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アウディA7スポーツバックに見る、イマドキのクルマのカタチ。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

先日、アウディのA7スポーツバックがマイナーチェンジを受け、装いを新たにした。これを受けて、横浜のベイサイドマリーナ・ホテルを拠点に試乗会が開催された。A7スポーツバックと、ハイパワーモデルであるRS7スポーツバックの実際の印象等は添付した動画をチェックしていただければ幸いだ。

アウディA7スポーツバックは、同社のミドルクラスサルーンであるA6とフラッグシップサルーンであるA8の間に位置する。つまりボディサイズも装備も豊かなプレミアムクラスの1台である。

しかしこのモデルはスポーツバックという名前が示すように、ハッチバック形状を採用している。通常ハッチバックといえば、コンパクトカーやSUVなどが採用する方式で、リアのゲートが全て開いて室内にアクセスできる構造を持っている。

ハッチバックは通常、大きなサイズのサルーンには採用されない。ハッチバックを採用すると荷室と室内を隔てる隔壁がなくなる。サルーンの場合は、室内と荷室は独立した別個のものとされてきたからだ。

しかし、時代は変わってクルマの価値観も大きく変わってきた。そして同時に、カタチに対しても変化が見られる昨今だ。

A7スポーツバックのライバルとなるのは、メルセデス・ベンツCLSやBMW6シリーズ・グランクーペ。どちらも従来からある定番のミドルクラスサルーンから派生した、「4ドア・クーペ」と呼ばれるジャンルにあるモデルだ。クルマが好きな方ならば、そもそもクーペとは2ドアのボディを指す形状名だと分かるはず。そう、最近はそうした形式に関しても、何でもありで表現されるようになった。いまやクルマの形状を示す言葉すら、マーケティングの要素として使われるようになった。

4ドア・クーペの市場はもともと、メルセデス・ベンツCLSが2006年に開拓した。定番ミドルクラスサルーンのEクラスをベースに、スタイル優先のボディを組み合わせたCLSは当時人気を博し、メルセデス・ベンツはいまCLSを2代目へと進化させている。それほどビジネスになる市場が開拓されたことで、アウディは2011年にA7スポーツバックを投入した。ちなみにBMWが6シリーズ・グランクーペを投入したのは2012年のことだった。

A7スポーツバックが登場する1年前の2010年に、アウディは一つ下のクラスの定番サルーンであるA4をベースにした、A5スポーツバックを送り出し成功を収めた。そうした流れの中からA7スポーツバックは誕生している。

CLSや6シリーズ・グランクーペは、あくまでもトランクルームが独立した形式を取るのに対して、アウディはハッチバック形式とすることで独自の存在感を生み出したといえる。

実際に生活の中で使ってみると、ハッチバックは使いやすい。ゴルフバックを入れたり、自転車を入れたり…そうした使用では確実にトランクルームが独立したモデルよりも使い勝手の面で優れるわけだ。

そうしたハッチバックを、プレミアムクラスのモデルに組み合わせた点がA7スポーツバックの最大の特徴だろう。高級モデルながらも実用性が高く、そしてスポーティな走りも味わえる…という、まさにイマドキの“いいとこ取り”な1台となっている。

それに何より、このクラスの定番サルーンはどうしても“オヤジ臭く”なる傾向にある。そうしたクラスに、クーペ的なフォルムや、スポーティでスタイリッシュなハッチバックのフォルムを持ち込むことで、オヤジ達の“若い気持ち”を刺激するという戦略は見事というしかないだろう。

そして実際にこの市場が想像以上に人気を博しているのだ。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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