銀行よりもテック業界好む ―英ミレニアル世代の仕事観
英国で就職を希望する学生にとって、金融業界は高額報酬を提供する人気業界の1つ。長時間労働や結果を出すことへのプレッシャーは報酬との引き換えだった。しかし、学生たちの嗜好は変わりつつある。
1980年代から1990年代後半に生まれた「ミレニアル世代」は、現在18歳から33歳。複数の調査によると、この世代は長時間労働を嫌い、仕事から得られる充足感や仕事と生活のバランスを収入の高さよりも重視する。起業家精神も強い。
ロンドン・ビジネス・スクールの調査によると、2007年、同校で経営学修士を取得した学生の46%が金融サービス業に就職した。2013年ではこれが28%に減少。逆に大きく増えたのがテック業界での就職率だ。07年では6%だったが13年では20%に上昇した。
勤務時間の長期化を防止するため、投資銀行ゴールドマンサックスは金曜の午後9時から日曜の午前9時までを業務に関与しない時間と規定し、他行も同様の試みを行っているが、実際の運用が難しい。
2008年の米リーマン・ブラザースの崩壊とそれに続く世界的な金融危機以降、若者たちの銀行への見方も変わった。会計会社デロイットによれば、就職を希望する銀行に高い倫理基準があるかどうかを見る学生が多いという。
1987年公開の米映画「ウオール街」は「強欲は善だ」という名文句を生み出し、当時の過剰消費ブームを体現したが、ミレニアル世代の映画は「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)。カジュアルな格好の若者がフェイスブックを創業し、短期間で成功を果たす。「お金だけがすべてではない」というメッセージが共有されているとしたら、ミレニアル世代は旧世代よりも賢いのかもしれない。
(週刊「エコノミスト」ワールド・ウオッチコラムの筆者担当分に加筆しました。)