「うっとうしいだけ」金正恩の“愛娘”登場で国民から反発
昨年11月に初めて公式の場に姿を表した北朝鮮の金正恩総書記の娘、「尊敬するお嬢さま」ことキム・ジュエさん。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の創建記念日を祝う宴会や閲兵式(軍事パレード)にも姿を表しているが、彼女の登場により、国民の間で不協和音が生じる事態となっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、定州(チョンジュ)市安全部が、「ジュエ」という名前を持った女性を呼び出し、改名を命じたと伝えた。情報筋の住む人民班(町内会)にも、12歳のジュエさんがいるが、両親は安全部に呼び出され改名と出生証(出生届)の取り換えを強いられたとのことだ。
今回の措置は、現場の忖度ではなく実際に具体的な指示を受けたもののようだ。安全部の幹部は、最高尊厳(金正恩氏)の「尊敬するお嬢さま」と同じ名前を持つ者を改名させよと内部で指示があったと語ったという。なお、北朝鮮は「お嬢さま」の名前を公式には発表していないが、国民には改名令の形で伝えられることになった。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋も、平城(ピョンソン)市安全部が同様の指示を出し、1週間以内に名前を買えよとの中央からの指示を人民班長を通じて伝達したと述べた。
情報筋はまた「一部の住民は『誰が最高尊厳の娘の名前が“ジュエ”であると知りながら、自分の娘に同じ名前を付けるものか』と言って、改名を強制する当局のやり方をうっとうしがっている」と話している。
もちろん、こうした発言は内々のものだ。こんなことを大っぴらに言って当局にバレたら、どんな酷い目に遭わされるかわかったものではない。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
北朝鮮で改名の強制は、これが初めてではない。
金正恩氏が朝鮮労働党中央委員会候補者に推戴された後の2011年1月、金正日総書記は党機関や保衛部に命じて、「キム・ジョンウン」という名前を持つ者を探し出し、改名するよう指示を出したと、韓国のKBSが報じている。
また、金正日氏が党の唯一思想体系を打ち出した1974年、「キム・イルソン」という名前を持つ者に改名を命じている。1980年には「キム・ジョンイル」氏改名令も出されている。
社会科学院チュチェ(主体)経済研究所のキム・ジョンギ元副所長は、元々「キム・ジョンイル」という名前で、後に総書記となる金正日氏と大学時代に同姓同名の親しい友人だったが、1980年に改名命令を受け、自身の論文や著書がすべて回収され焼却処分されたという。