MLBでついに薬物違反での永久追放!どうしても違反者がなくならないのは心理的中毒症状のせいか?
メッツのヘンリー・メヒア投手が薬物規定違反で永久追放となった。2006年にMLBは薬物検査と3度目の違反で永久追放となる罰則規定を導入したが、それが適用されたのは初のケースとなる。かつては、プロスペクトとして将来を嘱望された26歳の永久追放はショッキングだ。
MLBの現在の規定では、初めての違反で80試合の出場停止、2度目で162試合(1シーズンだ)、そして3度目で永久追放という「ストライク・スリー」ルールとなっている。メヒアの場合は、昨年開幕直後の4月11日に初犯、処分が明けた7月に復帰したがわずか2週間後に2度目の陽性反応、そして1年間の停止処分中の今回に3度目という、救いようのない結末となった。現地の報道をチェックする限り、彼は検査結果を不服として提訴する意思はないようだ。一巻の終わりである。
しかし、ここでひとつ大きな疑問が残る。どうして、3度も過ちを繰り返してしまったのか?一度クロとなったら、それ以降は使用を控えるものではないのか?ということだ。
ヤンキースのアレックス・ロドリゲスなどは、薬物規定違反で1年間の出場停止処分後の昨季、40歳にして5年ぶりの30本塁打以上(33本)を記録し、ファンを驚かせた。「クスリなしでもやれるじゃないか」ということだ。「クスリなし」というのはその後の検査で陽性反応を示していないということではあるが、100%の潔白が医学的に証明された訳ではない。でも、われわれファンは昨季の彼をシロだと見ている。それは、「いくらなんでも捕まった後も薬物を使い続けるはずがない」という「思い込み」からだ。
実際にAロッドがどうかを論じる気はないが、今回のメヒアは「それでも止められなかった」訳で、こういうケースがあり得ることの証明となった。
近年、MLBは投手力上位の状況が続いているが、多くのファンは「薬物違反への罰則が強化されたので、使用を控えた結果」と捉えている。これは大筋で正しいかもしれないが、それでも根絶された訳ではないだろう。
では、なぜそれでも一部の選手は使用を止められないのか?ぼくは、これを中毒症状の結果と見ている。ここで言う「中毒」とは、医学的な中毒ではなく、精神的な中毒だ。薬物と成績上昇の医学的な因果関係は証明されていないが、違反者はパフォーマンスを向上させることを目指して薬物を使用する。そうするとどうだろう。恐らく、薬物使用者のかなりの部分は、もうクスリの助け無しでプレーするのが心理的に怖くなっているのではないか。メヒアの場合は、それが極端な例だろう。彼は試合には出場できない状況でありながら、来るべき復帰後のプレーを想像しただけで、クスリを止めるとそれまで現在の筋力を維持できないとの思いに駆られたのだろう。一旦、薬物に手を出した選手は医学的な中毒状態ではなくても、心理的な中毒でそれなしでプレーすることができなくなっている。これは大いにあり得ることだろう。薬物違反根絶の難しさがここにある。