SNS、検索、そして意志疎通ツール…際立つ日本のネット界隈での特異性
携帯使った意志疎通サービス、日本は他国と異なるおもむき
高度な機能を持つフィーチャーフォン(マルチメディアフォン)を自虐的に「ガラパゴス携帯」と呼び、日本の携帯電話事情での特異性を示すことがある。しかしネット界隈における日本の特異性は、携帯電話本体の普及だけに限らないようだ。イギリスの情報通信省が2013年12月に公開した通信白書の最新版「International Communications Market Report 2013」をもとに、その特異性をいくつかの視点で見ていくことにする。
まずは携帯電話(フィーチャーフォン、スマートフォン双方を含む)利用者における主要コミュニケーション系サービスの利用状況。
この結果の調査対象母集団ではインターネットへアクセスできないシンプルな携帯電話も含まれている。それらの携帯電話でもSMSを使える場合は多いので、必然的にSMSの利用者率は高まる。他方、電子メールはその端末がインターネットにアクセスできることが必要不可欠なため、利用率は下がる。
ところが日本ではSMSの利用率が非常に低く、その分電子メールが高い値を示している。これは日本ではSMSがあまり使われず、電子メールでSMS的な使われ方がされているのが主要因。インスタントメッセンジャーの利用率が低いのも、遠因としてはそれがある。
日本の事情を携帯電話の普及という観点で説明すると、普及・進化の流れが海外とは少々異なり、「インターネット接続が出来ない携帯電話」から、「インターネットへの接続が可能な多機能携帯電話(マルチメディアフォン)」への進化の流れがあった。これがSMSの利用率が低く、インターネットを使った電子メールが良く使われる理由でもある。ところが海外では非ネット系携帯電話からスマートフォンに一挙にシフトしたのに対し、日本ではマルチメディアフォンが進化普及の間に挟まったため、スマートフォンの普及が諸外国と比べて遅れてしまうという状況を生み出す形となっている。
日本ではYahoo!が異様に多い
検索エンジンの利用性向も、他国と大きな違いを見せる。これはそれぞれの検索エンジンについてパソコンを用いて自宅、あるいは職場から普段使っているか否かを尋ねたものだが、Googleの圧倒的優位性が確認できる。
主要国ではすべての国において、もっとも使われているのがGoogle。次いでBing、そしてYahoo!という状況。イギリスやアメリカ、特にアメリカではBingやYahoo!も善戦を示している。
他国と状況を異にするのが日本。Googleの最優位性には変わりはないものの他国と比べれば20%ポイント前後低く、さらにYahoo!が55%と大健闘している。これは昔からパソコンの初期設定状態でインストールされていたブラウザにおいて、Yahoo!がホームページとして設定されていたなど、「ネットの検索ならまずYahoo!」というスタイルが浸透していたのが大きな要因(他にも「きめ細やかな案内」を好む日本人の気質が、デレクトリィー検索というYahoo!の機能とマッチしたのも要素としては大きい)。
Facebookが弱くツイッターが強い日本の特殊なSNS事情
最後はソーシャルメディア。国によって利用対象となる大手SNSの種類が異なる場合もあるが、今件では4つの代表的なソーシャルメディア、Facebook、Twitter、LinkedIn、GooglePlusを挙げて、それらを普段パソコンで使っているか否かに関して尋ねている。
日本以外はすべての国でFacebookが最多利用率を示している。Facebook以外のサービス利用状況を見ると、イギリスやスペイン、アメリカはやや多め、ドイツやイタリアは少なめ、さらにオーストラリアとアメリカではLinkedInの利用がやや大きめなのが特徴的。とりわけドイツはFacebookですら5割台にとどまり、他の利用率も1割に届かないなど、消極的な動き。
もっとも特異なのは日本の動向。Facebookは24%と他国の数分の一。LinkedInは1%。それらとは相反する形でTwitterが27%となり、主要国の中では最大の値、しかもFacebook以上に使われているとの結果が出ている。
これは白書でも今項目のタイトルに「日本ではTwitterはFacebook以上にメジャーだ」と書き記すほどの特異性。ツイッターは短文による意思表示が日本人の特性にマッチしたこと、Facebookの日本語周りの対応がやや遅れたのに加え、Facebookの原則実名制が好まれなかったのが、FacebookとTwitterとの力関係の逆転を引き起こした原因と考えられる。また、日本国内独自のmixiの存在も多分に作用している。機能面で見ればFacebookはmixiに近しいところがある。そしてFacebookが日本に本格的に紹介され始めた時、すでにmixiは多くの日本人に受け入れられていた。この影響は小さくない。
携帯電話におけるマルチメディアフォンの存在、インターネット普及時の初期画面上でのヤフーの展開戦略、そして実名制や短文使用など文化とのマッチングによる兼ね合わせなど、デジタルサービス周りで日本が主要国との違いを見せる背景には、それぞれ確固たる理由が存在している。歴史の流れの上での結果、必然と表現してしまえばそれまでだが、興味深い傾向ではある。
一方でインターネット関連のサービスは概してワールドワイドで普及浸透していく。日本の独自性を「他と比べて遅れている」と見るのか「独自性があり長所にもなりうる」と見るのかは、個々の状況、判断次第。切り口次第では個性ととらえて、むしろ長所として活用することも出来よう。
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