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トランプ大統領は本物のバカなのか? 在韓米軍を撤退させると指令したという“衝撃報道”が!

山田順作家、ジャーナリスト
もはや言い逃れはできないということか?(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ大統領が在韓米軍の縮小を指示したと『NYタイムズ』紙(Trump Orders Pentagon to Consider Reducing U.S. Forces in South Korea, May 3, 2018)が報道したことで、大騒ぎになっている。これが米朝首脳会談を前にしたトランプの“ロケットマン”金正恩へのメッセージなら、米朝首脳会談は日本にとって最悪の結末になるからだ。

 

 アメリカがベトナム戦争に嫌気がさして撤退し、その後、フィリピンからも撤退したことで、アジアでなにが起こったか?

 ベトナムは「北」(ハノイ)の共産政権のものになり、いまや南シナ海は中国の“内海”になってしまった。それ以前、朝鮮戦争で北朝鮮・中国(バックにスターリンのソ連)と休戦したことで、この両国を生き延びさせ、冷戦を固定化させてしまった。この歴史の教訓から言えば、もし米軍が朝鮮半島から引けば、朝鮮半島はやがてベトナムのように「北」(平壌)によって統一されてしまうだろう。

 ロケットマンは北京に出向き、習近平“皇帝”を「兄」として恭順の意を示した。となれば、中国の勢力は朝鮮半島全域に及び、東シナ海も内海になってしまう可能性がある。

 アメリカというのは、本当に“お人好し国家”である。

 この“お人好し”の伝統をもっとも受け継いでいるのが、自身を「(情緒が)安定した天才」(a very stable genius)と思っているトランプではなかろうか。

 トランプは「ディール」(取引)に臨んで、ラストベルトの貧困白人を救うことと自分の名誉欲を満足させること以外に考えていないようだ。彼の言う「アメリカ・ファースト」は、第29代大統領ウォーレン・ハーディングのスローガンのパクリだが、その内容はまったく違う。そろそろ、「Make America Great Again」から「MAGA」のロゴ入りTシャツを着ているトランプ・サポーターは、Tシャツを脱ぎ捨てるべきではないか。

 あきれたことに、そんな大統領を、5月2日、共和党議員18人がノルウェー・ノーベル賞委員会にノーベル平和賞の候補に推薦する書簡を送付した。主導したのはインディアナ州選出の下院議員ルーク・メッサー。トランプに対してわざと嫌がらせをした(書簡を送付することで候補から外す)と信じたいが、トランプ自身は完全に舞い上がっている。

 4月28日のミシガン州の支持者集会で“ノーベル賞コール”を受けると、親指を立て、満面の笑みを浮かべて「やるべきことをやっていくだけだ」と言ったし、韓国大統領の文在寅が「ノーベル賞はトランプ大統領が受け取ればいい」と言ったと報道されると、即座に「ありがたいが重要なことはやり遂げることだ」(I appreciate it but the main thing is to get it done)と言う始末である。

 この調子だと、「非核化」と「在韓米軍撤退」を本当に取引しかねない。

 ただし、だいたいにおいて、トランプはウソつきである。だから、前言撤回もあるし、ウソの上塗りもある。その典型が、5月3日に、ストーミー・ダニエルズへの口止め料13万ドルを、立て替えていた弁護士に月ごとの報酬というかたちで払い戻していたことを認めたことだ。そもそも、セックスがあったことすら否定していたのに、これはおかしい。当然だが、サラ・サンダース報道官は、会見で記者に吊るし上げられた。

 北朝鮮ではメディアはすべてフェイクニュースだが、アメリカは違う。最近では、ファクトチェックが徹底して行われている。

 トランプがこれまでどれだけウソをついてきたか、『ワシントンポスト』紙がズバリと指摘した。5月2日の記事(President Trump has made 3,001 false or misleading claims so far)によると、トランプは就任から今年4月末までに、ウソや誤った主張を3001回も行い、平均すると1日6.5回に上るという。

 たとえば、トランプは、自身がアメリカ史上最大の減税を行ったと72回も自慢したが、実際の減税規模は史上8番目だった。(Seventy-two times, the president has falsely claimed he passed the biggest tax cut in history---when in fact it ranks in eighth place.)

 また、メキシコ国境で壁を建設するのは、違法薬物の流入防止に必要なためだと34回訴えたが、麻薬取締局によると、密売人は地下トンネルを通ってくるため壁では防げないという。(Thirty-four times, the president has wrongly asserted that a border wall was needed to stop the flow of drugs across the southern border, even though the Drug Enforcement Administration says a wall would not limit this illegal trade, as much of it travels through legal borders or under tunnels unaffected by any possible physical barrier.)

 減税に関してさらに言うと、もともとアメリカというのは所得税を違憲として建国された国である。それが、南北戦争の戦費調達のために仕方なく導入されたのだから、トランプが自身の減税を自慢するのはどうかしているとしか言いようがない。

 なにしろ、そんなウソを72回も繰り返したのだから、トランプは本当にバカなのか、あるいはバカであることを誇りにしているかのどちらかだろう。

 トランプが本物のバカであるかどうかには諸説あるが、4月30日に『NBC』が報じたニュースは衝撃的だった。なんと、ホワイトハウスの職員を統括する立場にあるジョン・ケリー大統領首席補佐官が、トランプのことを裏では「idiot」(バカ)と呼んでいたというからだ。

 これは、3月に解任されたレックス・ティラーソン前国務長官が、同じく「moron」(バカ)と呼んでいたことに匹敵する大ニュースだった。

 英語でも、日本語と同じように「バカ」を意味する言葉は数多くある。一般的には、「fool」(フール)や「stupid」(スチュピッド)が多く使われるが、「idiot」(イディオ)や「moron」(モーラン)となると、バカはバカでも意味としてはきつい。「idiot」は足りていないというような意味でのバカ、「moron」は知能が大人のレベルに達していないようなバカだからだ。

 いずれにせよ、こんな“おバカ老人”と、身内を殺すのをなんとも思わない“独裁若造”が、史上初の会談を行うのである。

 

 現在、日本のメディアの多くは、南北宥和にすっかり酔いしれ、日本が「蚊帳の外」に置かれたことを批判している。しかし、北朝鮮と日本はなにを取引できるのだろうか?

 “金王朝”は人権無視、国際法無視でトランプも「ならず者国家」(rouge nation)と呼んだ国である。恐怖と暴力で国民を支配している体制を温存させること自体、間違っていないか。

 拉致問題を解決する絶好のチャンスといっても、にわかに信じがたい。もし、そうだとしても、莫大な額の解決金を要求されるわけで、それを飲むような日本なら、「蚊帳の外」のほうがマシではないのか。

 むしろ、損害賠償は、私たちの同胞を拉致した北朝鮮が払うのが当然であろう。

 トランプは、昨年9月の国連総会で、北朝鮮がこれ以上、核とミサイルによる挑発を続けるなら、「世界がこれまで目にしたことがないような炎と怒り(fire and fury)に直面することになる」と演説した。同じことを、この4月にも繰り返している。しかし、そんなことはすっかり忘れてしまったのだろうか?

 

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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