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村田諒太がゴロフキンに勝つ可能性は? デラホーヤ氏ら専門家が語った予想

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
最新戦でバトラーを追い込む村田(写真:アフロスポーツ)

2-1判定でゴロフキンの勝ち?

 4月9日、さいたまスーパーアリーナでゴングが鳴るWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(帝拳)vsIBF世界王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の統一戦まで10日を切った。ゴロフキンが来日間近の状況の中、前回に続き海外専門家の予想2回目をお届けする。

 まずスポーツ専門局ESPNのボクシング中継で実況およびレポーターを務めるバーナード・オスナ氏。英語とスペイン語のバイリンガルの同氏は率直な意見を聞かせてくれた。

――どんなタイプの試合を予想されますか?

オスナ氏「リョウタ・ムラタは日本でリングに上がる時と日本以外の試合では異なったボクサーに思える。私はロブ・ブラント第1戦を担当したけど、彼は私が期待した選手ではなく、敗れてしまった。しかしムラタは日本のリングに立つと手数をたくさん繰り出すマシーンに変身する。(ムラタは)まだフレッシュな選手でゲンナジー・ゴロフキンに多くのトラブルをもたらすことが可能だ。なぜならゴロフキンは年齢を重ね、プラス、かなりの期間リングを離れている。ブランクを克服し、手数が出るストロングな相手と対峙しなければならないことはゴロフキンにとって重要な挑戦となるだろう」

――村田も約2年半のブランクがあり、影響しませんか?

オスナ氏「ブランクはどの選手にも影響する。でもムラタはホームで戦うアドバンテージがある。彼は私が見た限り、アウェーに比べてホームでよりアクティブに力を発揮する。ブランクは2人に影響を及ぼす。経験ではゴロフキンに分があるけど、ムラタはカザフスタン人にトラブルを植えつける長所を兼ね備えている」

――ムラタに勝つチャンスはどのくらいあるでしょうか?

オスナ氏「可能性は大いにあると思う。彼は陶器を作り出すようなスキルを持っているし手数で畳みかけ、ゴロフキンの顔に困惑の表情を浮かべさせることができる。ただし、よりハングリーなのはゴロフキンではないか。カネロ・アルバレスとの第3戦へ向け交渉が動き出しているからだ。だから(村田に勝つことに)かつてないほど集中している」

――予想を聞かせてください。

オスナ氏「私はゴロフキンが勝つと思う。でも簡単には運ばないだろう。ムラタは試合中ずっとアタックを仕掛け、ゴロフキンを苦しめるはずだ。私の予想はスプリットデシジョン(2-1判定)でゴロフキンの勝ち」

望み薄だがパーフェクトなチャンス

 続いてユーチューブ・チャンネル「Fight Hub TV」を主宰するジャーナリスト、マルコス・ビジェガス氏。PBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)の試合を中継するFОXテレビではスコアラーを務めている。

――どんな試合展開を予想しますか?

ビジェガス氏「私は拮抗した打撃戦を予想している。ゴロフキンは序盤、偵察戦で相手の力量を推しはかると一気にアタックを仕掛ける傾向がある。前進するゴロフキンに対しムラタが後退すると、どんどん押し込まれてしまう。ゴロフキンの圧力を食い止めるためにムラタは手を出さなければならない。金メダリストのムラタはアウトボクシングもできるが、しっかり足を据えてポジションを取り、ゴロフキンを後退させないと勝ち目はない。

 明らかにゴロフキン有利の試合だ。ミドル級チャンピオンとして最長期間王座に君臨する一人だし、破壊的なパンチャーだからね。それでも年月を重ねて衰えは隠せない。ムラタはいいタイミングで対戦できると思う」

ゴロフキンの圧力は脅威だ(写真:Matchroom Boxing)
ゴロフキンの圧力は脅威だ(写真:Matchroom Boxing)

――村田のチャンスはどれくらいあるでしょう?

ビジェガス氏「明らかにわずか、見込みは薄いと言わざるを得ない。ゴロフキンの能力はムラタを勝っていると私は思う。ムラタはボクサーとして限界が感じられるからだ。ただし誰もトシには逆らえない。繰り返すけど、(ゴロフキンを)捕まえるにはパーフェクトなチャンスだろう」

――予想を聞かせてください。

ビジェガス氏「ゴロフキンがムラタをストップすると思う。(どのあたりのラウンドかの問いに)うーん、おそらく9、10、11ラウンドのどこかだろう。同時に12ラウンズの勝負も想定できる。日本での試合だ。大観衆の応援がムラタのモチベーションを駆り立てる。彼をプッシュする情景が思い浮かぶ。

 ただし、ムラタは序盤のラウンド、エネルギーを発散してダメージを与える作戦かもしれないけど、ゴロフキンの逆襲、カウンターには十分に注意を傾ける必要がある」

村田を買うデラホーヤ氏

 そして今回最後は“ゴールデンボーイ”オスカー・デラホーヤ氏(ゴールデンボーイ・プロモーションズ会長)。村田vsゴロフキンの同日、テキサス州で復帰戦に臨むライト級の人気選手ライアン・ガルシアの公開練習に帯同した同氏に聞いてみた。

ライアン・ガルシア(左)のプロモーター、オスカー・デラホーヤ氏(写真:筆者)
ライアン・ガルシア(左)のプロモーター、オスカー・デラホーヤ氏(写真:筆者)

――どんな試合を期待していますか?

デラホーヤ氏「ゴロフキンvsムラタ……。とても興味深いね。ムラタは好きなボクサーの一人。フレッシュで、とてもハングリーでストロング。ゴロフキンは無類の強打者。待ち切れない試合だね」

――村田が勝つチャンスはあるでしょうか?

デラホーヤ氏「イエス、イエス。ムラタはアマチュア時代から体得した経験があるし、とてもハートが強い。優秀なトレーナーにも恵まれている。だからムラタはチャンスがある。でも対ゴロフキンとなると、本当に困難だろう。それでも、それぞれの選手には同等にチャンスがある」

――予想をお願いします。

デラホーヤ氏「ゴロフキンが判定で勝つと思う。そう、フルラウンドの戦い。でもムラタは本当にいいボクサーだよ」

 日本の専門家が指摘し、村田自身も明かすように圧力の掛け合いを制した方が優位に展開するのは間違いない。そこに強打者同士のスリルが加わる。片時も目を離せない攻防。クライマックスはどこに待っているのか。日本のリング史のみならず、世界中のファンの耳目を集める決戦はもうすぐだ。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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