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日本の資産所得が伸びなかった要因

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 米国で株式や債券など金融資産の生み出す所得が2024年4~6月期に年率換算で過去最高の3.7兆ドル(約540兆円)となったと22日に日本経済新聞が伝えた。内訳は利子収入が1.8兆ドル強、配当収入が1.9兆ドル弱だった。

 これに対して日本の利子・配当収入は直近の2022年時点で14.5兆円(内閣府)。金額は2000年以来22年ぶりの大きさとなっていたが、比較可能な形で遡れる1994年のピークと比べると半分程度にとどまる。

 この要因は日本の低金利にあったことはたしかであろう。1994年末時点での政策金利は日本が1.75%に対して、米国は5.5%となっていた。これに対して2022年末時点では日本がマイナス0.1%であったのに対し、米国は4.5%となっていた。

 日本企業の株主還元強化で配当収入は増加傾向にあるのに対して、日銀の異常ともいえる金融緩和策を続けてしまったことによる低金利の長期化で、個人の利子収入が大きく落ち込んだ。

 今年に入りやっと政策金利はプラスに転じて、7月には0.25%となったが、米国の5.5%に比較してもかなり低いというか低すぎる。

 金利商品で得られる利子収入と株の配当収入を合算した資産所得は当然ながら個人消費の源泉ともなる。

 日銀の異次元緩和によって、どうして物価が上げられるのか。そのメカニズム自体は不明だったが、それでデフレを解消して景気をよくするというが、そもそも低金利政策が個人消費を抑制させていたのではないのか。

 国債利回りも抑えられ、政府がバラマキを行っても一時的に個人が潤うだけで、個人消費拡大には繋がらない。むしろその原資が国債などで賄われることで将来への不安から消費抑制に動くことも考えられた。

 日銀は金融政策の正常化を淡々とすすめ、物価や景気に見合った金利を形成することで、個人消費の拡大や設備投資への刺激を図ったほうが、よほど健全な経済対策ともなるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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