検察はTOKIOメンバーによる強制わいせつ事件の刑事処分をどうするか
アイドルグループ・TOKIOのベーシスト(46)が強制わいせつの容疑で送検された。こうした事案に対し、検察はどのように判断し、いかなる刑事処分を下すか――
報道によれば、今年2月、東京都内の自宅マンションで、女子高校生に対し、酒を勧めた上、両手で身体を押さえつけ、無理やりキスをしたとされる。容疑を認めているという。
もしこれが事実であれば、強制わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)が成立する。しかし、事件後、被害者側と示談が成立し、既に被害届も取り下げられているとのことだ。
この点、性犯罪の厳罰化が図られた昨年の刑法改正で、強制わいせつ罪は被害者の告訴がなくても起訴できるようになった。これを「非親告罪化」と呼ぶ。
だからといって、その意向に反するような事件処理が行われるわけではない。結局のところ、事件化や起訴には被害者の協力や詳細な事情聴取が不可欠だし、裁判になれば法廷で証言してもらうこともあり得るからだ。
現に法務省は、先ほどの刑法改正に伴い、刑事局長名で全国の検察庁に通達を出し、次のような留意事項を示している。
「性犯罪については、もとより、被害者のプライバシー等の保護が特に重要であり、事件の処分等に当たっても被害者の心情に配盧することが必要であることは、強姦罪等を非親告罪化した後も変わるものではない」
「したがって、本法施行後においても、引き続き、事件の処分に当たって被害者の意思を丁寧に確認するなど被害者の心情に適切に配慮する必要があることに留意されたい」
検察の現場は、この通達に沿って性犯罪の捜査や処分を決している。
確かに、被害者が10代であることや、自宅に招いて酒を勧めたこと、2011年に無免許運転や進路変更禁止違反で検挙されていること(前者は不起訴、後者は略式起訴で罰金)など、被疑者にとって不利な事情もある。
しかし、既に被疑者と被害者との間で示談がとりまとめられ、被害届も取り下げられている。
被害者が被疑者の処罰を全く望まず、これ以上騒がれたくない、ということであれば、被疑者を起訴することなどない。
ただし、強制わいせつ罪という犯罪が成立するのは確かだから、不起訴といっても、「起訴猶予」という結論になるはずだ。
今後の捜査は、検察官が被害者やその親らの事情聴取を行い、処罰感情の最終確認を行った上で、被疑者を取り調べ、猛省を促す、といった程度だ。
それこそ1週間もあればできるが、事態の沈静化を図るため、少し時間を置き、タイミングを見ながら被疑者の処分を決することだろう。
なお、未成年者飲酒禁止法で立件される可能性を指摘する報道もある。
しかし、この法律は、未成年者が飲酒することを知りながら酒類を販売・供与した酒屋やコンビニ、飲食店などのほか、その飲酒を知って制止しなかった親権者や監督代行者のみを処罰の対象としている。
TV番組で知り合っただけの関係である以上、たとえ未成年者に酒を勧めていたとしても、この法律で処罰することはできない。
社会的・道義的に非難されるべき事件ではあるものの、やはり被害者の意向や心情を第一に考える必要があるだろう。(了)
【参考】