携帯アプリの説明書は長文すぎて無駄だ。33個に32時間。ノルウェー消費者センターが挑戦し話題に
あなたは説明書を読む?読まない?
スマートフォンのアプリの取扱説明書を、小さなスクリーン上で、皆さんはどれだけしっかりと読んでいるだろうか?
現代の説明書は、長文過ぎて、消費者にとってユーザーフレンドリーとは言い難い。
ノルウェーの消費者センターは、長すぎる使用許諾書、規約、契約内容がどれほど無駄でバカバカしいかを証明するために、ネットの生放送で説明書を実際に読んでみることにした。
スローテレビの読書マラソン
世界的にも話題となった、同じような風景をひたすらと放送し続けるノルウェーの「スローテレビ」を真似した形式だ。結果、33個の人気アプリの説明書を読むためには32時間を要することが判明した(実際にかかった時間は31時間49分11秒)。
ノルウェー人は平均で33個のアプリを使用している。33個のアプリの使用方法とプライバシー保護に関する説明書は900ページ、25万以上の文字数に及ぶ。ハッシュタグ「#appfail」を付けて、消費者センターはツイッターで状況を中継。ノルウェーの有名な政治家たちにも参加してもらい、ひとりひとりが長~いアプリの説明書を丁寧に読み上げた。
読み上げられた内容はつまらなく、筆者もすぐに放送を見ていて飽きてしまった。恐らく読んでいる本人たちも、つまらなかっただろう。
政治家も巻き込んで、わかりにくい説明書を体感してもらう
企画には、人気のある政治家たちも参加した。国会議員や、将来政治家となるであろう各政党の青年部リーダーたちを巻き込むことで、将来の政策や法律改正に、今回の体験が生かされるかもしれない。民主主義にこだわりが強いノルウェーでは、「わかりにくい情報」は、「一部の人の社会参加の疎外につながり、民主主義的ではない」と考える傾向がある。消費者センターの戦略だろう。
読み上げられたアプリは、フェイスブック、ツイッター、スナップチャット、インスタグラム、スカイプ、YouTube、Gmail、アングリーバードなどに加えて、ノルウェー国営放送局などの報道機関、公共交通機関、大手銀行の人気アプリも含まれた。この変わった試みは、BBCなどでも報道される。
BBCNorway consumer body stages live app terms reading
多くの若者が利用するアプリだが、個人情報や写真の流失などが問題視されることが多くなった。しかし、今回の結果で、長すぎて分かりにくい取扱説明書にも問題があることを、大人たちは体感しただろう。アプリの製作企業は、簡潔で、分かりやすい説明書を提供することで、若者たちのスマホトラブルを未然に防ぐことができるかもしれない。消費者センターの訴えは、企業に届くだろうか。
Text: Asaki Abumi