【なぜ仮面ライダーは凄まじき戦士になったのか?】みんなの笑顔を守る仮面ライダーの哀しき戦いとは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
5月もあっという間に終盤ですが、みなさまいかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「未確認」です。
「突然どうしたの?」とご指摘を頂きそうですが、そんなに難しい話は致しません。
「未確認」とは、シンプルに「まだ確かめられていないこと。」と定義されています(広辞苑)。
その代表例として、ネス湖の怪獣やヒマラヤの雪男をはじめとする「未確認生物」や、UFOをはじめとする「未確認飛行物体」といった言葉が、私達の日常の中で浸透しています。
世界各地でも、これは現実なのかフィクションなのか、「未確認生物」を題材とした摩訶不思議な伝説や物語が散見できますが、今回はそんな未確認の生物と戦うスーパーヒーローの活躍を描いた、不滅の特撮ヒーロー番組をご紹介したいと思います。
その特撮ヒーロー番組とは、東映制作の『仮面ライダークウガ(2000)』。
本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、今や日曜日の朝番組としてお馴染みである平成仮面ライダーシリーズの第1作でした。
この『仮面ライダークウガ(2000)』の物語において登場したのは、主人公のクウガと戦う悪役達(怪人)、グロンギ。
彼らは人々から「未確認生命体」と呼ばれる恐怖の存在として描かれ、仮面ライダークウガと激しい戦いを繰り広げました。
本記事では、そんなグロンギと呼ばれる怪人達はどんな存在なのか、焦点を当てていきたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【塗り替えられた伝説】昭和から平成!新時代に熱くよみがえった仮面ライダークウガの物語とは?
本記事にて取り上げるのは、平成仮面ライダーシリーズ第1作『仮面ライダークウガ(2000)』のお話。その前に少しだけ、本作に至るまでの仮面ライダーシリーズの歴史を振り返りたいと思います。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。「変身!」というかけ声と決めポーズで、主人公の姿がパッと格好良いスーパーヒーローに変わり、ショッカーの戦闘員達をなぎ倒し、恐怖の怪人を「ライダーキック」(必殺技)でやっつける描写が、子ども達の心を掴んだのです。
その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーアマゾン(1974)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになりました。
そして時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』であり、平成という新時代に誕生した本作で試みられたのが、上述した昭和の仮面ライダーシリーズにおいて構築された「お約束の破壊」でした。
『仮面ライダークウガ(2000)』は、主人公・五代雄介(演:オダギリジョー)が古代遺跡から発掘されたアークル(変身ベルト)を身に宿して変身する仮面ライダークウガが、警察組織と共に、古代の封印から解かれた戦闘民族(グロンギ怪人)相手に「みんなの笑顔を守る」ために戦う物語として、約1年間放送されました。
本作は徹底した現実志向的な作風で物語が展開されたのが特徴でした。主人公・仮面ライダーと、それと戦う怪人という最低限の番組要素を除いて、「世界征服を謳う大それた悪の組織」や「悪の組織で働く、奇声を放つ戦闘員」、「未知の科学力で改造された人間」等、非現実的かつ科学的な立証が困難な設定は廃されたのです。
つまり、本作に登場する悪役・グロンギは悪の秘密結社ではありません。彼らは古代から蘇った戦闘民族であり、キーキー奇声を放つ「戦闘員」も雇用していないのです。原則、グロンギの怪人は単独で仮面ライダーに挑むのが特徴であり、手柄を怪人同士で競い合ったり、怪人達の頂点に立つ者に下級怪人が下克上を行なうことさえありました。
次章からは、そんな戦闘民族・グロンギと仮面ライダークウガとの戦いについて、焦点を当てていきたいと思います。
【繰り広げられる恐怖の殺人ゲーム!】超古代からよみがえった殺戮集団グロンギとは何者か?
