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女性8人を並ばせた、金正恩「恥辱ショー」の残酷場面

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

 北朝鮮当局が、性売買行為の集中取り締まりを行っていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が今月2日付で報じている。

 咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)に住む情報筋はRFAに対し、「最近、全国的に増加している性売買行為を根絶するための中央の指示が下された。これを受け、市安全部(警察)と青年同盟が合同作戦を開始し、若者に対する思想教育と、性売買行為に対する集中取り締まりを行っている」と明らかにした。

 情報筋はまた、「今回の取り締まりは、平壌の某中央機関の幹部が夜の街で、女性らが買春客を探す姿を見て金正恩総書記に報告書を上げたことがきっかけだ。金正恩が、社会安全部と青年同盟に対策を立てるよう指示する文書に署名し、今回の取り組みが始まった」と説明している。

 清津市では現在、安全部の警ら隊と青年同盟が合同で、駅前や公園など性売買が頻繁に行われている場所をパトロールし、取り締まりを行っているという。

 また、別の情報筋によれば、同様の作戦は咸興(ハムン)でも行われているとのことだ。

 一方、青年同盟は取り締まりとともに、思想教育も教化している。清津の情報筋によれば、「7月30日の土曜日には市内各区域の青年同盟委員会が管内の若者をいくつかの場所に集め、「退廃的な反動思想文化を排撃し、非社会主義的な行為に巻き込まれてはならないとする金正恩の『お言葉』浸透(伝達)集会と政治講演会を行った」という。

 さらにこの日、市内の水南(スナム)区域では現地の青年同盟委員会が区域内の若者を集めた中、性売買の集中取り締まりにより摘発された女性を舞台に立たせ、公開批判を行ったという。「集会では、舞台に立たされた8人の女性の名前と年齢、家の住所、職場までをすべて公開して自己批判させた。大衆の前で恥辱を与えるやり方だった」(情報筋)とのことだ。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 北朝鮮では、このような残酷な「見せしめショー」が頻繁に行われている。さらし者にされる対象者の中には、多数の女性に鬼畜行為を働いた幹部など、罪に問われるべきケースもある。

 だが、いま北朝鮮社会で性売買が増えているのは、多かれ少なかれ経済難が影響しているはずなのだ。追い込まれて性売買に走った女性らの行動は、果たして「見せしめ」にされるような罪なのだろうか。

 しかも、このような仕打ちが金正恩氏の命令に基づいて行われている以上、当局の取り締まりは、庶民の共感を呼ぶどころか、権力からの民心のいっそうの離反を招くことだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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