MLB史上初の女性GMが誕生! その手腕が評価されながら15年越しで頂点に登り詰めたアシスタント人生
【MLB史上初の女性GMが誕生】
マーリンズは現地時間の11月13日、これまでMLBでベースボール・オペレーション担当副社長を務めてきたキム・アング氏のGM就任を発表した。
この結果、MLBのみならず北米の男子プロチームで、初の女性GMが誕生することになった。まさに歴史的快挙となった。
GM就任にあたり、アング氏は以下のような声明を発表している。
「インターンとしてMLBの世界に飛び込んでから数十年間の従事の末、次期GMとしてマーリンズを導くことを光栄に思います。我々は南フロリダの地に長期にわたり、ここ数年成功の土台を築き上げてきた才能溢れ、献身的なスタッフとともに、前向きで、協力的かつ創造的なオペレーション組織を築いていきたいと思います」
【球界で史上最年少記録を樹立した実力派】
今月52歳を迎えるアング氏は、実はMLBに携わった人にとっては超有名な人物だった。むしろ彼女のGM就任が遅すぎたと考える人も少なくないはずだ。
彼女の声明にあるように、1990年にシカゴ大学卒業と同時にインターンとしてホワイトソックスで働き始め、翌年から正式なチームスタッフとして迎えられた。
その後、当時のロン・シューラーGMに見出され、ベースボール・オペレーション担当の副部長に抜擢され、1995年にはMLB史上最年少かつ史上初の女性スタッフとして年俸調停を担当している(結果はチームが勝訴している)。
1996年でホワイトソックスを離れた後、1997年はア・リーグ事務所(現在はMLBに統合)に所属した後、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMに誘われ、1998年に同じく史上最年少でアシスタントGMに就任。女性が同職につくのは史上4人目のことだった。
ヤンキースではキャッシュマンGMを補佐し、1999年からワールドシリーズ3連覇に助力。この頃からアング氏の存在が、球界に広く知れ渡るようになった。
【複数チームで次期GM候補に】
ヤンキースでの実績が評価され、ドジャースにヘッドハンティングされた彼女は、2002年に同チームで副社長兼アシスタントGMに就任。2005年に当時のポール・デポデスタGMが解任されると、アング氏も次期GM候補の1人として面接を受けることになった。
結果的にネッド・コレッティ氏がGMに任命され、アング氏は引き続きアシスタントGMを務めることになったが、その後も彼女の存在は評価され続け、次期GM候補としてマリナーズ、パドレス、エンジェルス、ジャイアンツの面接を受けていたが、結局GMの座を射止めることができなかった。
そしてドジャースで監督を務めていたジョー・トーリ氏が2011年にMLBのオペレーション担当の上席副社長に就任すると、彼の補佐役としてアング氏もMLBオフィス入りし、現在に至っていた。
アング氏のキャリアを見てもわかるように、ずっと評価されながら常にアシスタントGMの座に甘んじてきたわけだ。ドジャースで初めて次期GM候補として面接を受けてからマーリンズGMに就任するまで、実に15年の歳月が流れてしまった。
【アング氏の手腕に期待】
ヤンキース、ドジャースの名門チームで長年にわたりアシスタントGMを務めたアング氏の実績は申し分ないものだ。今後は補佐役ではなく、リーダーとしてどこまで手腕を振るえるかにかかっている。
彼女がヤンキース在籍時に主力選手だった、マーリンズのデレック・ジーターCEOが、歴史的快挙を実現した立役者になったようだ。
ジーター氏の投資グループが2017年にマーリンズを買収したのと同時に、選手の大幅な人員整理を断行し、地元ファンから猛批判を浴びてきた。主力選手を失ったチームも、2018、2019年と地区最下位に終わっていた。
現在も年俸額を抑えたまま若手中心のチーム構成に変わりないが、2020年シーズンは31勝29敗と勝ち越しに成功し、17年ぶりにポストシーズン進出を決め、ドン・マッティングリー監督も最優秀監督に選出されている。
今後さらにマーリンズが強豪チームになっていくためにも、アング氏の手腕に期待したいところだ。