WHIPはメジャー歴代3位の0.772! 菊池雄星が投げ合うバーランダーの凄さ
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kiyoshimio/00141706/top_image.jpeg?exp=10800)
今日、9月7日(日本時間8日)のヒューストン・アストロズ戦に先発登板するシアトル・マリナーズの菊池雄星。この試合で菊池はメジャーを代表する投手のジャスティン・バーランダーと投げ合うことになる。
![ノーヒットノーラン達成回数ランキング(Baseball Referenceのデータをもとに筆者作成)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kiyoshimio/00141706/image01.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
前回の先発登板(9月1日(日本時間2日)のトロント・ブルージェイズ戦)では、自身通算3度目となるノーヒットノーランを達成したバーランダー。通算3度以上のノーヒッター達成はメジャー史上6人目の快挙で、メジャー歴代最多の5714個もの三振を奪ったノーラン・ライアンやメジャー歴代トップの通算511勝を記録したサイ・ヤングなどメジャー史に名前を残す大投手たちの仲間入りを果たした。
また、過去2度のノーヒットノーランはデトロイト・タイガース在籍時のもので、複数球団での無安打無得点試合達成は野茂英雄(ロサンゼルス・ドジャースとボストン・レッドソックスで達成)らに続いてメジャー史上8人目の快挙。
![シーズン250奪三振以上達成回数ランキング(Baseball Referenceのデータをもとに筆者作成)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kiyoshimio/00141706/image02.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
今季はここまで29試合に先発登板して、17勝5敗、防御率2.56、257奪三振を記録。勝利数、防御率、投球回数は堂々のリーグトップに君臨している。
バーランダーは今季を含めて、シーズン250奪三振以上を5度達成しているが、これもメジャー史上5人目の快挙である。
![過去に5度も奪三振王に輝いているバーランダーは、今季自身6度目の奪三振王も狙う(三尾圭撮影)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kiyoshimio/00141706/image06.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
メジャー15年目のシーズンを迎えるバーランダーは数々の通算ランキングで上位に入ってくるが、驚くのは36歳の今季、自己最高とも呼べるシーズンを送っていることだ。
投手の力量を示すスタッツの1つにWHIPと言うものがある。これはイニングごとに許した走者数を表すデータで、(被安打+与四球)÷投球回数で算出される。
![シーズン・ベストWHIPランキング(Baseball Referenceのデータをもとに筆者作成)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kiyoshimio/00141706/image03.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
リーグ平均が1.30、1.10を下回ると「優秀」、1.00以下は「非常に優秀」というのがWHIPの目安だが、今季ここまでバーランダーが記録している0.772は信じられない数字。100年以上の歴史を誇るメジャーリーグでもシーズンのWHIPが0.8を下回ったケースはこれまで3度しかない。
WHIPを下げるには安打を打たれない圧倒的な投球に、四球を与えない精密な制球力が備わっていないといけない。バーランダーはリーグ2位の奪三振を誇る球威と、リーグ最高の9イニングあたりの与四球数が1.6というコントロールを兼ね備えている。9イニングあたりの被安打数5.3もリーグトップの数字だ。
![打者を制圧する球威と抜群の制球力を兼ね備えるバーランダー(三尾圭撮影)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kiyoshimio/00141706/image05.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
フォーシーム(平均球速94.6マイル=152.2キロ)、スライダー(87.5マイル=140.8キロ)、カーブ(79.4マイル=127.8キロ)、チェンジアップ(87.0マイル=140.0キロ)の4つの球種を投げ分けるが、投球の半分(50.3%)はフォーシーム。
メジャーの先発投手が投げるフォーシームの平均球速は92.9マイル(149.5キロ)なので、バーランダーの速球は特別に速いわけではない(今季、フォーシームを200球以上投げたメジャーの先発投手の中では31位)。スピードこそ目を惹くものはないが、回転数はメジャー2位の2577回転を誇るので(メジャーの先発投手の平均は2274回転)、打者を抑えられる。バーランダーのフォーシームの被打率は.213とほとんど打たれていない。平均リリースポイントはメジャーで最も高い6.99フィート(213.0センチ)なので、ボールの回転数が高いだけでなく、角度も付いている。
対照的なのが菊池で、フォーシームの平均球速は92.5マイル(148.9キロ)とメジャー平均よりやや遅く、平均回転数は2102回転(メジャーの先発投手で150位)なので、打者にとっては打ちごろの球となり、被打率.329と打ち込まれている。平均リリースポイントもバーランダーより1フィート(30.5センチ)以上も低い5.89フィート(179.5センチ)で、打者はフラットなイメージでボールを捉えられる。
![メジャーで最も高い213センチの高さから投げ下ろされるバーランダーのフォーシーム(三尾圭撮影)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kiyoshimio/00141706/image04.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平が「(お金を)いくら払ってでも(対戦を)経験する価値がある。それくらい素晴らしい投手」と特別視するバーランダー。「球種のレベルがどの投手よりも1ランク、2ランク高い」と大谷は言うが、その中でもフォーシームは要注意だ。
菊池は打席に立って直接バーランダーと対決はしないが、バーランダーは大きな壁となって立ちはだかる。今季7勝目を手にするにはバーランダーを上回る投球をしなくてはならない。
リーグで下から3番目の低チーム打率(.241)のマリナーズ打線が、バーランダーの2試合連続ノーヒッターの餌食になっても不思議ではない。バーランダーは今季4回マリナーズ戦に先発して、被打率.179、23.1イニングを投げて33奪三振とマリナーズ打線を封じている。
もしも、菊池がバーランダー相手に金星を挙げられれば、不完全燃焼なメジャー1年目にあって、来季に繋がる大きな自信も得ることだろう。