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もはや絶体絶命?!レイズ苦心の本拠地分割プランをMLBが却下

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
スターンバーグ・オーナーはどこに活路を見出していくのだろうか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBがレイズの本拠地分割プランを却下】

 米複数メディアが報じたところによると、レイズのスチュワート・スターンバーグ・オーナーが、ここ数年チームが画策してきた本拠地分割プランをMLBの評議会で却下されたことを明らかにした。

 レイズは1998年にチーム創設以来、フロリダ州セントピーターズバーグを本拠地にしてきたが、長年にわたり観客動数員で低迷を続けてきた。

 その打開策として、かつてエキスポス(現ナショナルズ)が本拠地にしていたモントリオールに着目し、将来的にセントピーターズバーグとモントリオールで公式戦を分割開催することを目指してきた。

 しかし今回の決定により、レイズはセントピーターズバーグに止まる以外に道がなくなり、今後は新球場建設を含め新たな道を模索せざるを得なくなった。

【ここまで観客動員は10年連続ワースト3】

 レイズにとって観客動員数の改善は、チーム生き残りをかけた最重要問題になっている。

 チーム創設1年目の1998年こそ250万人を超えるMLB14位の観客動員数を記録していたが、チームが創設以来6年連続地区最下位など不振続きで、観客動員数も減少していき、2000年以降は常に27位以下で推移してきた。

 それでも2008年にジョー・マドン監督の下ワールドシリーズ進出を果たすと、再び球場にファンが集まるようになり、2008年26位、2009年23位、2010年22位と復活傾向にあった。

 しかしチームはそれ以降の度々ポストシーズン争いをしていたにもかかわらず、2011年は再び28位に逆戻りすると、昨シーズンまで10年連続(コロナ禍の2020年は除外)でワースト3から抜け出せない状況が続けている。

【チーム成績が観客動員に結びつかない現状】

 観客動員数は本来、チーム成績に大きく左右されるものだ。

 例えばドジャースを考えてみよう。元々MLBトップクラスの観客動員数を誇る人気チームで、現在は8年連続(同じく2020年を除く)でMLB1位の観客動員数を継続している。チームもこの間、地区優勝8連覇を記録するなど、ずっとポストシーズンに進出してきたのは周知の通りだ。

 そんなドジャースでも、ポストシーズンに進出できなかった2010年から3年間の観客動員数は3位、11位、5位とトップから陥落しているのだ。それほど観客動員数はチーム成績に影響を受けやすいのだ。

 ところがレイズにはこの常識がまったく通用していない。直近の3年間はすべてポストシーズンに進出しているにもかかわらず、2019年は29位、チーム2度目のワールドシリーズン進出を達成した後の2021年でも28位に止まってしまった。

 これではレイズとしても手の打ちようがないだろう。

【頼みの新球場建設も進展せず】

 確かにセントピーターズバーグはMLBの中でもマーケティング規模が小さい街であり、低予算が続くチーム事情ではファンを惹きつける高額スター選手を維持できないというマイナス面があるのは否めない。

 ただレイズは本拠地分割案を打ち出す一方で、開閉式の天然芝球場を建設するプランなどを発表するなど、なんとかセントピーターズバーグで更なる集客を目指そうとしてきたが、地元自治体の協力をなかなか得られず、新球場建設も頓挫している状況だ。

 ちなみにレイズは現在使用しているドーム球場の「トロピカル・フィールド」とは2027年の賃貸契約を結んでおり、即座の新球場移転は難しい状況だ。だが地元メディアによれば、2023年までに新球場建設の道筋を立てておかないと、現球場の契約が切れる2028年からスムーズに移行できなくなりそうだ。

 そうなるとレイズは完全に身動きがとれなくなり、袋小路に入り込む可能性すら出てくるだろう。

 現時点でスターンバーグ・オーナーは本拠地の完全移転やチーム売却を考えていないとしているが、レイズは着実に追い込まれようとしている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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