ディアドラ、エネイブルが出走する英国エクリプスSの展望
今晩の英国G1をJRAでも馬券発売
日本時間の今晩、イギリスのサンダウンパーク競馬場でエクリプスS(G1、芝1マイル1ハロン209ヤード)が行われる。現在、同国のニューマーケットで調教を積んでいる日本馬のディアドラ(牝6歳、栗東・橋田満厩舎)もここに出走を予定しており、JRAでも馬券を発売する。
私は新聞紙上で毎回、海外レースの予想を発表している。結果は過去46戦中26戦を的中。その間、1番人気馬を本命にしたのは14回だけ。また、推奨しなくても皆様、買われる日本馬に◎を打ったのは僅か1回だけ。それだけに日本馬に勝たれるとお手上げとなるケースが多い中、手前味噌ではあるが、外国勢◎ばかりでそれなりの的中率は保っていると思う。
そこで今回は簡単にではあるがエクリプスSの傾向と出走各馬の実績や競馬ぶりを紹介したい。
女王エネイブルに死角はあるか?!
1760年代に活躍した競走馬エクリプスの名を冠したこのレースは1886年に第1回が施行された歴史ある競走で、例年は3歳以上が出走可能。近年は4年前に追加登録をして快勝したホークビルなど、3歳馬の活躍も目立つが、今年は新型コロナウイルス騒動による日程の変更もあって4歳以上に出走条件が変更された。
エクリプスSは毎年、良い馬が出走する事でも有名。大きな理由としては賞金の高さのわりに登録料が安いから。そのため歴代の勝ち馬の名には名馬が並んでおり、今年も例によって好メンバーが揃った。上位人気馬が勝つ傾向にあるのも名馬が出走する事と無関係ではないだろう。
日本のディアドラを除けばまず最も注目を集めるのは何と言ってもエネイブル(牝6歳、J・ゴスデン厩舎)だ。昨年の凱旋門賞(G1)では史上初となる3連覇を目指したが残念ながらヴァルトガイストの2着に敗れた。しかし、そこまで先述の凱旋門賞連覇の他、アメリカのブリーダーズCターフ(G1)や2度のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)など、世界中で数々のビッグレースを含む12連勝。チャレンジしてきたトップクラスの馬達を次々と返り討ちしてみせた。騎乗するのはスーパースターのフランキーことF・デットーリ。彼に言わせると「他の馬より幅がある肉体面と常に落ち着き払っている精神面が彼女の強さ」だそうだ。
そんな絶対女王だが、今回唯一不安があるとすれば昨年の凱旋門賞以来の実戦になる点か。ヨーロッパのビッグレースはそもそも休み明けで結果を残す馬が少ない傾向にあるが、このエクリプスSも同様。過去のデータとしては叩き1、2戦目の馬が有利。今年は新型コロナウイルス騒動でイギリス競馬自体の開幕が遅れたので、心配は不要かもしれないが、果たして今回の出走馬の中で唯一、今年走っていない点がどう出るだろう。
相手候補も虎視眈々
前走プリンスオブウェールズSで4着だったのがジャパン(牡4歳、A・オブライエン厩舎)。昨年シュヴァルグランが挑戦した英インターナショナルSでクリスタルオーシャンやエラーカム、今回も出走を予定しているリーガルリアリティ(牡5歳、M・スタウト厩舎)らを一蹴。長くなるので割愛するがこのレースは他の出走馬も実績馬揃い。価値ある勝利だった。先述した通りプリンスオブウェールズSは敗れたが元々が休み明けは走らないタイプ。使って良くなる馬だけに叩かれて変わってくれば充分に勝負になるだろう。今回は共同馬主である松島正昭氏のキーファーズの勝負服での出走となるようなので、見せ場以上を期待したいものだ。
アイルランドの伯楽オブライエンはもう1頭、マジックワンド(牝5歳)も出走させる。勝ち身に遅いタイプだが、昨年のオーストラリア遠征ではメルボルンC(G1)から中3日で臨んだマッキノンS(G1)を優勝。その後転戦した香港カップ(G1)はウインブライトの2着。今年はアメリカのペガサスWCターフ2着で始動しすでに3戦を消化。G2を勝ってここに臨んでくる。
現地では彼等を抑えてエネイブルの2番人気に支持されそうなのがガイヤース(牡5歳、C・アップルビー厩舎)だ。昨年、凱旋門賞前にドイツでG1を14馬身差で圧勝。しかし、当時から調教師のアップルビーは「精神的にまだ完成手前。本当に強くなったらこんなものではない」と語っていた。
持ち前のスピードを武器にハナへ行き、そのまま押し切るのがこの馬の形。前々走のドバイミレニアムS(G3)は前年の同レースの覇者スポティファイに8馬身半もの差をつけて怪時計で圧勝。その勢いのまま前走のコロネーションC(G1)もレコード勝ち。直後にアスコットゴールドC(G1)3連覇を達成するストラディバリウスにとっては休み明けで距離不足だったといえ、相手にせず。他にもダービー馬アンソニーヴァンダイクやデフォーら実力馬に影も踏ませなかった。指揮官の言う「本当に強くなった」時期が来たのだとすれば、エネイブルにとっては厄介な存在となりそうだ。
リーガルリアリティ(せん5歳、M・スタウト厩舎)は昨年の3着馬。サンダウンパーク競馬場巧者という点は見逃せないが、昨年はこの舞台でG2を3着後、G3といえ楽勝してここに臨んで来たのに対し、今年はアスコットの準重賞で完敗してからの臨戦。一連の一流どころとのパフォーマンスを考慮しても今回は苦戦しそう。バンコク(牡4歳、A・ボールディング厩舎)も実績的に劣る。
日本馬ディアドラは2月サウジアラビアの1戦以来の競馬。その前走はかなり格下相手のレースだっただけに負けたのは正直、残念だった。数段相手が強化されるここでどこまで通用するか?という不安があるが、日本のトップクラスなら世界で通用するのは他馬の例を持ち出すまでもない。発走は日本時間の今夜23時35分。コロナ騒動で現地へ行けないが、日本のテレビ桟敷から応援したい。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)