役割よりも好きな服ー昭恵夫人のドレスが非難された理由
TPOには反していない
「即位礼正殿の儀」の際の昭恵夫人の装いが物議を醸している。膨らんだ袖が印象的なミニ丈の白いドレスは、着物やロングドレスの夫人たちの間で際だっていたため、「ミニすぎる」「ドレスコードに反しているのでは?」「TPOを考えてないのか」などの批判的な声がツイッターに飛び交った。
結論から言うと、このワンピースはデイドレスであるため、ドレスコードやTPOに反しているわけではないらしい。デザイナー自身も「TPOを考えてつくった」と反論している。
ただ、このドレスは今回の式典参列のためにオーダーされたのではなく、8月のアフリカ開発会議の直前につくられたものだという。また、ミニ丈ではないということだが、万歳三唱をしてしまうと、膝小僧が丸見えになる。デザイナーとしては、両手を上げて万歳三唱をすることは想定していなかったのかもしれない。
昭恵夫人の勝負服
いずれにせよ、昭恵夫人はこのドレスをかなり気に入っているということだ。でなければ、わざわざ晴れの日の装いに選ばないだろう。「奇抜」などと書かれてしまったが、大きく膨らんだ袖はヴァレンティノなどにもよく見られるデザインで、エレガントと言えなくもない。白、膨らんだ袖、脚がキレイに見えるワンピース。ヴァンサンカン風に言うならば「エレ女の勝負服」である。昭恵夫人にとっても勝負服のつもりだったのではないか。
もともと昭恵夫人は、長い丈のスカートをあまり好まないようだ。トランプ夫妻が来日した際に着ていたのも、短めのワンピースやスカートだった。すらっとした脚を見せるスタイルがよく似合っている。
メラニア夫人が自らのボディを際立たせるボディ・コンシャスな服を好んで着るように、昭恵夫人も比較的ミニ丈のスカートを好んで着るのだ。スタイリストがついているにせよ、自分自身のことがある程度わかっていないとできない着こなしだろう。
ファーストレディという役割を着る
しかし、ファーストレディという立場を考えたときに、自分の好みを優先する、個性を際立たせるというおしゃれのスタイルは通用しないことが多い。
特に、日本のファーストレディに求められるのは、おしゃれさなどよりも、「上品さ」「良妻賢母」感である。ファーストレディであることを十二分にも意識し、その装いは、服というよりもファーストレディという役割を演じる衣裳であると自覚すべきであろう。ファーストレディという役割を着なければならないからだ。
そういう意味で、着物やロングドレスで列席した他の夫人たちは、役割を見事に着こなしていた。昭恵夫人こそ、最も役割を着ることを求められる立場だったのに、いつものように自分の好みを優先してしまった。だから、これほどの批判がおきてしまったのだ。
好きな服よりも、好かれる服。とりわけ日本人は周囲の人々の好感度が高い装いを求める傾向にある。「妻、母、嫁、女。役者な私の最強着回し服」(『VERY』2008年1月号)といったファッション誌を日頃から読んでおけば、こういうことにはならなかったのかもしれないが、自由奔放な昭恵夫人はそもそも赤文字系雑誌がお好みではないのかもしれない。