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URLを知らない若い人たち説は正しいのか?ブラウザを使わない『スクショ世代』

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(ペイレスイメージズ/アフロ)

KNNポール神田です。

「URLを知らなくとも利用できるほど、ネットが便利になった」「そういえばいつのころからか、CMで『www~』って読み上げなくなった」など、さまざまな意見が出ています。

出典:情報をスクショだけで拡散する人の理由は?→「今の若者、“URL”の概念知らない説」が生まれ話題に

2018年に、「今の若者、“URL”の概念知らない説」をよく見かけた。

■なぜ?今の若者はURLを使わなくなったのか?

□文字列をコピペする機会がない

 なぜURLのコピペをしないのか。スマホのWebブラウザーでURLをコピーし、LINEのトークへ貼り付ける手順を娘に見せたところ、「面倒臭い」の一言が返ってきた。それでもコピペ操作を教えてみると、ある事実に気付いた。彼女は文字列を選択し、コピーしてペーストするという操作に慣れていない。スマホの使い過ぎと親である筆者に叱られるほど、彼女はスマホのヘビーユーザー。なのに、文字列をコピペする機会がほとんどないようだ。背景には、若い世代はWebブラウザーをあまり使わないという実態がある。

出典:なぜスクショ?スマホネイティブ世代がコピペしない理由

ITライターの鈴木朋子氏の記事を読んで、とても腑に落ちた。

今の若い人に限らず、『文字列をコピペする機会がない』というほど、アプリへの依存度が高いことを物語っている。『URL』の概念がないということよりも、使わなくても生きていけるし、生活に不便を生じさせなくなってきているからだ。

すでに、若者でなくても、オトナでさえ『http』の『URL』を『ブラウザ』に打ち込むことなんてない時代だからである。

それは、ブラウザの検索窓で、『ヤフー』とさえ打ち込めば、URLを打ち込まなくても、yahoo.co.jp へリンクが貼られのと同じだ。

もはや『http』で始まる『hypertext transfer protocol』や、『URL』という『Uniform Resource Locator』なんて語源も知らないで当然だ。さらに、スマートフォンと常に暮らしている若い人の特徴は、もはや『検索』すらもいらなくなった。ブラウザの利用率が落ちているからだ。アプリがあればブラウザの必要性はなくなってきている。

そうアプリにおけるYouTubeや、LINE、Twitter 、なんでも『シェアボタン』『共有する』で対応できる。そして情報の中身については『スクリーンショット』、つまり『スクショ』で簡単にすぐに対応できる。文字でさえも、『コピー&ペースト』することなく『スクショ』にして送ればよいのだ。そして、『スクショ』であれば、それらは、通信容量の『ギガ』も圧迫することがなく、低速回線でもなんとか表示することができるという月末の通信環境の問題にも貢献していたからだ。URLだと文脈の途中でもそれを外部のサイトへアクセスしなければならいが、『スクショ』であれば文脈を共有することができる。

■もしかして、スマートフォン時代の『スクショ』は『モザイクブラウザ』なのかもしれない。

サー・ティム・バーナーズ・リーが開発した『WWW(WorldWideWeb)』を、イリノイ大学のマーク・アンドリーセンが『NCSA Mosaic(モザイク)』によって、画像とテキストとレイアウトを同時に混在して表示できるブラウザとして開発した。

現在の『スクショ』は、かつての『モザイク』同様にスマートフォンに表示される『情報画面』の文字もレイアウトも画像もを、すべて画像データとして一瞬にして再送信できる機能を保持しているのだ。かつてのパソコンのように、画面キャプチャをおこない、画像ファイルとして、名前をつけてフォルダに保存するなんてこともいらない。そもそもスマートフォンにおいては、『フォルダ管理』の概念すら不要だ。そのうち、『スクショ』した段階で自動的にURLがエンコードされているような機能が搭載されることにPC世代としては期待したい。

■そもそも『URL』という文字を見る機会がもうどこにも存在しない

すでに『URL』は死語となったと言い切っても過言ではないだろう。ブラウザのどこにもURLという記号を発掘することができない。もはや、Googleの『検索窓』に代替されてしまったからだ。そう、URL、アドレス、リンク、それらはすべて『シェア』ボタンで代用できてしまったからだ。テレビやラジオのCMでURLを連呼することもない。「○○○で検索」でかたずく。すでにQRコードでさえもURLも読み込める。

『URL』に価値があった時代は、『ドメイン名』にも価値があった。筆者もかつて保持していた○○○.comのドメインを高値で売却できたが、現在ではまた売出しにかかっている始末だ。すでにメールアドレスもco.jpでなく、gmailの人も多い。いや、むしろ電子メールよりもメッセンジャーやSNS、Slackへと変化していこうとしている。ジャンクメールにあふれた電子メールは初回のコンタクトだけで十分なのかもしれない。そう、電話もすでに営業電話くらいしかかかってこない旧メディアとなっている。当然、FAXは10数年前以上から使ってもいない。『手紙』や『年賀状』はまったくこなくなったけれども、『メルカリ』や『amazon』の配送物は日々頻繁にやってくる。

■『スクショ世代』が大人になる頃

現在はジェネレーションごとに、メディア端末のギャップが多いにある。現在の小学生にとっては、もはやスマートフォンやタブレットは、生まれながらにあるメディアだ。むしろ、テレビやラジオよりも一番身近なメディアだ。そして、それらに、ほとんどの可処分時間がさかれている。そしてその大半が『アプリ』である。新たな『アプリ』で大手アプリ市場の中に食い込んでいくのは非常にハードで障壁も高いが、そこで万一参入できた場合の成果物も無尽蔵だ。今までの『マスメディア』と呼ばれた媒体群が『マス』ではなくなるからだ。

5G時代で転送量が増えればさらに、それらへの粘着性は増加するばかりだ。

現在のなんでも『スクショ』で対応する『スクショ世代』が大人になる頃には、その『スクショ』で対応することが当たり前の社会になることも容易に想定できる。

『URL』がなくても、インターネットを楽しめる時代。そのうち『インターネット』という言葉も死語となるのかもしれない。すべてはスマートな『ネット』で事足りる時代になったといえそうだ。

インターネットの黎明期が、いままでのメディアの置き換え、そしてスマートフォンへのシフトが第二段階、そして、ようやくこれから第三段階への変化が起きようとしている。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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