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元広島カープ山口翔、返り咲きへ一歩ずつ。「大谷さんの姿を見て」火の国サラマンダーズでの初勝利マーク

田尻耕太郎スポーツライター
勝利投手になった山口翔

 プロ野球・独立リーグ「ヤマエグループ九州アジアリーグ」の火の国サラマンダーズは同リーグ公式戦で福岡ソフトバンクホークス3軍と対戦した。

 前日まで同カード連敗し、開幕4連敗と苦しんでいた昨季の独立リーグ王者だったが、この日は接戦をモノにしてようやく今季初勝利を挙げた。

昨季独立日本一・火の国は今季5戦目で初勝利

【3月26日 ヤマエグループ九州アジアリーグ タマスタ筑後 377人】

火の国    004000010 5

ソフトバンク 001200000 3

【投手リレー】

(火)松江、◯山口翔、石本、S宮澤

(ソ)奥村、●中道、木村大、風間、村上

【本塁打】

なし

【スタメン】

(火)8小林 6晴樹 5仲村 Dサンチェス 3山口嶺 4瀬井 9中山 7大崎 2有田

(ソ)3緒方 8舟越 6伊藤 2牧原巧 9中村宜 4勝連 5三代 7早 Dオスーナ

勝利をおさめ、観客の声援に応える火の国の選手たち
勝利をおさめ、観客の声援に応える火の国の選手たち

【戦評】

 火の国が三回表、一挙5連打の集中攻撃だ。ノーアウト一塁から有田、小林の連打で満塁の絶好機を作ると、晴樹が左中間突破の走者一掃3点三塁打を放った。さらに仲村がタイムリーを放ってこの回4点目。続くサンチェスまでヒットが続いた。

 先発の松江は4回3失点でしのぐと、リリーフ陣が粘りのピッチングでリードを守り抜いた。2番手の山口翔は2回2/3を無失点。最後は宮澤が2回を気迫あふれる投球を見せて無失点で投げ抜き、チームに今季初勝利を呼び込んだ。

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山口翔、NPB復帰を目指して火の国へ

 昨季まで広島東洋カープでプレーした山口翔投手が九州アジアリーグでの初勝利を飾った。

 チームが4-3とリードした五回裏から登板。「チームが開幕から連敗していたので、何とかいい投球をしたかった」。先頭打者にヒットされるも、捕手の深草が二盗を阻止して1アウト。その後もヒット、ヒットで結果的に3連打を浴びたが、4番・牧原巧から144キロ直球で空振り三振を奪い、続く中村宜を147キロ直球で遊ゴロに仕留めてピンチを脱した。その後も走者を背負ったが、力のある直球を主体に乗り切り、2回2/3を投げて3安打4三振3四球無失点の内容で後続にバトンをつないだ。

 チームがリードを守りきり、山口翔は同リーグ2試合目の登板で初白星をマークした。

熊本工時代はエースで甲子園出場

 山口翔は熊本市南区出身の23歳右腕。地元強豪の熊本工業高校在学時から剛腕として名を轟かせた。1年秋からベンチ入りし、2年生春からエースに。同年夏の県大会2回戦・八代東高校戦では球威を活かして16奪三振の力投を見せた。そして3年生春にはセンバツ甲子園大会に出場している。

 なお、同じ熊本高校球界の同世代には昨年セ・リーグで三冠王に輝いた村上宗隆内野手(九州学院、現東京ヤクルトスワローズ)や、4季連続甲子園出場を果たした秀岳館高校の田浦文丸投手(現福岡ソフトバンクホークス)がいた。

広島にはドラフト2位で入団

 2017年ドラフト2位で広島に入団。150キロ級の直球が魅力で2年目だった2019年5月7日の中日8回戦(ナゴヤドーム)でプロ初登板を飾ると、同年5月30日のヤクルト11回戦(神宮)でプロ初先発。7回1安打無失点と好投してプロ初勝利を挙げた。

 しかし、その後5試合先発を任されるも2勝目は遠く、一軍登板も同年限りだった。5年目だった今オフに戦力外。一軍通算は9試合登板で1勝3敗、防御率4.85だった。

 11月8日に行われた12球団合同トライアウトに参加。146キロの直球をマークし打者3人に対し、三ゴロ、三振、三ゴロと好結果を残していた。

馬原監督からのアドバイス

 NPB復帰を目指し、地元熊本の火の国サラマンダーズ入りを決意。馬原孝浩監督は「今年中にNPBに復帰させることが目標。そのためにやるべきことをやっている」と話す。

 熊工時代はもともとマウンドでの躍動感が持ち味だった。しかし、広島ではその長所が徐々に消え、肘の位置も下がり、最大の武器である球の強さも消えてしまっていた。

 馬原監督の「マウンドで暴れろ。もっとオラオラしていくんだ」と言葉に背中を押され、山口翔は自分の原点を思い出してきている。

「カープで最後の方は、バッターと勝負できていなくて腕も振れていなかった。今はしっかり対バッターを楽しめています」

同級生から刺激

 また、先日までのWBCを見て気づきもあった。

「一流のピッチャーはみんな強気で攻めていく。特に大谷(翔平)さんの姿は胸に響きました。あれくらいやらないと、やっぱり抑えられない」

 広島時代に特に仲の良かった同級生の活躍も刺激になっている。

「なかでも(遠藤)淳志は開幕ローテですからね。黒原とかもそうだけど、同級生の結果は気になる。ただ、その中でやっぱり、どこか悔しさを持ちながらやっているのが本音です」

 そんな気持ちもまた原動力だ。

155キロ超を目指す

 馬原監督は柔道整復師・鍼灸師の国家資格を持ち、西洋・東洋医学の知識が豊富でトレーニング面でもNPB復帰を意識したアドバイスを送っている。

「短期間でNPBにアピールするためには出力を上げるのが一番。だからバンバン登板させるより、トレーニングで体を追い込む。しばらくして投げてみたら、とんでもない球を投げているとか」

 理想は155キロ以上のストレートだという。

「僕自身も、徐々によくなってる部分が見えている。今やってることは正しいというのも感じましたし、継続してもっと頑張ろうと思っています」(山口翔)

 今季NPB登録期限の7月31日を強く意識しながら、返り咲きを目指して鍛錬の日々と向き合っていく。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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