山本由伸獲得でヤンキースに立ちはだかる壁を乗り越えてしまったドジャースの常識破りな補強戦略
【大谷選手に続き山本投手もドジャースへ!】
今オフ最大の関心事だった大谷翔平選手のドジャース入りが決まった後、その注目を一身に集めていた山本由伸投手だったが、米メディアが現地時間12月21日に一斉に報じたところでは、彼もドジャースと契約合意したようだ。
現時点でドジャースから正式発表はされていないが、報道によれば合意内容は12年で総額3億2500万ドルに上る見込みだ。この額は、現在ヤンキースに所属するゲリット・コール投手の9年総額3億2400万ドルを100万ドル上回り、投手としてMLB史上最高額となるものだ。
大谷選手の10年総額7億ドルに続き、山本投手も破格の契約で獲得に成功したドジャース。この2人の他に、レイズからトレードで獲得したタイラー・グラスナウ投手とも5年総額1億3650万ドルで契約延長しており、この3人だけで11億ドルを超える額を費やしている。
【ドジャースが交渉終盤で金額を上乗せか?】
ドジャースの地元紙ロサンゼルス・タイムズ紙が報じたところでは。ドジャースが山本投手に正式オファーした契約内容は2億5000万ドルから3億ドルとされており、結果的に合意額はそれをはるかに上回っている。
ドジャースは大谷選手との契約交渉でも、最終段階で1億ドルを上乗せしたと報じられており、今回もヤンキースやメッツらと熾烈な獲得競争を繰り広げる中で上乗せした可能性がありそうだ。
ちなみにMLB公式サイトによれば、山本投手の契約は年俸総額2億7500万ドルにサイニングボーナス(契約金)5000万ドルを加えたものだという。前述のロサンゼルス・タイムズ紙の報道と併せて推測すると、契約金の5000万ドルが上乗せされたと考えると辻褄が合いそうだ。
しかしドジャースを上回るMLB最高の収益を誇り、大谷選手の獲得競争には参戦せず山本投手一本に的を絞ってきたヤンキースなら、ドジャースに対抗しうるオファーができたはずだ。
それではなぜ、ヤンキースは諦めることになったのか。それはヤンキースが絶対に超えられない壁があったからではないだろうか。
【チームの大黒柱コール投手を超えるオファーは困難】
前述したとおり、ヤンキースにはこれまで投手としてMLB最高額の契約を結んでいるコール投手がいる。
2020年にチームに加わって以降、先発ローテーションの核であり続け、昨シーズンはア・リーグ最多タイの33試合に先発し、15勝4敗、防御率2.63(タイトル獲得)、222奪三振を記録し、念願のサイヤング賞を初受賞している。
まさにコール投手は自他ともに認めるチームの絶対的エースであり、ヤンキースとしては彼に最大の敬意を払わなければならない存在だ。また選手たちにとって契約内容(平均年俸額や年俸総額)は、重要なステータスになっている。
今回山本投手がドジャースと合意したとされる12年総額3億2500万ドルは、平均年俸額でコール選手を下回るとはいえ、まだMLBで一度も投げていない山本投手に対し、コール投手を上回る年俸総額を提示することはヤンキースにはかなりの躊躇いがあったと考えられる。
もちろんこれはヤンキースに限ったことではなく、他チームも同様のことがいえるだろう。これまで10チーム以上が山本投手獲得に興味を示していたとされるが、年俸総額が3億ドル前後まで跳ね上がったと報じられると、獲得有力候補には自然と大規模マーケットのチームに絞り込まれていった。
そこにコール投手の年俸総額を超えるオファーとなれば、リスクを考慮し二の足を踏むのは当然のことだろう。それだけに、ドジャースのオファー内容は常識破りと呼んでもいいレベルだったと考えてほしい(ただしメッツだけはドジャースと同じ内容のオファーをしていたようだ)。
【プレッシャーを大幅軽減してくれる大谷選手の存在】
ちなみにドジャースの先発投手陣はグラスナウ投手が加わったとはいえ、大谷選手以外で最も実績のあるのはウォーカー・ビューラー投手なのだが、彼にしてもまだ年俸調停期間内の選手で、いわゆる高額年俸を得ているベテラン投手が1人もいない(ただしカーショー投手と再契約する可能性をのこしているが…)。それだけチーム内で軋轢が起こりにくい状況にあった。
だが若手中心のドジャースに入団したとしても、投手としてMLB最高額で合意した以上、山本投手が受ける期待、プレッシャーは計り知れないものがある。
しかしドジャースにはMLB最高額契約の大谷選手がいるので、そうした期待、プレッシャーの大部分を大谷選手が請け負ってくれるというのも、山本投手には大きな支えになるだろう。
とりあえずドジャースからの正式発表を待った上で、改めて契約内容の詳細を確認したいと思う。