7日の植田ショックによる東京市場の動きを振り返る
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7日の日本の債券市場はあまり過去に例をみないような動きとなっていた。債券先物は6日の米債が買われ、ナイトセッションの債券先物も買われていたことで、12月限は27銭高の147円17銭で寄り付いた。
つまりこの時点までは6日の氷見野日銀副総裁の講演内容をさほど市場は重視していなかったようである。
7日の債券先物は寄り付きから1銭だけ上昇して、そこから急速に下落ピッチを速めた。これは30年国債入札への警戒感もあったとみられる。
債券市場の地合が悪化しつつあるなかに飛び込んできたのが、植田総裁の参院財政金融委員会での発言であった。年末から来年にかけて「一段とチャレンジングになる」と述べたと伝わった。「年末から」との部分から、12月18、19日での正常化に向けた動きがあるのではとの見方も浮上することとなる。
そういえばと6日の氷見野日銀副総裁の講演内容も再認識された可能性がある。氷見野日銀副総裁が講演で物価動向の説明とともに出口を意識させる発言をしていたのである。それに総裁発言が加わり、日銀の出口観測が急速に強まる結果となった。
日銀による出口政策がいよいよ現実味を帯びてきたことで、ややタイムラグもありながら市場が動意を示してきた。
30年国債の入札結果はかなり低調な結果となった。最低落札価格は予想を大きく下回り、テールは1円20銭と30年債が現行の入札方式となった2007年4月以降で最大となり、応札倍率は2.62倍と、2015年7月の2.21倍以来8年5か月ぶりの低水準となった。
ここにきての米債高などを受けて、日本の国債利回りが低下しており、利回りの絶対水準からみて投資家ニーズが後退していた可能性がある。また、あらためて日銀の金融政策の正常化を睨んで、入札する証券会社などの業者も慎重な応札となった可能性があった。
債券先物の中心限月がまもなく移行するタイミングでもあり、債券先物のロングポジションを外すような動きも出ていた可能性もある。
現物債はそれまで買い進まれていた超長期債の利回りが大きく跳ね上がり(価格は急落)、10年債利回りも0.63%から0.750%に跳ね上がった。
この日本の長期金利の上昇をみてか、外為市場でも日銀のマイナス金利解除を含めた正常化が意識されて、円高が急速に進むこととなった。東京株式市場も日経平均は一時600円を超す下げとなったのも、日銀の正常化も睨んだ長期金利の上昇や、それによる円高を嫌気した可能性があった。