さてここからは、『仮面ライダークウガ(2000)』の悪役である、殺戮集団グロンギについて焦点を当てていきたいと思います。
ことのはじまりは現代(2000年)。
長野県北部の九郎ヶ岳の奥深くにある超古代遺跡(九郎ヶ岳遺跡)から、古代文字が書かれた棺が発掘されます。信濃大学考古学研究室の一同が棺を調査したところ、超古代の戦士と思われるミイラと、ベルト状の物体が発掘されました。
・・・しかしこの棺、決して開けてはならないパンドラの箱でした。「勝手に触ったら呪うぞ」というような簡単な代物ではなく、かつて仮面ライダーとなって戦った超古代の戦士(ミイラ)が、超古代の人々の天敵であった殺戮集団「グロンギ」(怪人)を、自身を埋葬することと引き換えに封印していたものだったのです。
棺を開けてしまった結果、グロンギは現代によみがえり、教授をはじめ考古学研究室の一同は、グロンギの頂点である怪人(ダグバ)に惨殺されてしまいました。現代に解き放たれたグロンギ(怪人)は、日本社会に潜伏して殺戮を開始します。
しかし、超古代から蘇ったのは悪いことばかりではありませんでした。脅威(グロンギ)と共に希望(仮面ライダー)も復活し、発掘されたベルトを継承した青年(五代雄介)が現代の仮面ライダー、「仮面ライダークウガ」となったのです。
超古代から蘇った怪人(グロンギ)と仮面ライダー(クウガ)の出現、この前代未聞の状況に対し、警視庁はグロンギ(怪人)を「未確認生命体」と呼称し、「未確認生命体関連事件合同捜査本部」を設置しました。グロンギが実社会において悪事を働けば、警察が動いて捜査を開始、実力を行使する体制が整えられました。
超古代に封印され、現代に蘇った殺戮集団である「グロンギ」(怪人)。独自の言葉(グロンギ語)を話し、普段は人間の姿で現代社会に潜伏。特定の条件下で何人の人間を殺害できるのかを競い合う殺人ゲーム「ゲゲル」を展開し、ゲームをクリアすることによって階級が上がるランクアップ競争を行なう死の集団でした。
階級は最下層の「ズ」、中層の「メ」、上位集団の「ゴ」に分類され、階級が上がれば上がるほどゲームの難易度は複雑になっていくルールが展開されました。
まず「ズ」の集団はシンプルに、手当たり次第に人を殺害していく集団であったのに対し、「メ」では、2日で180人の殺害を目指す者や、乗り物(トラック)を使って人を轢死・圧死を行なう者、さらにはJR総武線の千葉行き電車の4両目に乗り合わせた乗客にマーキングを施し、下車した後に老若男女(子ども含む)を斬首して殺害した者等、ゲームにおける過程や条件がより複雑になっていきました。
そして上位集団である「ゴ」は、「グロンギ」の頂点に君臨する最強怪人「ダグバ」と直接対決できる殺人ゲームを展開し、「メ」以上に複雑なゲームを展開。ショパンの名曲「革命のエチュード」の旋律の音階と同じ頭文字のプールを襲い、音符の種類で殺害人数を決定した者や、ネイルアートの色と同じ車(タクシー)を強酸で襲った者、そして警察官のみを襲う「破壊のカリスマ」を自称した者達等、彼らと対峙するクウガも自身を大いに強化しなければ勝利できない強敵揃いでした。
ここまで上述してきたとおり、昭和の仮面ライダー達が戦った世界征服を謳う「悪の組織」に対し、平成の世に蘇った「グロンギ」は全く違った存在だったのです。
余談ですが、私は平成の生まれで、幼少期はまだ仮面ライダーシリーズのテレビ放送がお休み(中断)していた時期でした。その間に昭和の仮面ライダーシリーズにビデオで親しんでいたのですが、少しお兄ちゃんになっていざ『クウガ(2000)』が始まると、グロンギが本当に怖くて・・・。電車から降りたら首を鎌で切られるんじゃないかとか、トラックのバック時に鳴り響く「バックします」に反応してしまったり、プールで遊んだらムチで打たれて心臓発作を起こすんじゃないか等、実社会に潜む怪人を描いた『クウガ』の世界観と自分の日常をダブらせてしまい、恐怖に震え上がったものです。それだけ『仮面ライダークウガ(2000)』はリアリティ溢れる描写に溢れており、悪役であるグロンギも、かつての悪の秘密結社とは異なるアプローチで視聴者に絶大なインパクトを与えていた存在でした。
そんな数あるグロンギの怪人達の中でも、視聴者に特に強烈なインパクトを残したのが「ゴ・ジャラジ・ダ」(未確認生命体第42号)でした。
緑川高校2年生の少年達を12日間で90人殺すという殺人ゲームを展開。4日経過すると数センチの大きさに拡大する微細な針を少年達の脳内に撃ち込み、4日後に死ぬという死の宣告を実施。ターゲットとなった少年の周囲に現れ無言の存在感を発揮し、死に怯える少年達の姿を見て楽しむだけでなく、死んだターゲットの葬式にまで出現し、同級生にも恐怖を与えるという許し難い暴挙を繰り返す外道中の外道でした。
