「銀河の果て」を遂に観測!銀河は予想以上に巨大だった
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「銀河は予想以上に巨大であると判明」というテーマで解説していきます。
オーストラリアのスウィンバーン工科大学などの研究チームは、遠方の銀河周辺のガスの分布を初めて連続的に観測することに成功し、銀河と銀河外の境界を明確にしました。
研究チームはその成果を、2024年9月にnatureの論文で公表しています。
●銀河の構成要素と観測方法
○銀河の構成要素
一般的に、銀河という天体はどのような要素から成り立っているでしょうか?
まず銀河の回転速度が予想以上に速いなどの証拠から、人類が観測できないが、質量を持ち重力的な影響を及ぼす物質である「ダークマター」が存在していると考えられています。
ダークマターは、ダークマター以外の「通常の物質」よりも総質量が大きいとされています。
では残る「通常の物質」はどのような形で存在しているでしょうか?
まず思いつくのが膨大な数の「恒星」であり、例えば天の川銀河には1000~4000億個の恒星が含まれていると考えられています。
しかし実のところ、銀河に含まれるダークマター以外の「通常の物質」の総質量のうち70%は、銀河全体を取り巻く薄いガスの層から成るそうです。
このような銀河を取り巻く大質量のガスの層を「銀河周辺物質(CircumGalactic Medium, CGM)」と呼んでいます。
○銀河はどこまで続くのか?
銀河の一部である銀河周辺物質(CGM)と、銀河外、つまり銀河と銀河の間の空間に存在する物質(InterGalactic Medium, IGM)の境界は、これまで非常に曖昧でした。
つまり「どこまで銀河が広がっているのか」が厳密にわかっていなかったのです。
主な原因は、CGMの連続的な観測が極めて困難であるためです。CGM自体が暗いため、ある銀河のCGMを観測する際は、背後のクエーサーの光を利用する必要があります。
クエーサーの光がCGMを通過して地球に届いていた場合、その光に特徴が現れ、クエーサーの手前にCGMが存在していることがわかります。
しかしクエーサーは非常に小さい光源に過ぎないため、CGMの分布は点在的にしか理解できませんでした。
●銀河の果ての観測に成功
オーストラリアのスウィンバーン工科大学などの研究チームは、CGMの分布を連続的に観測することに成功し、さらにCGMとIGMのかなり明確な境界を発見したとして、2024年9月にnatureの論文で研究成果を公表しました。
この成果により、銀河がどこまで広がっているのかを明確に決定することができるようになるかもしれません。
研究チームはハワイにあるケック望遠鏡のKeck Cosmic Web Imager (KCWI)というツールを使って、地球から2億7000万光年彼方にある星形成が活発で明るい銀河「IRAS-08」のCGMを観測しました。
非常に明るい銀河を、最先端の望遠鏡で観測したことで、銀河中心部から10万光年先まで連続的に、ガスの構造を検出することができたのです。
〇明らかになった新事実
最新の研究で判明した新事実として、まず銀河の外部構造の明確な境界線が明らかになったことが挙げられます。
研究者たちはガスが銀河中心部から離れるにつれ、ガス中の水素と酸素の物理的性質が変化することを発見しました。
この変化は、ガスが異なるエネルギー源によって影響を受けていることを示しています。
銀河周辺のガス構造のうち、銀河内の構造であるCGMは、銀河中心部の星形成領域によってガスが影響を受けており、対して銀河外のガス構造であるIGMは、銀河外からの影響を受けていることが判明しました。
このような性質的な差異により、CGMとIGMの境界が、さらに言えば銀河と銀河外空間との境界が初めて観測的に明らかになったと言えます。
また、近隣の銀河との相互作用の段階についても明らかになっています。
IRAS-08から20万光年離れた近所に、IRAS-08の10分の1の質量を持つ別の矮小銀河が存在することがわかっています。
IRAS-08の周辺のガスの観測により、矮小銀河からガスが流入していることが判明しました。
この流入によってIRAS-08の星形成が活発になっている可能性があるものの、IRAS-08と矮小銀河の合体は間近ではないようです。
このような合体段階ではない銀河同士がどのように相互作用しているのかを理解する上で、今回得られたような銀河周囲のガスの詳細な構造や運動の様子の情報が重要になるかもしれません。
さらに広く言えば、銀河が周囲の天体や物質とどのように相互作用し、どのように進化していくのかを理解するために、周囲のガスの情報が非常に重要になる可能性があると言えます。
また、CGMは銀河本体から非常に遠方まで続いている可能性が高いことがわかりましたが、この発見を一般化すると、将来円盤同士が衝突するとされる天の川銀河とアンドロメダ銀河のCGM同士も、既に衝突が始まっている可能性が高いと言えます。
銀河という天体は、それを囲うガス構造も含めると、想像以上に巨大であると改めて理解させてくれるような壮大な新発見を解説させていただきました。