しばかりの振り返り、そして日本でも採り入れられそうなアイデアの紹介を。

まず昨年末から年始にかけ、「トロットブーム」が起きた。「TV朝鮮」が放映する「明日はMr.トロット」という番組が大ヒット。同番組は2月6日の第6回放送は視聴率27.5%を記録した。プロ・アマ問わず、男性が出演するオーディション番組。「おじさんたちの挑戦」が大共感を読んだ。

また番組内では「ユ・サンスル」なるキャラクターが歌う「愛の再開発」というヒット曲が生まれた。正体は国民的MCのユ・ジェソク。冒頭から「私を変えて下さい」と歌う歌詞が大ウケだった。「オーディション番組」+「復古」という近年のトレンドに、「おじさんの挑戦」の新しい要素を加えたものだった。またトロットに元々ロングセラー作品が多いという点もうまく作用した。

番組公式サイト

1月末からは当然のごとく、新型コロナの影響がK-POPに降り掛かった。各アーティストが活動形態の変更を余儀なくされるなか、IZ*ONE(アイズワン)が6月10日に行ったミニコンサートの形態は大いに日本でも注目すべきところだ。車を多く収容できるスペースにステージを設営。ファンは車の中からグループを応援する形式で進行したのだ。現地メディアの報道によるとこの形式は韓国のほか、ドイツでも盛んに行われているという。

下半期注目は昨年も大評判の「プロのサバイバル番組」

今月18日には、下半期に特に注目したいコンテンツの「予選」の結果発表があった。

「Road to Kingdom」で2017年に結成された11人組「The Boys」が優勝したのだ。

音楽・バラエティー専門のケーブルTV局「Mnet」が手掛ける番組で、韓国では「カムバック戦争シリーズ」と呼ばれる。

いわば「プロ版のサバイバル番組」だ。

「Road to Kingdom」では、PENTAGON、ONF、Golden Child、THE BOYZ、VERIVERY、ONEUS、TOOの7グループが出演。

週ごとに「他グループの楽曲」「90秒パフォーマンス」「自分たちの楽曲」などテーマが定められ、結果が好ましくないと次のステージに残れない。「カムバック」というのはこの場合、「毎週同じ時間(放映時間)にステージに戻ってくる」「番組で披露された楽曲が、正式に発売される(つまりカムバック)」という意味だ。

昨年秋から女性グループのみが参加する「Queendom」が行われ、今年は男性グループのみの「Kingdom」となる。昨年の事例から「元々のグループの人気度で結果が分かってしまう」という意見が多かったこともあり、今年は予選版の「Road to Kingdom」が行われた。THE BOYZは4月13日から6月18日まで全7回放映分を勝ち抜き、8月からの「決勝ラウンド」への進出を決めた。

現地のスポーツ新聞芸能担当記者が言う。

「THE BOYZは4月の番組スタート時から安定したパフォーマンスを見せていました。ダンス、表現の部分もさることながら、特に音楽の部分での評価が高かったですね。好評が追い風となり、予選ファイナルで披露した”CHECKMATE”という楽曲が12日に発売された直後にチャートの上位に入っています」

グループは8月下旬に始まる「Kingdom」(本選)でより実績のあるチームへの勝負を挑むことになる。

"Checkmate"。番組上で初披露された。

「オーディション=競争」要素の変化

2010年夏、日本にKARA、少女時代が登場したころのK-POPは「完成品」をいかに見せるかという傾向があった。レッスンや選抜は舞台裏でやるもの。表向きにはあまり見せるものではなかった。これは日本の「ファンとともに成長していく過程を楽しむ」という点との違いでもあり、K-POPならではの売りでもあった。

しかし2010年代中盤から、はっきりと日本的要素として(というより日本側とのパートナーシップにより)「オーディション要素」が入ってくる。すると韓国のなかでも変化が現れはじめた。「競争」の要素を切り取り、別のブームとつなぎ合わせる。これが2020年上半期の「トロットブーム」であり、「カムバック戦争シリーズ」だ。後者は「アマチュア(アイドル志望者)がやってきたオーディションをガチのプロがやったらどうなる?」という興味を惹きつけている。

実際にTHE BOYZのメンバーは、共演(競演)したPENTAGONのパフォーマンスについてこう評している。

「あまりにも良くできていて、ちょっと凹みました。なぜかというと、自分たちの次の出番であんなにいいパフォーマンスがあったので。現場で見ていてそのエネルギーがはっきりと“俺たちがPENTAGON”と感じさせてくれました」

こういった「プロの競争」はどんな効果を生むのだろうか。前出のスポーツ新聞記者が言う。

「脱落してしまうと、グループのイメージが傷つくのではないか。出演にはそんなリスクもあります。なかでも昨年の女性グループ版では、キャリアの長いグループも出演したため、この点が囁かれました。しかし、実際にはメリットが多かった。他グループの楽曲を披露したため、そのグループのファンはもちろん、原曲のファンも興味を持ったのです。この効果もあり、昨年出演した(G)I-DLEの番組でのパフォーマンス動画のYouTube再生回数が100万回を超えた、という事例もありました」

日本でも「カバー・アルバムは原曲のファンと、カバーしたアーティストのファン、双方が関心を持ちうる」という現象があるが、これを映像で表現したものが「カムバック戦争シリーズ」とも言える。

番組ロゴ「Kingdomに向かうK-POPアイドルたちの大行程 。我々がいまだかつて知り得なかったK-POPアイドルの勢力図を塗り替える次世代ボーイズグループの残酷な勝負が始まる」
番組ロゴ「Kingdomに向かうK-POPアイドルたちの大行程 。我々がいまだかつて知り得なかったK-POPアイドルの勢力図を塗り替える次世代ボーイズグループの残酷な勝負が始まる」

そして何より、生存競争にこそ番組の楽しみがある。THE BOYZのメンバーは”予選優勝”の後に、他グループへのリスペクトを示している。

「本当に感謝しています。Road to Kingdomを通じ、自分たちのみならず7グループすべてが成長しました。ここにいるすべてのグループがK-POPを率いるアーティストだと思います。7グループのこれからを応援して、愛していただきたいです。The BoysはKingdomへの進出を決め、先輩たちと対戦することになりました。また多くのことを学べると思います。より努力して成長します」

本選となる「Kingdom」は今年8月27日から10月29日に放映予定だ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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