9日連続の交渉でも妥結できず!開幕2カードのキャンセルが決まった舞台裏
【9日連続の労使交渉も実らず決裂へ】
最終局面に迎えていたMLBと選手会の労使交渉だったが、MLBが最終交渉期限としていた現地時間の3月1日午後5時(米東部時間)直前になって、MLBから提示されていた「最善かつ最後のオファー」を、選手会が正式に拒絶したため、2月21日から続いていた9日間の労使交渉は物別れに終わった。
交渉場所となったフロリダ州にあるカージナルスとマーリンズのキャンプ施設に連日張り付いていた米メディアによれば、これ以上の交渉は予定されておらず、MLB、選手会ともに3月2日にフロリダを離れるようだ。
この結果、3月31日に迎える予定だったシーズン開幕は事実上不可能となり、ESPNのジェフ・パッサン記者によれば、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは、開幕2カードの全試合をキャンセルすると明言したようだ。
【選手会は全員一致で最終オファーを拒否】
元々MLBは、2月28日までに交渉妥結しなければ日程通りのシーズン開幕は不可能だという姿勢で最終交渉に臨んでいた。途中からマンフレッド・コミッショナーも現地入りし、交渉妥結を目指してきた。
2月28日には16時間を超える計13回のミーティングを行い、選手会と最終調整を行ってきたが合意できず、最終期限を1日延ばして、この日の交渉に臨んでいた。
MLBとしては妥結できる可能性を感じていたからこそ最終期限を延ばしてまで交渉を続けてきたわけだが、選手会は「多少の歩み寄りはあったが、主要議題で大きな開きがある」という姿勢を最後まで崩しておらず、結局選手会は最終オファーに関しても全員一致で拒否を決定している。
【最大のネックはぜいたく税制度?!】
今回の労使交渉で最大の争点になっていたのが、最低年俸の引き上げ、年俸調停権取得前選手に支払うプール金、ぜいたく税制度の見直し──の3点だったといわれている。
最低年俸とプール金に関しては選手会の希望額には達していないものの、MLBは交渉を重ねながら徐々に上乗せしていき、最終オファーでは最低年俸は70万ドル(選手会の希望額は72.5万ドル)、プール金も3000万ドル(同8500万ドル)まで引き上げていったのだが、ぜいたく税制度についてはまったく動こうとしなかった。
選手会はぜいたく税の支払い対象となる限度額について、新労使協約が有効となる今後5年間で2億3800万ドル(2022年)→2億4400万ドル(2023年)→2億5000万ドル(2024年)→2億5600万ドル(2025年)→2億6300万ドル(2026年)というものを要求していた。
これに対しMLBは、課税率を引き下げるなどの変更には応じたものの、最終オファーでも2億2000万ドル→2億2000万ドル→2億2000万ドル→2億2400万ドル→2億3000万ドルという設定を貫き通した。
この差が、最後まで選手会を納得させられなかったようだ。
【交渉再開時期によってさらに長期化も】
今回の労使交渉で妥結できなかったため、MLBはロックアウトを継続することになった。
すでに選手会はスプリングトレーニングの即時合流が難しいと判断し、希望者を集めてフロリダとアリゾナで選手会独自のキャンプを実施することを明らかにしている。
現時点では開幕2カードのキャンセルに止まっているが、シーズン開幕まで1ヶ月は必要だとするMLBの判断からすれば、すぐにでも労使交渉を再開しなければ、更なるキャンセルは必至の状況だ。
米メディアが報じているところでは、公式戦がキャンセルされることで、選手会の選手たち全体で1日当たり2050万ドルのサラリーを失っていくという。もちろん公式戦が開催できないことで、MLBと各チームも収入が削減されていく。
両者ともにキズを負うことになった労使交渉はいつまで続くのだろうか。