死の恐怖に耐えきれず自殺した少年も出してしまう程、極めて陰湿な戦術を展開するジャラジ。身を隠したターゲットの別荘に無言電話をかけたり、さらには「君達が苦しむほど・・・楽しいから」と、相手を苦しめることに快楽を感じる旨をターゲット達に直接伝える悪質さに留まらず、自身は滅多に姿を現わさない凶悪怪人でした。
しかし、そんな一瞬のジャラジの油断を突いて挑んだのは、クウガ(五代雄介)でした。怒りに満ちたクウガはジャラジに飛びかかり、マウントポジからジャラジの顔面を何度も殴りつけます。跨がった状態から何度もパンチを振るうクウガの拳には、本気の怒りが込められていました。
ジャラジの口元から飛び出す血反吐。地面に転がるジャラジを、怒りの鬼神となったクウガは決して逃しません。クウガは愛車のバイク(ライジングビートゴウラム)に乗り込み、ジャラジに突進。苦しむジャラジをフロントに乗せたまま、近くの湖面まで追い詰めます。
クウガはジャラジの針さえ跳ね返す、紫色の強固な姿「ライジングタイタンフォーム」へと変身し、怯えるジャラジを怒りと憎しみで何度も剣で斬りつけます。クウガの脳裏に浮かんだのは、殺された少年達の顔ー。
クウガは溢れる怒りを込め、地に仰向けになったジャラジを渾身の一撃で刺し殺します。怪人が死ぬ爆発の炎の中、クウガ(五代雄介)が見たのは、怒りと憎しみが頂点に達した凄まじき「黒いクウガ」の姿でしたー。
その後、何人もの犠牲者を出しながらも、仮面ライダークウガ(五代雄介)の戦いは続きます。クウガは自身が見た凄まじき力の「黒いクウガ」へ進化の道を歩んでおり、怒りや憎しみだけに力を振るえば、戦うだけの怒りの超人になり得る危うさを秘めていました。
来るグロンギの頂点「ダグバ(ン・ダグバ・ゼバ)」との最終決戦ー。五代は凄まじき「黒のクウガ(アルティメットフォーム)」になる決意を固めますが、彼の内に秘めたる優しさと精神は、クウガを憎しみの超人に変えることはありませんでした。「黒のクウガ」の目は五代の人格を秘めた赤い目に輝き、雪山での涙ながらの激しい殴り合いの末、ダグバを滅ぼします。
グロンギとの激しい戦いを終え、旅に出た五代の姿はどこかの国の青空の下にありました。青々と拡がるビーチで、揉める子ども達のもとに駆け寄り、得意のジャグリングを披露します。五代の凄技に子ども達はみんな笑顔。
五代は子ども達にさよならをします。
五代は青空の下で、美しい砂浜のビーチを歩きながら、またどこかへと旅立っていくのでしたー。
かつて仮面ライダークウガとなって人々の笑顔を守り抜いた彼は、これからもきっと世界中のみんなを笑顔にしていくことでしょう。
【平成は終わらない】時代を超えて愛される平成仮面ライダーシリーズの未来とは?
上述してきた『仮面ライダークウガ(2000)』の放送終了後、本作のヒットを受けて、次回作『仮面ライダーアギト(2001)』、『仮面ライダー龍騎(2002)』等、次々と新たな仮面ライダーシリーズが放送されていきました。
第1作の『仮面ライダークウガ(2000)』と同様、毎作挑戦の繰り返しだったこれらの仮面ライダーシリーズは、元号が平成から令和に変わるまで全20作を数えることになり、「平成仮面ライダーシリーズ」として定着することになりました。
元号が「令和」に変わった現在も、「平成仮面ライダーシリーズ」の進化は留まることを知りません。新作映画の公開やイベントの開催、玩具展開の活性化等、気付けば、令和の日常も平成仮面ライダーに溢れているのです。
しかし、そんな平成仮面ライダーシリーズのはじまりを築き上げたのは、『仮面ライダークウガ(2000)』であり、彼が昭和から継承された仮面ライダーシリーズの歴史を塗り替えたからこそ、平成仮面ライダーシリーズは現在までアクセルを解き放ち続けることが出来たのだと思います。
『仮面ライダークウガ(2000)』の放送から、来年で25周年。今後仮面ライダーシリーズがどんな進化を遂げていくのか、私も1ファンとしてこれからも応援していきたいと思います。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(アクセス)
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URL:https://www.bishopmuseum.org/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/(外部リンク)
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.1 仮面ライダークウガ』、講談社
・鈴木康成、『語れ!仮面ライダー』、KKベストセラーズ
・宇城卓秀、『僕たちの「仮面ライダー」怪人ランキング』、株式会社宝島社
・アロハ検定協会、「アロハ検定 オフィシャルブック」、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社