1件あたり5056円 損保会社がゲットする自賠責の「社費」に 各界から「知らなかった!」の声
7月27日、ビッグモーターの保険金不正請求問題を受け、私は自動車のアフターマーケットに詳しい、株式会社ジェイシーレゾナンス代表取締役社長の松永博司氏にインタビューさせていただき、以下の記事を『JBpress』にて発信しました。
この記事は同日、Yahoo!ニュースにも配信され、多くの方が読んでくださいました(こちらの記事にはコメント欄があり、さまざまな意見が投稿されています)。
上記記事で私が訴えたかったことは、以下の4点です。
1)今回の不正問題において損保会社は「被害者」ではない
2)自賠責契約は損保会社にとって粗利の高い美味しい保険である
3)損保による入庫誘導の指針は、「技術力」ではなく「保険販売件数」
4)修理業者と保険販売は本来切り離すべき
つまり、この問題の根底には「自賠責保険の粗利の高さ」があること。そして、損保会社が自賠責の契約奪取を優先するあまり、契約者不在の業界構造が構築され、その結果、こうした問題が露呈したのではないか、という見解です。
■自賠責契約時に発生する損保会社の「社費」とは?
私はこの記事の中で、自賠責保険契約時に代理店に支払われる「手数料」と、損保会社に支払われる「社費」について触れました。
以下が、1契約当たりの金額です。
●代理店手数料 1735円
●社費 5056円(営業費3481円+損害調査費1575円)
つまり、損保会社には自賠責保険の契約を引き受けるごとに、営業費や損害調査費という名目で「社費」という手数料が入るシステムになっているのです。
上記記事でも書きましたが、損害保険料率算出機構によれば、この社費は年間2000億円を超えており、大変大きな額であることがわかります。社費がどのように使われているのか、その実態はよくわからないのですが、私は以前から「社費」が高すぎるのではないかという疑問を投げかけていました。
また、代理店から受け取った保険料は、一定期間損保会社でプールされており、そこから発生する運用益等も損保にとっては美味しいのでは、という指摘もあるのです。
こうした数字を公開したところ、各方面から多くの反響がありました。一般のドライバーからは、損保会社の社費の高さに驚く声が。また、自賠責保険を扱う保険代理店や、損保会社の方からも、「社費の存在を知らなかった」という意外な声が寄せられたのです。
7月31日には、古舘伊知郎さんのYouTubeチャンネルで本記事をご紹介いただき、『ビッグモーターと損保会社のズブズブの関係。事故車修理の見積もりはノーチェックで通す「完全査定レス」』という大変わかりやすい動画が公開されています。(*自賠責問題は、2:48あたりからです)
■損保会社に「利益」はない?
自賠責保険は、公道を走るすべての車やバイクに加入が義務付けられている対人保険です。日本損害保険協会(以下損保協会)のサイトには、こう書かれています。
自賠責保険は、交通事故による被害者を救済するため法律に基づき、すべての自動車に加入することが義務付けられている強制保険です。したがって、原動機付自転車なども対象になっています。
被害者救済のために国が運営するこの保険は「ノーロス、ノープロフィット」といって、赤字も黒字も出さないことになっており、この保険による利益は基本的には発生しないことが前提です。
さらに同サイトには、こう記されています。
この表記のおかしさに真正面から切り込んだ方もおられます。
以下は、自動車業界で35年間お仕事をされてきた、ホンダカーズ野崎 (野崎ホンダ株式会社)の店長・松本正美さんが発信された動画です。『ビッグモーターの騒動で自賠責保険の闇が明らかに?』と題し、自身のYouTubeチャンネルで、8月13日に発信されています。
この動画の中には、松本さんが損保協会に直接電話をし、質問をぶつけた際のやり取りも収録されていますので、ぜひご覧ください。
たしかに、自賠責保険は赤字も黒字も出さないことが前提の保険ですので、この保険による「利益」は損保会社にもたらさない、というのが建前かもしれません。しかし今回、代理店手数料よりはるかに高額の「社費」の存在を初めて知った方々が、こうした表記に疑念を抱くのは当然のことかもしれません。
損保各社は、不正に請求された保険金の返還や、今回の件で生じた調査費用などについて、ビッグモーター社に損害賠償の請求を検討しているそうです。しかし、繰り返し指摘していますが、損保会社は本当に「被害者」なのでしょうか?
特に、ビッグモーター社との濃密な関係が指摘されている損保ジャパンには、ぜひ記者会見を開き、こうした疑問について答えていただきたいと思います。
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