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「豊島竜王と長い持ち時間でいろいろな将棋を指せたことはとても勉強になった」藤井聡太王位、会見コメント

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

(王位戦七番勝負第5局終了後、防衛を果たした藤井聡太王位の記者会見がおこなわれた)

――豊島竜王とは初めてのタイトル戦。2日制でじっくり戦ってみての感想は?

藤井「豊島竜王とタイトル戦の番勝負で戦うのは今回の王位戦が初めてだったんですけど。王位戦の対局を振り返ると、序中盤でリードを奪われてしまうような展開が多くて。特に2日制の長い対局だと、けっこうその序中盤の差というのが大きく出てしまって。けっこうこちらにとって課題が多いシリーズだったのかなあというふうに思います」

――「戦法の幅を広げたい」という目標は達成された?

藤井「そうですね。王位戦、戦型的には相掛かりが3局で角換わりが2局という形ではあったんですけど。けっこうそれぞれ、違う展開になって。豊島竜王と長い持ち時間でそういったいろいろな将棋を指せたことは、とても勉強になったことかな、というふうに思います」

――このシリーズ、盤外で印象に残ったことは?

藤井「まず今期の王位戦、第4局、予定されていた(佐賀県)嬉野対局が、対局地が雨の影響で変更になってしまって。コロナ禍もあって、大変な状況の中で対局の環境を整えていただいたことに本当に感謝していますし。また第2局の北海道対局では初めて北海道で電車に乗ることができたりと、そういったこともあって。自分としてはそういった面でも充実した番勝負になったのかな、というふうには思っています」

――渭水苑では1996年以来、王位戦の対局がおこなわれている。対局の感想は?

藤井「渭水苑様では毎年王位戦を開催していただいていますけど、自分は今回はじめてうかがって。本当にとても落ち着いた雰囲気の対局室で。またごはんもすごく美味しくいただきました」(笑顔)

――第5局のごはんとおやつで印象に残ってるものは?

藤井「今回ですと、2日目に鉄火丼をいただいたんですけど。対局のときはけっこうこういった、丼(どん)ものというのは食べやすいですし。とても美味しくいただきました」

――徳島のファンに対して一言。

藤井「まずは本局、ご観戦いただきまして、ありがとうございました。今回こうして徳島の地で、防衛という結果を出すことができて、とてもうれしく思っています。また来年もあるので、またそこでもいい将棋をお見せできるように、なんとかせいいっぱい精進していきたいと思います」

――棋聖戦では渡辺名人、王位戦では豊島竜王を挑戦者に迎えての防衛。現在の心境は?

藤井「棋聖戦も王位戦も防衛戦で、結果を出すことができてほっとしたというところもあるんですけど。それ以上に渡辺名人、豊島竜王という、本当にトップのお二人に番勝負で対戦するという機会を得ることができて。その中で、やっぱり自分に足りないところが新たに見つかったという部分もあるので、それをまた活かせていければな、というふうに思っています」

――叡王を獲得すれば史上初の十代での三冠達成。改めての意気込みは?

藤井「叡王戦、来月(9月13日)が最終局ということで。そうですね、第4局が少し完敗という結果になってしまったので、第5局については悔いのない将棋が指せるようにできればというふうに思っています」

――印象に残っている対局とその理由を。

藤井「今回の番勝負、けっこう早い段階でこちらが気づいてない好手を指されてリードされるような展開が多かったんですけど。特に第1局(藤井先手で相掛かり)の△7四歩から△7三桂、△3三桂と2枚の桂を跳ねてくるという構想はちょっと、こちらがまったく気づいていない、指されてみると本当にすごくいい手順だったので、それは非常に印象に残っています」

――着物の着付について。

藤井「着付については番勝負が始まる少し前から練習を始めていて。今回の番勝負を通してある程度覚えられればというふうに思っていたので。一応なんとか着れるというぐらいにはなったので、そこはいい経験になったかな、という気がします」

――豊島竜王には最初6連敗。今年になってから7勝3敗。これだけ盛り返せた理由は?

藤井「内容的には苦戦が多いので、まだまだやっぱりこちらの方が足りないところが多いのかなというふうには思っているんですけど。今年1月の朝日杯で初めて勝つことができて。それがいいきっかけになって、この番勝負に臨むことができたのかな、というふうには思います」

――豊島さんには奨励会初段のときに練習将棋を指してもらった。タイトル戦で勝った気持ちは?

藤井「豊島竜王には自分が奨励会のときに将棋を教えていただいたこともあったので、こうやってタイトル戦の番勝負という舞台で対戦できることはとてもうれしいですし。今後もそういう機会を多く持てるようにがんばっていけたらな、というふうには思います」

――ディープラーニング系のソフトを研究に導入して、今期王位戦でなにか効果はあった?

藤井「今回の王位戦はけっこう序盤で先行されてしまう展開が多かったので。(序盤の精度の高い)ディープラーニング系のソフトの強みというのは、自分に取り入れるということは、なかなかまだ至っていないというか、難しいのかな、というふうには思っています」

――ディープラーニング系のソフトを研究に導入しようと思ったきっかけは?

藤井「昨年末ぐらいにディープラーニング系の将棋ソフトがこれまでのソフトに並ぶぐらい非常に強くなっているという話をうかがったので、それで使ってみようかなというふうには思いました」

――ABEMA視聴者に一言。

藤井「いつもご観戦いただきましてありがとうございます。今回の王位戦では自分の将棋の課題が多く見つかったかなと思うので、それを今後に活かしていければというふうに思います。今後もABEMAトーナメントや、ほかの棋戦も中継されるかと思いますので、そちらもどうぞよろしくお願いします」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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