仰天!樹木が排出するメタンガスが地球を温暖化していた?
京都府北部の南丹市美山町にある芦生の森を訪れる機会を得た。
ここには京都大学フィールド科学研究センターの研究林が設置されている。
芦生研究林は、1921年に学術研究および実地演習を目的として、旧知井村の共有林の一部に99年間の地上権を設定した。つまり今年は100周年なのだ。
その森の中で、不思議なものを見つけた。写真にあるような、樹木の幹に取り付けられたプラスチックの箱?囲み?である。
たまたまいた外国人研究者によると、樹木が放出しているメタンガスを計測しているのだそうだ。詳しいことは聞けなかったが、 森はさまざまな研究に利用されていることを目にしたのである。
ただ樹木とメタンガスという組み合わせは、ちょっと意外だ。樹木は酸素や二酸化炭素だけでなく、メタンも排出しているのか? メタンは、二酸化炭素の次に地球温暖化への影響が大きな温室効果ガスである。しかも二酸化炭素の28~86倍もの温室効果を持つとされる。
そこで思い出したのは、科学誌「フロンティアーズインフォレスト アンド グローバルチェンジ frontiers in Forests and Global Change」の2021年3月11日号に掲載されていた「アマゾンの熱帯雨林は地球の温暖化を助長している可能性が高い」という論文だ。
記されているのは、アマゾンは気候変動を引き起こす温室効果ガスを吸収するより排出の方が多いのではないか、という研究だ。そして、ここでいう温室効果ガスには、二酸化炭素だけでなくメタンも含まれたので記憶に残ったのだ。
すでに私は
という記事を書いているが、そこにメタンも加わるのなら、より深刻な事態だ。
そもそも樹木がメタンを排出するとはどういうことか。
実は、そのこと自体は100年以上前から知られていた。1907年に、米カンザス大学のブジョン教授が、メタンが樹木に含まれており、排出していることを発見している。
これまでは、土壌細菌が大気中のメタンを吸収していると考えられてきた。根から酸素が運ばれるときに一緒にメタンが吸い上げられ、樹木から放出されるとしたら、メタンの総量は増えない。しかし今では、木の中にいる微生物や、樹木が紫外線を浴びたときの光化学反応によって、樹木自体もメタンを生成していることがわかってきた。
そして木から放出されるメタンの量は、再び吸収されたり微生物に分解されたりする量を上回っている可能性があると指摘されたのである。
大気中のメタン濃度は、1750年以来現在まで、700ppbから1800ppb へと250%以上も上昇している。その原因は、天然ガスなど地下資源の採掘や、飼育するウシなどの反芻動物が消化する過程で吐き出されるものだとされてきた。また森林が洪水などで水没した時に、腐敗した植物や土壌の有機物から発生することも考えられた。
しかし森林自体がメタンを生成・排出するとなるとしたら、由々しき事態だ。全世界で発生するメタンの約3.5%が、アマゾンの樹木から発生しているという研究もある。
果たして芦生の森でも、樹木の出すメタンはどれほど計測されたのだろうか。アマゾンだけでなく温帯の森林もメタンを放出するとなると、まさに森林そのものが気候変動に関わっていることになるかもしれない。
これらの研究結果がどのような意味を持つのか、私には十分理解できない。ただ温室効果ガスと一口に言っても、その発生源や吸収源に関しては、まだまだわからないことが多い。森林が地球環境に与える影響に関して、もしかしたら人類は大きな勘違いをしていた可能性もある……。
安易に森林は「温室効果ガスの吸収源」とか「地球の肺」などと言ってもよいのか戸惑ってしまう。少なくとも森林をあまり神聖視しない方がよいのではなかろうか。