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映画業界初・映画「スラムダンク」”約1ヶ月後の座席指定券”を今夜から発売、どれほど異例の試みなのか

小新井涼アニメウォッチャー
(提供:イメージマート)

シリーズ歴代最高興行収入を更新した劇場版「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」、興収170億突破後もまだまだ勢いの止まらない「ONE PIECE FILM RED」、そしていよいよ来週に公開が迫った新海誠監督最新作・映画「すずめの戸締まり」。

未だコロナ禍による制作や興行等への影響はあるものの、今年もアニメ映画が大いに盛り上がっています。

そんな今年の注目作のひとつ・映画「THE FIRST SLAM DUNK」が、前代未聞の試みとして、映画公開の約1ヶ月前から映画館の座席指定券を発売することが発表され、大いに話題となりました。

アニメのみならず、実写も含めた映画業界初となるこの取り組みは、一体どれほど異例の試みなのでしょうか。

■どれほど異例なのか

人気漫画「SLAM DUNK(スラムダンク)」が、原作者・井上雄彦氏を監督・脚本として迎え、およそ四半世紀ぶりに映像化されるということで、世界中のファンから注目を集める映画「THE FIRST SLAM DUNK」。

ただでさえ話題の本作が、来月12月3日に公開を控え発表したのが、全国の上映劇場、及び初日から6日間の各劇場の上映スケジュール※、そしてその座席指定券を、公開約1ヶ月前の今夜、日付が変わって5日0時より販売するという異例の試みでした。

  • ※一部劇場除く

ご存知の通り、通常劇場作品が公開されるにあたり、上映劇場自体は早めに発表されることが多いものの、実際の上映スケジュールが発表されるのは早くても公開1週間前~数日前がほとんど。

更に各上映回の座席指定券の販売に至っては、特別な舞台挨拶やライブビューイング等でない限り、通常、上映の2~3日前、封切に合わせた早期販売時であっても1週間以上前から発売されることはまずありません。

当たり前ですが全ての映画の上映にはスクリーン数(空間)と上映回数(時間)の確保が必要なので、その週の座席の埋まり具合を鑑みて、翌週どの作品をどのくらい上映するのかを、限られた映画館の空間と営業時間の中で各劇場が調整していく必要があります。

そのため、仮に来月何かしらの新作が公開されるとして、その頃他にどんな作品がどんな頻度で上映されていて、各作品でどれだけ座席が埋まりどれほどスクリーン数と上映時間の確保が必要なのか、今の段階では全く予想ができないからです。

今回の取り組みが業界初の試みとなったのは、それだけ”他の上映作品との兼ね合いを考えると実現はまず不可能”と考えられていたことでもあったからなのでしょう。

■実施の背景には

にもかかわらず、今回こうして実現に至った背景には、製作や配給側の熱意はもちろん、なにより実際の興行の場となる映画館側にとって、アニメ映画の存在感と影響力が、以前にも増して大きくなってきていることがあるのではないでしょうか。

通常、興行収入10億円を超えればヒット作とされる邦画興行内において、興収100億超え作品が頻発しているのはもちろん、同じ映画に何度も足を運ぶ熱心なファンのいる作品が、小さい興行規模に対して10億以上の興収を記録することもありました。

そんなアニメ映画に対して、コロナ禍の厳しい時期を経た映画館側が、これまで以上に大きな期待を抱いていることは、特に劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公開時 以降、興行を盛り上げるべく話題作の封切時には、複数のスクリーンを使い数十回以上の上映回数が確保されるようになってきていること等からも窺えます。

こうした背景もあり、ただでさえ映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」や「ONE PIECE FILM RED」も好調の東映作品であることも後押しして、これまでなら“不可能”であった試みも、今回実現するに至ったのではないでしょうか。

業界初の試みだけあり、その影響も今の段階では全く予想が出来ない今回の座席販売。

上映回は後日追加される場合があるとはいえ、1ヶ月前から座席指定券が購入できることで、場合によっては『封切数日前に座席を買おうとしたら売り切れで来週まで鑑賞ができない』、『2回目以降の座席がしばらく取れない』といった事態も無きにしも非ず、なのかもしれません。

反響次第では今後他の劇場作品でも行われ、国内の興行形態が大きく変化するひとつのきっかけにもなり得るだけあり、その実施結果にも要注目です。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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