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「日本人指導者はマウントをとりたがる!」エスクデロ競飛王の提言

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:アフロスポーツ)

 2005年に浦和レッズでプロデビューし、2012年まで在籍。その後、韓国の強豪であるFCソウル、中国の江蘇国信舜天足球倶楽部、京都サンガ、蔚山現代FC、栃木SC、チェンマイ・ユナイティッド、エルサルバドル1部リーグのアトレティコ・マルテと渡り歩き、オーストラリアのバンユール・シティ、今季は同国3部リーグのノース・ギ―ロング・ウォリアーズでプレーしたエスクデロ競飛王。

撮影:筆者
撮影:筆者

 今回、彼へのインタビューで心に残ったのは次の一言だ。

 「日本の指導者は自分の考え、理想を押し付けちゃうんですよ。僕が一緒に仕事をした監督では、崔龍洙(チェヨンス)が非常に良かったですね。2012-2014に在籍したFCソウル時代の付き合いです。2012年はKリーグ優勝、2013年はACL決勝進出、2014年はFAカップ決勝進出と毎年結果を出しました。

 崔龍洙は、選手に凄く質問してくるし、若い選手の伸ばし方に長けていました。いきなりユースの選手をトップチームに引き上げてリーグ戦で起用するんです。日本だったら『ウチは4-4-2だ。守備はこうで、CKはここ』みたいな戦術を説くんですが、『やってこい!』だけなんですよ。だから、若手は伸び伸びやって、毎回のように得点するんです。

崔龍洙
崔龍洙写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 崔龍洙とやるようになってからは、自分が抱えていた悩みを全て取り除いてもらいました。やらなきゃいけないことを言われるんじゃなくて、自分で考えられるようになりましたね。例えば右サイドハーフの選手がアップダウンを監督の指示でやって3往復もしたらバテますね。それは、自分のタイミングで動けないからなんです。自分のタイミングで動くのと、動かされるのじゃ全然感覚が違うんですね。

写真:アフロスポーツ

 日本は学校でも抑え過ぎますよね。日本は、先輩後輩の文化があって、どうしても年上の人がマウントを取るんですよ。上司、監督、先生は『俺は偉いんだ。お前は下なんだ』っていう意識があって、それが一番、指導者の邪魔をしています。日本人独特のプライドですよ。日本人は他の国より、信じられないくらいプライドが高い。上の人は、下に何かを言われることが耐えられないんですね。

 『俺の方が年上なのに何を言っているんだ。俺が監督なのに従わないのか』みたいな。アルゼンチンだって中国だってオーストラリアだって、そんなことは無いですよ。年功序列は韓国にもあります。練習だって厳しいし、軍隊式もありますが、そのなかに優しさもあったし、自分の意見を主張できました。でも、日本は意見できないんですね。僕は言う方でしたけれどね。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 浦和レッズ時代はユースから上がって、期待に応えられない自分に負けてしまったんです。でも、まだ18歳~19歳でしたが、岡野雅行さん、山田暢久さんが可愛がってくれましたし、仲良くできる、ちゃんと喋れる環境がありました。2003年~2008年は先輩後輩が無いような感じで、そこが浦和が強かった要素ですね」

写真:アフロスポーツ

 日本をワールドカップで優勝させたい! と語るエスクデロ競飛王。今後、自身の経験をいかに還元していくか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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