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「いつもの薬」は自宅で受け取り可能 新型コロナの臨時的措置で

高垣育薬剤師ライター、国際中医専門員
(写真:アフロ)

非常事態宣言が出され、外出自粛がますます厳しく求められています。こうした状況だと必要な外出とはいえ「いつもの薬」をもらうための通院も、できれば避けたいと考える人もいるのではないでしょうか。そんな場合は、電話などでかかりつけのクリニックなどを受診し、自宅で薬を受け取る仕組みを活用すると良いかもしれません。

電話等での受診、自宅での薬受け取りができる対象は「定期的に受診している人」

外出自粛が始まってからも通院を続けていた人のなかには「電話で受診して、家で薬を受け取れるなんて知らなかった」という人もいるかもしれません。

この臨時的な措置は、今年2月28日に新型コロナウイルス感染拡大を防止する目的で厚生労働省から発出された事務連絡に基づきます。対象となるのは慢性疾患などで定期的に通院している人です。なお、来週からは初診の人でも、電話やインターネットを使って自宅で診察を受けられる「オンライン診療」の利用が可能になります。

医療機関に出かけることなく、自宅にいながら電話で診察を受けて、薬を受け取ることが可能なこの仕組みを利用すれば、通院のための外出や、病院、薬局での感染のリスクを避けることにもつながりそうです。

新型コロナウイルス感染症にかかると重症化しやすいとされる高齢の人、「糖尿病」「心不全」「呼吸器疾患(COPD等)」などの疾患がある人、免疫抑制剤や抗がん剤などを使用している人にとっては 、この臨時的な措置の活用は感染予防に努めながら、安心して薬物治療を続けるための良い選択肢となるのではないでしょうか。

通院せずに自宅で薬を受け取るまでの5つのステップ

さて、通院することなく自宅で薬を受け取るという仕組みですが、いったいどんな手順が必要なのでしょうか。受診から薬受け取りまでの流れを見てみましょう。

「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」を参照し筆者作成
「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」を参照し筆者作成

もう少し詳しく見ていきましょう。

  1. かかりつけのクリニックや病院に電話します。新型コロナ対策として電話などでの受診が可能かどうかを尋ねましょう。
  2. 可能だった場合には、電話やインターネットなどを使った診察が行われます。ご自身の現在の体調を医師に伝えやすいように、たとえば血圧手帳などの健康状態を記録したデータがある場合は手元に準備しておくと良いでしょう。
  3. 病院から普段利用している薬局へ処方箋のデータを送ってもらいましょう。もし処方箋のデータを一旦自分で受け取りたい場合は、その旨を病院伝えて送信してもらいます。その後、ご自身で薬局に処方箋のデータを送りましょう。
  4. 薬剤師が電話などでご自宅に連絡し、お薬の服用状況や体調などについて伺います。もしほかに飲んでいるお薬がある場合はお薬手帳を手元に準備しておき、薬剤師に伝えてください。
  5. 薬局から自宅へお薬が届きます。

なお、お会計の方法(次回に支払いで良いのか、振り込みなのかなど)や、薬のお届けの方法(近所の場合はポストに入れたり玄関で手渡しする、遠方の場合は郵送するなど)といった細かな点は病院や薬局によって対応が異なると考えられますので、受診する病院などに確認してみてください。

受診せずに自宅で薬をもらうときの注意事項

薬を薬局スタッフによる配達や郵送などで受け取る場合、ひとつ気をつけたいのが「電話などでの受診は早めに」ということです。なぜなら、薬局に直接処方箋を持参してその場で薬をもらうのとは異なり、配送の場合は薬局での薬の発送準備や配達などにより、自宅への到着までに数日かかる場合があるからです。

薬が届く前に手持ちがなくなって大切な薬を飲まずにいる期間が出てしまわないように、手持ちに余裕があるタイミングで受診するようにすることが大切です。

来週からは、定期的に通院する人だけではなく、初診の人でも自宅でオンライン診療を受けられる仕組みが始まります。薬についても、電話などで薬剤師の服薬指導を受け、配送等により自宅で受け取ることが可能になります。

感染予防のためにこうした仕組みを上手に活用し、安全にそして安心して薬による治療を続けていきたいですね。

【参照】

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について

新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて

新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)

薬剤師ライター、国際中医専門員

2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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