3回目の新型コロナワクチン ブースター接種について現時点で分かっていること
ブースター接種の効果や副反応などのデータが徐々に明らかになってきており、日本でも9月17日からブースター接種に関する議論が始まりました。
現時点でブースター接種について分かっていることをまとめました。
新型コロナワクチンの感染予防効果は経時的に低下する
アメリカは2020年12月から新型コロナワクチンの接種を開始しました。
当初、90%以上と高い感染予防効果を保っていましたが、徐々にその効果が落ちてきていることが明らかになってきました。
2021年7月には、多くの研究で感染予防効果が40〜80%まで落ちてきています。
その要因として、ワクチン接種後に中和抗体が徐々に低下していること、そしてデルタ株が拡大していることが挙げられます。
日本国内でも、藤田医科大学がワクチン1回目接種から3ヶ月後の抗体価の平均値が2回目接種後に比べて約4 分の1に減少していることを報告しています。
医療機関で働いていてもワクチン接種者のブレイクスルー感染が増加していることを実感していますが、海外でも明らかにブレイクスルー感染者が増加していることが報告されています。
ワクチンによる重症化予防効果は保たれている
ワクチンの効果は感染予防効果だけではなく、感染したとしても重症化を防ぐ効果もあります。
感染予防効果には中和抗体の減少が大きく関連している一方で、重症化予防効果については中和抗体だけでなく、Tリンパ球などの細胞性免疫の働きが大きく関わっていると考えられています。
そのため、感染予防効果が落ちたとしても、重症化予防効果は大きく落ちてはおらず、高齢者でも88%以上の「入院予防効果(重症化予防効果の目安の一つ)」が保たれています。
以上のことから、感染や発症を予防する効果は時間経過やデルタ株の影響で大きく落ちてきている一方で、入院や重症になることを防ぐ重症化予防効果は保たれていることが分かってきています。
つまり、ブースター接種をするべきかどうかという議論は、大きく落ちてきている感染予防効果を再び高めることを目的としています。
では、実際にブースター接種で感染予防効果は再び高まるのでしょうか?
ブースター接種によって感染予防効果は再上昇する
3回目のワクチン接種後の中和抗体が再上昇するかどうかについてファイザー社から報告が出ています。
この報告によると、3回目のワクチン接種から1ヶ月後の中和抗体価は、2回接種から1ヶ月後時点よりもさらに高くなるようです。
さらに、イスラエルからブースター接種についての実際の効果について発表されました。
60歳以上の高齢者に対してブースター接種した場合、接種していない人と比較して11.3倍感染を予防し、また19.5倍重症化を防いだ、とのことです。
感染予防効果が高くなることは想定されていましたが、重症化予防効果も大きく上昇しており予想以上の結果と言えます。
少なくとも重症化リスクの高い高齢者にはブースター接種は意義があると言えそうです。
副反応の頻度は2回目と大きく違いはない
やはり心配なのは副反応です。
新型コロナワクチンでは1回目よりも2回目の方が副反応が起こる頻度が高くなります。
2回目よりも3回目の方がさらに頻度が高くなるのではないかと想像されますが、実際の3回目の副反応の報告がファイザー社から発表されています。
これによると、若い世代で発熱の頻度はやや高くなっていますが、倦怠感や頭痛については3回目の方が低くなっており、全体的に2回目と大きな違いはなさそうです。
この点はやや安心できる情報と言えます。
ブースター接種に関して、これから議論されることは?
これまでにブースター接種について分かっているエビデンスをご紹介しました。
今後、日本国内で議論されるべき点は、
・日本でもブースター接種をするのか(おそらくするでしょう)
・誰を接種の対象とするのか(高齢者、基礎疾患のある人など)
・いつから開始するのか(海外では2回目から7〜8ヶ月後以降)
・ワクチン未接種者とどちらを優先するのか(普通に考えると未接種者だと思いますが)
などです。
これからさらに出てくるであろう海外からのエビデンスにも目を向けながら、国内での議論について注視したいと思います。
参考資料)